25話 家
てなわけで、王様と謁見した後、王様からもらった地図の場所に僕らは向かっていた。この地図が示す場所は、王様が僕⋯⋯僕らにくれた家が建っているのだ。少し⋯⋯いや、かなり楽しみだ。
「どんな家なのかしら」
「楽しみだな」
「そうだね」
そんな会話をする。一体どんな家なのだろうか。
「おっ、あれじゃないか?」
ニウスが指を指す。
⋯⋯それを見て言葉を失った。
「いやいや、でかすぎるだろー!!」
思わず声を大にして叫んでしまうほどだ。
家の外装は、概ね普通だ。中は入ってみないと分からないけど⋯⋯。
というか、庭がとんでもなく広い。軽く三ヘクタールは超えているだろう。いやいや、東京ドームに迫るとかどうなってんだよ⋯⋯。
「なあ、もしかしてあれか?」
ニウスが驚愕しながら聞いてくる。
「うん⋯⋯。あれっぽいね」
「ふーん、私の家の三分の一くらいね」
⋯⋯いまエリスの口からとんでもない言葉が発せられた気がする。⋯⋯聞かなかったことにしよう。
そんな広すぎる庭の周りは、三メートルくらいの柵で囲われええている。防犯はある程度大丈夫なようだ。
一応だけど、セキュリティでも作るかな。まあ、どんなのが作れるか分からないけどね。
僕らは道なりに進んでいき、柵の門に到着した。どうやらこの鍵穴に鍵を入れれば開くっぽい。ご丁寧に鍵は合鍵含めて十本ある。
いくらなんでも多すぎないかなと思ったけど、エリスに聞いた所、問題ないらしい。エリスの家には鍵の数は三十本を超えているらしい。うん、おかしい。いや、この場合僕がおかしいのかもしれない。⋯⋯実はフォワード家にもとんでもない数の合鍵があるかもしれない。
とりあえず、鍵穴に鍵を差し込んで開く。すると、キィィ、と音を立てて開いた。⋯⋯自動ドアっすか。いや、この場合は自動柵(?)か。
「うお!? 柵が自動で開いた!?」
「まさか自動で開くとわね」
さすがのエリスも驚いているようだ。ニウスは驚いている。
「じゃあ、いくか」
僕は敷地の中に入って二人に呼びかける。うお!? 鍵がオートでかかった!? すごっ。
とりあえず、家の方へ向かう。数十メートルは離れている。楽にできんかね? まあ、それはおいおい検討だな。
改めて、この家デカイなと思う。見た感じ、高さは十三メートルぐらいありそうだ。窓が縦に三枚はあるぞ。三階建てかな。
横もかなり広い、軽く三十メートルは超えてそうだ。やばいな⋯⋯。
玄関までたどり着くと、ドアが見えた。その大きさは縦が三メートル、横が二メートルぐらいだ。
そのドアの鍵穴に鍵を差し込み回す。ガチャッ、と音がして、鍵が開く。
僕は恐る恐る扉を開いた。予想していたよりずっと軽かった。軽くドアを叩いてみると、かなり硬質そうだ。軽くて硬いのか⋯⋯。特殊な金属なのかね。
ドアの中に入ると、かなり広い靴置き場が目に入った。
この世界は靴を脱ぐ家があったり、脱がない家があったりする。フォワード家は脱ぐ文化のほうが強かった。自分勝手な話だが、二人にも靴を脱いでもらえるようにお願いしている。
「中もすごいなあ」
「そうね。えーとスイッチは⋯⋯。あった」
ニウスが中を見て感嘆している。エリスはニウスに返事をしながら、照明のスイッチを見つけてスイッチを押した。
すると、照明が部屋を明るくした。暗いときは分からなかったこともあるけど、奥の方に階段がある。あの階段から上に上がるのだろう。
「よし。それぞれで家がどんな感じか見ようか。そうだなあー。二時間後くらいにはリビングに集合しよう。部屋の場所を決めようか」
「分かったぜ」
「分かったわ」
そんな訳で、家を見て回ることにしたのだった。
僕はまず、一階の探索をする。まずはリビングだ。予想していたように途轍も無く広い。さながら、日本の家のリビングの三倍はありそうだ。
机とかの家具はまだ置かれていない。王様がくれた報酬金の他に餞別として白金貨五枚をもらった。これで家具を揃えなさいということらしい。ありがたいな。
そうだ! 必要そうな家具をメモしておこうか。
僕はストレージリングから、紙とペンを取り出す。
えーと、ソファーとテーブル、ゴミ箱、椅子っと。よし、リビングで必要なものはこんな感じかな。他にもあるかもしれないから、後でニウスたちにも聞こうかな。
次に僕が向かったところはお風呂だ。この世界のほとんどの家にはお風呂はない。
無いと言っても、全くお風呂に入って無いわけではない。お風呂に入りたいと思ったら、銭湯にいくのだ。王都での値段は知らんが、フォワードの町では鉄貨二枚で入れたはずだ。もちろん、ファワード家にもお風呂はあった。
この家は、運のいいことにお風呂がついているのだ。お湯はそこの蛇口から出てくる。もちろん水も出すことができる。
実はこの世界はかなり設備が良いのだ。水を各家庭で出すことができたり、魔術を使って水を温めてお湯を作ることができたりする。ガスまでも通っているのだから驚きだ。
このお風呂はかなり広い。普通の家のお風呂の二倍はありそうだ。浴槽なんて、やろうと思えば、五人で入ってもまだ、空きがありそうなくらいだ。
おっとっと。必要な物を書かなければ。
メモを終えると、次にキッチンへと向かった。
これまたかなり広い。といっても、フォワード家のキッチンと同じくらいだ。まあ、こんな物だろう。
必要なものをメモメモっと。
次に二階に向かった。二階には、たくさんの部屋があった。どれも特別な用途はなさそうだ。ただ、かなり広い部屋があったから、そこは本を置くことにしようと思った。
三階には、まあまあ広い部屋が何個かあった。個人の部屋にするので問題なさそうだ。
そんな感じで、気がつけば約束の二時間にあっという間になった。色々、いじる要素がありそうだ。
「じゃあ早速部屋を決めようじゃないか」
僕が居間に戻ると、すでに二人ともいた。
それぞれ部屋がどこがいいかを、順番に言った。以外にも、部屋は被らなかった。
「まさかこんなに簡単に決まるなんてな」
「あっさりだったわね」
「まあ、いいじゃない。争い無く決められたんだからさ」
口々に感想を漏らす。まあ、僕だけは感想とは少し違うけどね。
「おっと、忘れるところだったよ。なにか必要なものがあったらこの紙に書いてほしい」
僕は、二人に紙を見せる。
「なるほど、確かに必要な物を出さないとな」
「そうね」
二人はそう言いうと、欲しい物を次々に紙にかき始めた。どんどん増えていく。気がつけば、紙は三枚目に突入していた。
「よし。こんなもんだな」
「これでオッケーよ」
僕は返された紙をみる。うん、すごい大量だ。
「じゃあ、手分けしてこれらを買いにいくよ。僕は、これらの家具を買いにいくね。エリスにはキッチンの用品とお風呂の用品を頼むよ。ニウスは、生活必需品を頼む。この収納魔道具に入れていいからな」
そう言って僕は二人に収納魔道具を渡す。
「いいのか?」
「いいの?」
「うん。いいよ。だって二人のために作ったからね」
絶対に、収納魔道具はあったほうが楽だろうと考えて、作っておいたのだ。
「「ありがとう」」
うん、喜んでもらえたようで何よりだ。
「じゃあ、それぞれで買い物をしようか」
『ぼくはいえにいるね』
フフ、キュノはマイペースだな。
僕は、早速王都の家具屋へと向かった。
■■■■
てなわけで、王都にある家具屋さんへと来ている。意外にも王都内の家具屋はこの店一つのようだ。
実は最近の王都は、土地が少なく高いため、引っ越して来る人が少ない。かなりの期間を使った家具などの買い替えぐらいにしか利用されていないため、これぐらいで十分だそうだ。
この家具屋さんはかなり大きい。そのため品揃えはかなりいい。その上、品質は確かで、お客の満足度も高いそうだ。
まあ、それは置いといて。早速だが、三人分のベットを探す。それぞれ、どんな感じのがいいか聞いてきている。
えーと、ベットコーナー、ベットコーナーっと⋯⋯。あった。確かに品揃えがいいな。見た感じだけでも、数十以上の種類がある。なんでも、グラディア王国各地から、集められているようだ。
それぞれがほしいベットをなんか空間拡張されているらしい、カゴに入れる。いくら分解しているとはいえ、かなりの大きさがある。それがすっぽりと入ってしまった。
次にダイニングの机と椅子だ。こっちは特に希望は聞いてきていないので、僕が決めさせてもらう。
おっ、これなんか良さそうだ。基本は木で作られていて、しっかりとコーティングされている。脚もしっかりと補強されているため安心だろう。この机も、このめちゃ広い(中が)カゴに入れる。これまたすっぽりと入る。すご。
そんな感じで頼まれていた家具を一通り揃えた。お値段はなんと金貨五枚だった。合計は五十万円か。⋯⋯かなり安く済んだな。
今の日本で揃えようとしたら、軽く八十万は超えるだろう。三十万も安いとか、どんだけだよ⋯⋯。
ていうか王様がくれたのは白金貨五枚だ。まだ十分の一ぐらいしか使って無いよ? やっぱ多すぎる気がする。
とりあえず僕が頼まれた仕事は終わったため新居に戻ったのだ。
■■■■
「ただいまー」
「お帰りー」
家に戻ると、エリスから返事が返ってきた。どうやら、もうすでに帰ってきていたらしい。早いな⋯⋯。
「早速だけど、家具を組み立てるか。よいしょっと」
僕はストレージリングから、家具を次々と出す。家具と言っても正確には部品だけどね。
早速組み立てていきますか。
数時間後。
うん、終わるのかな。あれからただひたすらに組み立てていってるが、全く終わる気がしない。だって、二人で協力しているけどまだ四分の一すら終わって無いのだ。外は暗くなり始めている。
ニウスは一体何をしてるのかまだ帰って来ない。
「悪い、遅くなった」
そんなことを考えていると、ニウスが帰って来た。
「なんかあった?」
「いや、迷子の子供がいてな、親を探してたんだ」
そういや、ニウスってそういう所があったな。実はニウスはかなり優しく、困っている子供がいたら積極的に声を掛けて、解決するのだ。
そんなニウスを見てきたから、僕も困っている人がいたら積極的に人助けをするようになったのだ。
「なるほどね。さすがニウスだ」
「そうだろう、そうだろう」
「そんなニウスにお願いだ。家具の組み立てを手伝ってくれ」
「任せろ⋯⋯。ってなんでだよ!?」
フフ、油断したな。言質は取ったぞ。というか手伝ってくれないと寝れない。
「ああ、もう分かったよ。やりゃあいいんだろう?」
そう言ってニウスも手伝いに参加する。ちなみにだが、エリスにも同じ手法で手伝わせたのだった。僕の会話テク舐めんなよ?
そんな感じで組み立て終わったときにはすっかり日は落ちていた。時計を見ると、十時を回っていた。なんとか日付がかわる前に終わって良かったな。
「あー。やっと終わったぜ」
「本当にそうね。ユートにまんまと嵌められたわ」
「ごめんて」
『やっとおわったねー』
途中からキュノも手伝ってくれた。最初はできるかどうか半信半疑だったけど、問題無く組み立てていた。それも、僕らがやる速度よりも早く正確だった。キュノは学習能力だけでなく、手先まで器用のようだ。なんか羨ましい。
「よし、それぞれでお風呂に入って寝よう!」
「誰が先に入るかじゃんけんだな」
「フフ、負けないわよ」
「「「じゃんけん──」」」
じゃんけんの結果、僕が最下位だった。くそう。給食のじゃんけんは負け無しだったのに⋯⋯。
結局最後に僕が入ることになった。ちなみにだが、一位だったのはニウスだ。そう言えばニウスに勝った記憶無いな⋯⋯。
それにしても落ち着くな⋯⋯。やっぱりお風呂にのんびりと浸かっている時間が至福だ。
エリスが買ってきたお風呂用具はすごかった。髪は今までに類を見ないほどにサラサラで、肌も、とてつもないぐらいにすべすべだ。
エリス曰く、いつもフレイヤ家で使われていたものらしい。貴族が使うやつとなるとかなり高価なやつでは、と考えたため、値段は聞くのがためらわれた。
まあ、いいや。上がって早く寝よう。
そう思い、お風呂から上がった。
次の更新は3日後です。




