24話 謁見
馬車を降りると、他の町と比べ物にならないくらいに発展している町⋯⋯いや、都が目に入る。
道では商人らしき人たちが、露店を並べている。カイトルの町も露店がたくさんあったけど王都の露店と比べると霞んでしまう。
家の基本の材料は、他の町と同じようにレンガが主流で使われている。家にもよるが大きな窓まである。
ん!? あれはまさか、自動ドアか!? 人がその下を下を通ろうとすると、扉が自動で開く。どうやっているのだろうか? この世界にプログラミングは愚かパソコンすら無い。となると、魔術だろうか? やべえ、気になる⋯⋯。
ほとんどの人々が笑顔を浮かべている。みんな幸せそうだ。
「ユート様、行きますよ」
どうやら、リュミー達の用事が完了したようだ。もう少し、見たかったが、残念ながらそうはいかないだろう。
「わかりました」
今は私的な場ではないのできっちりと敬語を使う。流石に王都の中で王女様にタメ口なんて使ったらどうなるかわからない。
僕はもう一度馬車に乗り込む。キュノはぐっすりと眠っている。⋯⋯どうしよう。
「もう少しでお城に到着します。そこで、私のお父上様に謁見していただきます」
そう、そうなのだ。この後、リュミーの父上。つまり、この国の王様と謁見することになったのだ。流石に、冒険のときに着ている服を着るわけにはいかないので、さっき買っていたのだ。
値段? そんなの聞かないでくれ。安く無い金額だったとだけ言っておこう。
「王様と謁見するなんて初めてだぜ。どうしたらいいんだ?」
ニウスがなんかブツブツ言ってる。ちょっと怖い。
それに対しエリスは飄々としている。きっと、侯爵様の娘だから、慣れているのだろう。なんだか羨ましい。
僕? もちろん緊張してるさ。王様に会うなんて初めてだし⋯⋯。でも、父さんと母さんに一通りのマナーは叩きつけられているから、まあなんとかなるだろう。
そんなことを考えていると、城門をくぐり抜けた。
それにしても大きいなあ。何で出来てるんだろう?
「ユート様、ニウス様、エリス様ですね。お待ちしておりました。こちらへ」
気がつくと馬車が止まり、ドアが開かれてそんなことをメイドさんに言われる。
「では、また後で」
「ええ、また」
リュミーがそう言ってきたので、笑顔で返す。なんかまた、リュミーの顔が赤くなっていたけど、本当になぜだろう。
気づいたらキュノは起きていて、僕らについてくる。
「それではご案内します」
「お願いします」
僕を先頭に、メイドさんについていく。
城の中に入ると、別世界に入り込んだような錯覚に襲われた。⋯⋯いや、まあ、実際に僕からするとここは別世界だけどね。
広い廊下には、様々な絵画が壁に掛けられていた。素人の僕にでも分かるくらい素晴らしいものだ。一体いくらするのか考えただけでもゾッとする。
天井にはこれまた高そうなシャンデリアが置かれている。ホテルにあったものもすごかったが、こっちのシャンデリアのほうが値を張りそうだ。
僕らが進む道は、赤色のカーペットがひかれている。というかこれ、靴で踏んでいいのか? ちょっと、いや、かなり不安になる。
気がつくと、ある部屋に案内された。
「男性の方はこちらで、女性の方はあちらで、服装を変えてください。着替えが終わりましたら、私共が訪ねますので、部屋でおくつろぎください」
僕らと、エリスで別れて部屋に入る。
ここは控え室なのだろうか。
「なあ、ユート⋯⋯。着替えてもいいのか?」
「えっと、さっきのメイドさんの話を聞く限り、それでいいはずだね」
そう僕が答えると、ニウスが早速脱ぎだした。とりあえず突っ立ているわけにもいかないので僕も着替え始めた。おっと、忘れてた。
「キュノ。僕らの真似をしっかりしてね?」
『うん。わかったよ』
ちょっと心配だが、大丈夫だろう。
■■■■
「お待たせいたしました。謁見の間へご案内します」
数分後、メイドさんが入ってきた。どうやら王様の方も準備が整ったようだ。
僕らは忘れ物がないか確認して部屋を出る。
「数分ぶりね」
エリスもほぼ同時に部屋から出てきた。
「それではご案内します」
メイドさんについていくと、これまた立派なドアが見えてきた。さながら、ゲームのボス部屋前の用な感じだ。
「ユート様御一行のご到着!!」
守衛の騎士であろう人が僕らを見るなり、そう言って、扉を開く。
「お進みください」
僕らは言われるがまま、扉の向こう側へと進んだ。
部屋の中は、とても広い。横には貴族らしき人たちが、規則正しく並んでいる。こんなことを言うと何だが、壮観だな。
奥にはとんでもない大きさの玉座に堂々と座る王様がいらっしゃった。見た目は五十代前半。赤いマントを羽織っており、頭の上には王冠が乗っていた。
その横には、いい年齢にいってそうだけど、堂々としている人と、全身鎧に身を包んだ二メートルを超えていそうな騎士の姿があった。宰相と騎士団長かなにかだろうか。
王様の横にある少し小さな玉座にリュミーがいた。僕と目が合うと、笑顔を見せてくれた。
僕らは、王様から十メートルほど離れた位置で跪く。今更ながら緊張してきた⋯⋯。
「面をあげよ」
「「「ハハッ!!」」」
王様が厳かに宣言する。僕らは、その言葉に従い顔を上げる。
「此度の我が娘、リュミエール・s・グラディアを救うという働き、誠に大儀であった」
「「「ハハッ!!」」」
とりあえずそれっぽい言葉を言う。これで合ってるはずだ。
「此度の働きに報いるためにも、恩賞を取らせる」
「「「ありがたき幸せ!!」」」
マジすか? 爵位とかは勘弁してほしいなあ。一応僕も領主だから、そういうのは間に合ってるんだよなあ。
「まずはニウス・プロテクトよ。貴様には王家の宝物庫に眠る、槍と盾とグラディア王家のメダルを授ける」
そう言いい、騎士団長らしき人に目配せする。
王家のメダルとは、王家が身分を証明してくれる証だ。このメダルを見せれば、大抵の関所は素通りできる。しかも、城の中にもある程度自由に入れるのだ。
騎士はどこからともなく槍と盾を取り出す。収納魔道具だろうか。
「ニウスよ。前に」
「ハハッ」
そうしてニウスは騎士団長らしき人からその槍と盾、そしてメダルを受け取る。その後、僕らがいる場所に戻って来る。
どれどれ、どんな素材で出来てるかな? そんな軽い気持ちで解析してみる。えっと、素材は⋯⋯えっ。
素材の欄に記載されていたのはヒヒイロカネだった。とんでもない。
ヒヒイロカネとは、この世界にあるものの中でもっとも希少で、硬い素材だ。硬いにもかかわらず、加工はしやすいという謎の特徴がある。
この素材で武器を作ると、とてつもない硬度をほこり、壊すことはほぼ不可能になる。使用者の魔力と馴染めばより強力な武器となる。
ヒヒイロカネで武器を作ると、特殊な効果が現れることになる。解析の結果、特殊効果の欄は『?????』になっていた。なるほど、熟練度が上がればこの特殊効果が現れるだろう。
なぜこう判断できるかと言うと、もしなければ、この特殊効果の欄が『効果無し』となるのだ。
この効果を発揮できるかは、ニウスにかかっている。
「次にエリス・フレイヤよ。貴様は魔術師と聞いた。王家の宝物庫にある魔術書と王家のメダルを貴様に授けよう」
「ハハッ」
どうやらエリスは魔術書とメダルを貰えるらしい。僕すら知らない魔術が眠っているかも知れない。僕がもらったわけでは無いけど、後で読ませて貰おうかな。
「では、前へ」
エリスは前に進み、魔術書とメダルを宰相らしき人から三冊ほど受け取って戻ってきた。エリスは嬉しそうな顔をしている。
「最後にユート・フォワードよ。貴様には合う武器がなかったため、すまないが武器を渡すことはできない。代わりと言っては何だが白金貨三十枚と家、そして、王家のメダルを授ける」
「ハハっ! ありがたき幸せ⋯⋯?」
えーと、聞き間違いだよね⋯⋯。なんだか白金貨三十枚と家をくれるって聞こえたような。
「ユートよ、前へ」
僕は言われるがままに、前に進む。今更だけど、王様の近くで報酬をもらうって、実はとんでも無いことなのでは?
「ユート様、こちら家の住所と鍵、白金貨三十枚そして、メダルです」
「ありがとうございます」
リュミーに渡される。
「ユートよ、後で、応接間に、貴様のパーティーと共に来い」
おっと、王様に耳打ちされましたよ。応接間に来いだと!? ちょっとそれはまずいんじゃ⋯⋯。
「わかりました」
僕はリュミーに軽く会釈して、王様に返事をすると元の場所に戻る。
もう諦めよう。
「これにて此度の謁見を終了する。リュミエールよ、ユートたちを案内しろ」
「わかりました。お父様」
どうやら応接間までリュミーが案内してくれるようだ。
(ちょっと、ユート。案内ってどこにされるの?)
(俺も気になるぞ)
二人が小声で聞いてくる。
(応接室だよ。王様が来いってさ)
(それ本当?)
(うん、本当)
どうやら信じてない様子だ。そりゃあそうだ。王が応接室で会うなんて、他国の王様ぐらいにしかやらないだろう。
「それではご案内しますね」
リュミーのその言葉に思考を中断する。僕らはリュミーについていく。
気がつけば、また大層立派な扉が見えてきた。僕らに気づいた騎士たちは扉を開く。
「こちらにお座りください」
僕らはリュミーに促されるまま、椅子に座る。目の前にある椅子は、きらびやかだった。そこに王様が座るのだろう。
そんなことを考えていると、僕らが入って来たドアとは別のドアから王様が入ってきた。さっきよりも少しラフな格好だ。
「待たせてすまないな」
「いえ、先程来たばかりですので」
僕が代表して答える。なんか、怖いからって、ニウスとエリスは僕に丸投げした。さすがのエリスでもここまで、近距離で王様と話したことは無いらしい。
僕なんて王様と話したのは初めてだぞ。後で覚えてろよ⋯⋯。
「まずは、リュミーを救ってくれてありがとう」
王様が頭を下げる。ちょっと、王様がそんな簡単に頭を下げちゃだめでしょ。
「頭を上げてください。僕らは当然のことをしたまでです」
とりあえずそう言ってみる。
「いや、これは王としてではなく親としての感謝の気持ちだ。娘の恩人に頭を下げない父親がいるだろうか? いないだろう」
あれ? この王様案外フランクな人なのか?
「でしたら、その感謝をお受け取りします。ですが、何度も言わせていただきますが当然のことをしたまでです」
「そうか。武器の件もすまないな。宝物庫には、めちゃくちゃな剣しか無くてな」
「いえ、家と白金貨三十枚もくださるなんてそれだけで十分です」
「そうか。謙虚だな君は。やっぱり、ソードの息子だな」
おや? 父さんを知ってるのか? そりゃあそうか。父さんをフォワードの町の領主に任命したのは王様だよな。知ってて当然か。
「ソードはな謙虚な男だった──」
それから、王様は父さんのことを語りだした。
父さんはグラディア学園という、国立の学校で剣を学んでいた。成績はいつもトップクラスだったらしい。
王様はそれを見込んでフォワードの町を頼むことを考えていたらしい。
いざそれを本人に言うと、見事に返上したらしい。何度も王様は説得しようとしたけれど、「自分以外に適任者がいると思います」と言って返されたらしい。
それでも諦めきれない、王様は「君以外に適任はいない!」と、力説して、最後には父さんが折れる形で、父さんは領主になったらしい。
「そうだったんですね」
知らなかったなあ。
「フォワードの町が襲撃された時、もっと早く援軍を出せていたら、なにか変わったかもしれなかった⋯⋯」
「いえ、その後の支援物資には助けられました。その節はありがとうございました」
ニウスは、一応分かっていたのか理解せている様子だが、エリスは、全くついていけていない様子だ。
「そうか。その心に感謝する。ところで、さっきから気になっていたのだが、そのドラゴンは何者だ?」
王様が、キュノの方を見ながら聞いてくる。
「このドラゴンはですね──」
僕はキュノとの出会いからどんなやつなのかを話した。その話をしているうちに、どんどん王様の顔が驚きに染まっていく。
そりゃあな。だってこのドラゴン聖竜様の子供だもん⋯⋯。
「まさか、聖竜様のお子様とはな。驚きだ」
「お父様、ユート様はこういうお人なんですよ」
リュミーが笑顔で援護してくれる。
「なるほどな、時間を取らせて悪かった。これで終わろう。最後に改めて、リュミーを救ってくれてありがとう。リュミー、城門まで案内してやってくれ。なんとなくだがまた会うことになりそうだな」
「そうですね。その時はよろしくお願いします」
僕らはリュミーみ導かれるまま、城門までやってきた。
「お疲れ様でした。また、お会いしましょう。何度か、お家に遊びに行ってもよろしいですか?」
そうだった、僕ら家をもらったんだ。
「はい、いつでも大歓迎ですよ」
「ありがとうございます」
そう言って嬉しそうに笑う。そんな笑顔に見送られ、家へと向かった。
「そう言えば、キュノ、よくできました」
僕はキュノの頭を撫でた。
『ユートのめいわくになるようなことはしないよ』
なんか安心感あるな。
さてと、どんな家かなあ。
僕はまだ見ぬ新しい家を想像して、帰路(?)についた。
次の投稿は1週間後です。




