27話 VS甲冑そして再会
前回のあらすじ。
一夜にして建った謎の屋敷を調査する中で、懐かしい魔力を感じ取ったため、辿っていくと、甲冑が動き出した。
戦わなくて済むと思ってたんだけどなあ。どうやら、それは叶わぬ願いのようだ。
「戦うしかなさそうだ」
「そうみたいだな」
「のんびりしてる時間は無いわよ。『炎の槍』」
おっと、そんなことを話していたらエリスが先制攻撃を仕掛けた。
次の瞬間、僕の体に悪寒が走りその場から離脱する。
次の瞬間ドゴォォ!! とけたたましい音を響かせ床がえぐれる。そんな災いをもたらしたのは例の甲冑だ。
エリスの魔術を躱すだけでなく僕に攻撃を仕掛けてくるとは⋯⋯。自分の直感に従って正解だった。
ふと、えぐれた床を見てみると最初からこのままだったよ、と言わんばかりに床が治っていた。⋯⋯この屋敷、傷も治るのかよ。
例の甲冑は手に大剣を持っており、動く速度が早い。油断ならない相手だ。
「甲冑の動きに常に注意してくれ」
「「了解」」
ニウスはいつも通りヘイトを集めてくれる。かなり戦いやすくなるはずだ。申し訳ないがしっかりと引き付けてもらう。
「『氷の槍』」
僕は甲冑に向けて魔術を食らわせる。が、全く手応えがない。防がれたというより逸らされた感じだ。ニウスも攻撃をしているが、鎧に触れること無く逸れる。エリスも魔術を食らわせるが、結果は同じだ。
弱点を探すため、アイツを鑑定してみる。しかし、弾かれてこの魔物(?)自体のことは全く分からなかった。
だけど、甲冑の鑑定はできた。その甲冑が持つ効果は、反力場らしい。この力は、攻撃をしてくるものの流れを逸らす効果があるらしい。厄介極まりない。
僕は剣を抜き放ち、反力場に負けないぐらいの力で斬りかかる。すると、その力に比例するように反力場が強くなったのか、ジャンプして斬ろうとした僕は後方にいとも容易く吹き飛ばされてしまう。
壁に激突する寸前で『飛行』を使って勢いを完全に殺す。なんとか態勢を立て直し、地面に着地する。
「ユート! 大丈夫!?」
「うん! 問題ない」
心配してくれたエリスにそう返す。
それにしてもどうするかな⋯⋯。力を強めても駄目だし、普通にやってもだめ。あの力場を相殺できればなあ。
あっ。相殺の考え方とは違うけど、アイツは闇属性の魔術の力で動いていると思う。となると、光属性の魔術を使えば、ダメージを与えられるかもしれない。
「『光の槍』」
すると、光属性の魔術に気づいたのか、ニウスへの攻撃をやめ、回避する。
やっぱりだ。アイツは光属性が弱点だ。
「二人ともー! アイツは光属性が弱点だ。僕が今から、二人に光属性を付与する。そしたら攻撃が通るはずだ!! 『付与』光!!」
次の瞬間、僕らは淡い光に包まれる。これで僕らの攻撃には全て光属性になる。
今更だが、属性には反属性というものが存在する。
反属性とは、それぞれの属性の対となる属性だ。例を上げると、火と水、光と闇等だ。それぞれ、お互いの効果を打ち消し合う性質がある。
相手が、火属性の魔術を使ってきたとする。そしたら、こっちは、水属性魔術を火属性魔術にぶつける。すると、簡単に相殺できるのだ。
今回の場合だと、今は僕らは光属性をまとっている。この状態はすべての攻撃に光属性が付与されるが、この状態で闇属性の魔術を使おうとすると、効果が半減するどころか、それよりも弱くなる。
だから、属性の付与には注意が必要だ。
「オラオラ」
ニウスが連続で槍を甲冑に突きつける。今までは甲冑は受けていたが、躱し始めた。
「『炎の槍』」
その上、エリスの魔術が躱した先にくるのだから、甲冑も気が気じゃないだろう。
ちなみに僕は何をしているかと言うと、王級魔術の準備だ。僕は王級魔術を何個も使える。そのうちの一つを準備している。
この魔術は術式構築にかなり時間がかかる。術式の一つ一つが細かいのだ。だから、僕は今の戦闘に参加できていない。
甲冑も、僕を止めたいだろうが、ニウスとエリスの攻撃によってこちらに意識を向けられないのだ。
「ここを描いて⋯⋯よし。二人とも、最後に頼むよ!」
「任せとけ」
「任されたわ『炎の玉』!!」
二人とも同時に足元に向けて攻撃する。
これにはたまらず、甲冑が上に飛びこれらの攻撃を回避する。
僕らの目的はこれだ。
「二人ともありがとう」
僕は組み上げた術式を剣へと宿す。
「『極光の剣撃』!!」
光が剣に収束し、光の刃が放たれる。その攻撃は空気を切り裂き、甲冑に一直線に進んでいく。こころなしか甲冑が絶望してる気がする。
しかし、そこは空中。飛行魔術でも使えなければ、ただ単に重力に従い落ちていく。横に避けることは不可能だ。
瞬間、光が爆ぜた。爆発的な光の奔流が、その車線上にある、甲冑や空気を無慈悲に切り裂いていく。それは、神々の裁きのように見える。
光が収まると、車線上にはチリ一つ残っていなかった。
「よくやったユート。やっぱお前は最高だ!」
ニウスが笑いながら僕の髪をめちゃくちゃにする。
「本当にあなたは規格外ね。まあ、それがユートらしいけどね」
気がつくと、エリスも横に立っていた。
何だよ規格外って。なんかひどいなあ。
さっき使った魔術は王級魔術である『極光の剣撃』だ。この魔術は剣に光の魔力を収束させて、一気に解き放つ魔術だ。
その車線上にあるモノは、なすすべ無く切り裂かれる。光属性なのに、かなり物騒な魔術だ。
勇者であるユウキさんも使ったとされ、これすらも省略発動していたようだ。ユウキさんのすごさがうかがえる。ちなみに、この魔術が使えるのはきっと僕だけだろう。
家の書庫にあったユウキさんの魔術の術式、そして魔法が書かれている本を読んで見様見真似でやって見た魔術だ。
だから、ユウキさんが実際に使っていたときの威力よりもかなり落ちているが、それでもあの威力だ。本物の威力は想像しただけでも恐ろしい。
なにはともあれ、見事に甲冑を倒すことができたのだ。
「よし、これで扉が開くはずだ」
⋯⋯。⋯⋯。が、いくら経っても扉が開く気配がない。
なんで? まさか、あの甲冑が鍵を持っていて、それを使って開ける必要があるのか!? そうだったら手遅れなんですけど⋯⋯。
「もお、開いてるんじゃね?」
「いやいやまさかそんなことあるわけ──」
そんなことをいいながらニウスが扉を開けようとする。ハハハ。開くわけ無いだろう?
ガチャッ! と音を立てて扉が開く。
「「⋯⋯⋯⋯」」
僕とエリスは開いた扉に視線が行き、そこで石のように固まった。
「開いたぞ、早く行こーぜ」
僕はしばらく放心状態になっていたが、ニウスの言葉で我に返る。エリスはまだ放心状態っぽい。
とりあえず、進むか⋯⋯。エリスも放心状態のようだがちゃんと着いて来る。
「まさか、開くなんて⋯⋯」
放心状態からなんとか戻ってきたエリスが声を出す。僕だって同じ気持ちだ。
「あっ、また扉だ」
僕は声を出す。間違いない。この先にいる。確認してみたが鍵がかかっている様子はない。
「この先に──」
僕は恐る恐る扉を開く。
そこには、母さんと同じように青色の髪と目を持つ少女が鎖に繋がれていた。紛れもない、僕の妹のアイリスだ。
「お兄ちゃん? 本当にお兄ちゃんなの?」
「そうだよ、アイリス。僕だよ、君の兄のユートだ。まってて、その鎖、すぐ外してやるからな。『付与』解除!!」
そんなアイリスは終始僕の顔をジーっと見つめて、僕だと認識すると、今にも泣きそうに目を潤めて僕を見つめる。
僕はアイリスを鎖から解放するために、『付与』を行使した。
『解除』とは、シンプルで、対象者のあらゆる状態を解除するものだ。今回の場合、アイリスが鎖に捕縛されている、という状態を解除した。
前にパラライズリザードに麻痺と毒を食らったときに使えると気づいた。今まで、色々検証してみたところ、こんな使い方ができたというわけだ。
鎖から解放されたアイリスは僕の方に駆けてきて、抱きついてきた。
よほど不安だったのだろう。僕も同じ立場だったらこうするかもしれない。
「お兄ちゃん!」
僕はそんなアイリスを力いっぱい抱きしめる。
「良かったなあ」
「良かったわねえ」
なぜだかエリスとニウスが瞳に涙を浮かべている。なぜに?
「もう少しこのままでいい?」
「ああ、アイリスの気が済むまでいいよ」
こうしてしばらく再会を噛み締めたのだ。無事で良かった。
■■■■
『まさかここがバレるとはな。さすが、あの憎き勇者の末裔だ。ユート・フォワード』
どこからとも無く聞こえる声に、一度アイリスから離れて戦闘態勢に入る。
「お前は誰だ? なぜ僕の名前を知っている?」
『そう言えば名乗っていなかったな。我が名はガルダー。魔王軍四天王の第四席暴力のガルダーだ』
どこから声が聞こえるかはわからない。
それにしてもまさか魔王軍四天王とはね。フォワードの町の襲撃に大きく関わっているだろう。
暴力のガルダー。この世界で知らないものはいないと言えるほど世界に名が知れ渡っている魔王軍四天王の一人である。魔物の軍団を従えその圧倒的な力で、数々の冒険者を葬ってきた超危険なやつだ。
何でもコイツは獣人族の出身で、直属の配下には獣人族も含まれているようだ。もちろんその獣人族一体一体は一騎当千の強者で、並の冒険者じゃ全く刃が立たないのだ。
そんな奴らがこの屋敷を作り出し、何かの目的を達成させようと画策しているのだろう。かなり大きな情報だから、すぐに冒険者ギルドに戻って伝えたいが、相手はそんなに甘くは無いだろう。
今更気づいたが、空間固定をされていて、屋敷の外への転移が不可能になっている。ドアや窓から出るしか無いだろうが、きっとそれも無理だろう。
生き残るにはコイツとその部下たちを撃退するほか無いだろう。
「悪い二人とも巻き込んじゃって」
「気にすんな。俺は俺の意思でユートに着いてきたんだ。コイツをぶっ飛ばして、家に帰ろう」
「そうよ。私達を頼りなさい」
二人の気持ちに胸がいっぱいになる。本当にこの二人は最高だ! なんかフラグっぽいが、ガルダーのやつを倒して家に帰ろう。フラグは立っても回収しなければいいのだ。なんかの主人公が言ってた気がする。
『我を倒すとは、叶わぬ願いを抱くものだ。その考え、ねじ伏せて産まれてきたことを後悔させながら、殺してやる』
「やれるものならやってみろ! 僕達の力を見くびるな! フォワードの町⋯⋯そして、勇者の末裔である僕とアイリスを敵に回したこと、後悔させてやる!」
僕は高らかに言い放つ。
『やれるものならやってみよ。無駄だろうがな』
その言葉を最後にどこからともなく聞こえた声は消失した。
「ごめんなアイリス。巻き込んじゃって」
「ううん。気にしないで。それに私の力はきっとみんなの力になれると思う」
「そうだね。その時は頼むよ」
「うん、任せて!」
アイリスが胸を張る。なんだか懐かしいな、このテンション。僕は感慨にふけるのだった。
「よし、じゃあいくぞ!」
「「「おう!」」」
見てろよガルダー。僕達を敵に回したこと、後悔させてやる。
僕は改めて心の中で誓ったのだった。
次回の投稿は3日後です。




