26話 緊急依頼! 屋敷の調査
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〈ガルダーサイド)
ここは王都の近くのとある山の中だ。その中で大柄な男と、その部下らしき者達。そして、一人の少女が居た。
「『建物建築』」
その中の大柄な男が、魔術を発動させる。
すると、何もなかった地面に大きな屋敷が建てられていた。
この魔術は建物を作る魔術だ。その規模、正確性により、速度と魔力消費量が大きく変化する。この短時間で、これほどの規模の屋敷を作ることからこの男が只者ではないことが分かる。
「ここで、しばらくユート・フォワードとやらを観察する。すぐに冒険者ギルドが嗅ぎつけてくるだろうが。冒険者が来るようなら殺して構わない。ただし、ユート・フォワードが現れた場合、できるだけ殺さず我が前に連れてこいいいな」
「「「ハハッ!!!」」」
その言葉に呼応して、数多くの声が発せられる。
その大柄な男──ガルダーは、屋敷の中に入っていく。
「⋯⋯そうだ。その女は隠し扉の向こうの牢に閉じ込めておけ」
その言葉がガルダーから発せられると、部下であろう魔人が少女──アイリスを連れて、牢屋へと向かう。アイリスはされるがままに連れて行かれる。しかし、アイリスの目は希望に満ちあふれていた。まるで何かを確信しているような目だ。
その姿は誰も特に気にもとめていなかったのだった
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そんな訳で、王都で家をもらってから一週間が過ぎた。みんなもこの生活に慣れてきたようだ。日々依頼をこなし、お金もかなり稼げた。
今僕らは、ギルドから招集されて、冒険者ギルドへと来ていた。ちなみに、キュノは家でお留守番だ。
何でも、謎の屋敷が一夜の間に建ったらしい。
「聞いたか、屋敷の話。一夜の間に建ったんだってな」
「まじか、エグいな」
そんな会話が冒険者達の間でされている。
「不思議なこともあるもんだな」
「そうね」
ニウスとエリスがそんな話をする。僕だって同じような気持ちだ。
気がつけばたくさんの冒険者達が集まっていた。
「皆さん、お集まりくださりありがとうございます。皆様には、昨夜未明、突如として建った屋敷の調査をお願いします。建築業者に問い合わせたところ、作成者は、彼らではないことが判明しました。このような──」
そう話すのは、ここの受付嬢の一人で、僕らの担当のユウカ・オオニシさんだ。名前を聞いた時、なんか聞いたことがあるような気がするけれど、今も思い出せていない。
どうやら、この屋敷調査の依頼は、緊急依頼らしい。
緊急依頼とは、冒険者ギルドが出す依頼の中で、最も緊急性が高い依頼で、全てのランクの冒険者が依頼を受ける事ができる。しかし、調査も何も無いので、危険性も高い。あまり、低ランク冒険者が受けることは推奨されていない。
冒険者の命を大切に考えるギルドがこんな依頼を出すことから、その依頼の重要性が分かるだろう。
一応、この場で、緊急依頼の説明がされているが、受注するかどうかは冒険者次第となるだろう。
「──以上になります。受注してくださるか否かは、皆様方におまかせします」
そう言って、ユウカさんは締めくくる。すると、冒険者達が、それぞれのパーティーごとで話し始める。僕らも話し合うか。
「二人はどう思う?」
「そうだなあ。危険性は無くは無いだろうが、報酬額もかなり高い。もし、危険でもユートの転移魔術で脱出すればいいし、俺は受けるのに賛成だ」
「私も賛成よ。私とユートだけのパーティーだったら反対だったけど、ニウスがいるから、大丈夫だと思うわ」
なるほど。二人は賛成か。じゃあ、受けるという方向でいいか。
「じゃあこの依頼を受けよう。ただ、危険だと思ったらすぐに逃げる、ということで」
「「了解」」
よし、これで決まりだ。僕は、依頼ボードから、屋敷の調査の依頼書を剥がし、受付に持っていく。
「ユウカさん。この依頼お願いします」
「わかりました。気をつけてくださいね」
「はい」
ユウカさんにも心配されたな。さてと、頑張って行きますか。
「いくよ二人とも」
「おう」
「ええ」
こうして僕らは屋敷の調査を受け、例の屋敷へと向かった。
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「ここが⋯⋯」
思わず、僕はそんな声を漏らしてしまう。
この屋敷は、見上げるほどに大きく、横幅も長く、奥行きもすごそうだ。しかも、建物のいたるところに綺麗な装飾が施されている。
所々に窓もあるが、遮光ガラスかなんかなのか、中がまるで見えない。
「ほえー。すごいな。どうやってこんな家を一夜で立てたんだ?」
「多分だけど、『建物建築』よ。そうじゃないと説明がつかない。それでもおかしいと思うわよ。建築の規模や細かさによって、使用魔力と時間が増えていくもの」
なるほど、確かに『建物建築』なら、やろうと思えば可能だ。だとしても、この大きさなら、かなりの魔力と時間が必要になるはずだ。そう考えると、この建物を作ったヤツはかなりの実力者であると考えられる。
「とりあえず、中に入ってみるか」
僕はそう提案すると、扉に近づいた。すると、どうぞ進んでくださいとでも言うように扉がひとりでに開いた。
⋯⋯まじか。
「行ってみるしか無いな」
ニウスが鼓舞のためか、そんな言葉を漏らす。
「じゃあ、いくよ」
三人で扉の中に歩を進めた。
屋敷の中は、薄暗く、不気味さを漂わせていた。道には、ボロボロになっている赤色のカーペットが置かれていた。
屋敷の中にはところどころに蜘蛛の巣があり、これも不気味という印象を助長させている。
所々の壁には、魔物か何かの絵画が飾られている。趣味が悪いと言わざるをえない。
「ガルルル!!」
おっと、そんなことを考えていると、犬っぽい魔物が前から出てきた。鑑定してみると、シャドータイガーだった。
シャドータイガーはDランクの魔物だ。そこまで強くは無い。ただ、時々影から攻撃を仕掛けてくるため、油断は禁物だ。まあ、なぜだか知らないけど、シャドータイガーが自身の影に入ってから、十秒後きっちり攻撃を仕掛けてくるという謎の習性があるため回避は簡単だ。
こういう薄暗いところでは、ヤツ自身の体色的に見えづらくて厄介になるだろう。
見た感じ、一匹のようだから落ち着いていればなんとかなるだろう。
あっ、アイツ僕の方を見ながら影に入って行ったぞ。来るな。
一⋯⋯二⋯⋯三⋯⋯四⋯⋯五⋯⋯六⋯⋯七⋯⋯八⋯⋯九⋯⋯十。今だ。
僕は剣を抜き放ち、ちょうど影から出てきたシャドータイガーを斬る。だけど、寸前で身をひねられて回避されたため、致命傷にはなっていないらしい。
シャドータイガーって、こんな機敏に動けたっけかな? これも魔王復活の影響かもしれない。
「一度、俺がヘイトを集める。その隙に攻撃してくれ」
そう言って、ニウスがシャドータイガーに攻撃を仕掛ける。気がつけばすっかり、シャドータイガーのヘイトはニウスに向いている。
「さあ、来い犬っころ」
その言葉を合図にかシャドータイガーがニウスに攻撃を仕掛ける。しかし、その攻撃がニウスに当たることは無い。ニウスが全てを槍でさばいているのだ。
ニウスは普段槍しか持っていない。何でもこっちのほうが身軽で良いそうだ。ただ、本気で守りに徹する時は、盾を収納魔道具から取り出す。こうなると、ほとんどの魔物はニウスに攻撃を当てるのはかなりの強者を除いて不可能となる。まあ、今はいいだろう。
ニウスは次々に襲い来るシャドータイガーの攻撃を全て槍一本で相殺する。
「はは、すごいなこの槍。まるで、体の一部みたいに操れるぜ」
ニウスが防ぎながらそんなことをいう。余裕そうだな。
僕は、その隙に気配を消して、ある場所へ向かう。
「『炎の槍』!!」
エリスが火属性の魔術を唱える。
それに気づいたシャドータイガーがニウスへの攻撃を中断して、後方に飛び、炎の槍を躱す。
が、飛んで避けた先には僕がいる。
完全に気配を消している僕に気づかず、見事にこっちに飛んできてくれた。僕は、剣でシャドータイガーの心臓を貫いた。
シャドータイガーは一度痙攣し、僕が剣を引き抜くと、重力に従い地面に転がった。
「よし。討伐完了っと」
「おいユート。あれ予想してたのか?」
「うん、そうだよ。エリスに魔術での攻撃をお願いして、シャドータイガーが攻撃中だったら、飛んで避けると考えて、着地する予想地点に向かったのさ」
「まさか、気配を完全に遮断するなんて、驚いたわ」
「それ俺も思った」
自ずと笑みが込み上げてくる。このパーティーは最高だ! そう、改めて感じた。
もっと、屋敷を調査するためにも、隅々まで見てみる必要がある。なんというかだんだん綺麗になってきている気がする。
入口付近では、蜘蛛の巣が所々にあったけれど、このあたりにきてから、全くと言っていいほど蜘蛛の巣が無いのだ。
窓ガラスだってそうだ。最初は窓ガラスは曇っていて、外が全く見えなかった。だけど、この辺のは曇りなんて無く、外の景色が綺麗に見える。
まるで掃除されているようだ。
ちなみに、ここに来るまでに何度か魔物に襲われたが、全て撃退した。全て獣型の魔物だった。しかも、一体一体が通常よりも強かった。
最初の方は、たまたまなのかな、と考えていたけれどここまできて確信へと変わった。魔王復活の影響か、はたまた──。
「『鑑定』」
その仮説を確かめるために、この屋敷を鑑定した。
「うん、やっぱりだ」
「どうしたんだ?」
そんな僕のつぶやきを聞いたニウスが質問してくる。
「エリスも聞いてほしい。このあたりの魔物は強くなっているだろう? その原因はこの屋敷に『獣型魔物強化』の魔術が施されているんだ。壊せるか試したけど、無理そうだった」
「⋯⋯なるほどな。確かに強いと思っていたが、そんなからくりだったんだな」
「強化系統の魔術ね」
それぞれで反応する。
それよりも⋯⋯だ。さっき鑑定を使ったときに、気になったことがあったんだ。どこか懐かしい魔力を感じたのだ。あの魔力の波長は──。
「二人とも、ちょっと寄り道してもいい?」
「ん? まあ、いいぞ。寄り道した方の調査もできるだろうからな」
「私も賛成よ」
「ありがとう。『付与』魔力追跡」
僕は自身に魔力追跡を付与する。
魔力追跡とは、その名の通り魔力の出どころ感知するものだ。まあ、正確には魔力の流れを辿っていくのだがそれはいいだろう。あの懐かしい魔力をたどる。『付与』がなければ気づくことができなかっただろう。
しばらく辿っていくと、なぜだか行き止まりに到着した。一見壁にしか見えないが、この先から懐かしい魔力が流れてきているのだ。
「『鑑定』」
僕は壁に向かって鑑定魔術を掛ける。結果、この先に道があるということが分かった。
壁を触ってみるが、ちゃんと壁だ。アニメでよくあるすり抜ける仕掛けと思ったが違ったようだ。まあいいや。裏技を使おう。
「二人とも、僕と、手を繋いで。壁の向こうに転移する」
「了解」
「し、失礼します⋯⋯」
なんかエリスの口調がおかしくなっている。恥ずかしいのかな? まあいいや
「しっかり摑まってね。『空間移動』」
そう唱えると同時に、一瞬、目の前が真っ白になり、すぐに元通りになった。うまく壁の向こうにいけたようだ。
壁の向こうにつくと、懐かしい魔力がより一層感じられる。近づいているということが分かる。
こっち側は、さっきよりも圧倒的に明るい。今までの暗い感じが嘘のようだ。それに、ほとんど何も無く殺風景が広がる。窓もない。何かを隠しているのは明らかだろう。
道は一本しか無く、迷うことは無いだろう。
「この先かな?」
二人も僕の後を着いてくる。
しばらく進むと、まあまあ大きな扉が見えてきた。横にはなんかデカイ騎士の甲冑が飾られていた。うん、あの甲冑から嫌な予感がする。
「なあユート、俺はあの甲冑から嫌な予感がするんだが?」
「同感だよ。僕もすごい嫌な予感がする」
エリスなんてもうすでに戦闘態勢に入ってるよ⋯⋯。
そんなことを考えていると、ギイィィィ!! と音を立てて甲冑が動き出した。うん、知ってた。
ガチャ!! という音が扉から聞こえた。どうやら扉に鍵がかかったようだ。
甲冑が動くなんてどこのアニメだよ⋯⋯。
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