21話 王女様と行く王都への道
前回のあらすじ!!
王都へ向かっている途中で、襲われている馬車を発見。その馬車はグラディア王国の王家のものだった!?
その後、強さを見込まれて王女様直々に護衛依頼を受けた。
⋯⋯どうゆこと? まあ、とりあえず受けてしまったのでしょうがない。しっかりと守り通そうか。現在、王家の馬車に搭乗させてもらっている。座り心地は最高だ。揺れもほとんど無い。すごいな。
「あの、王女様。なぜ隣に?」
「私がここがいいからです」
馬車に乗る時、王女様と反対側に席に、僕、ニウス、エリスで座ろうとすると、なぜだか、王女様に隣に座るように言われたのだ。なんでだろう。
しかも、隣と言っても離れて座るだろうと思っていたけど全くそんなことはない。間は、数十センチメールも無い。肩が触れてしまいそうだ。
かなり居心地が悪い。あっ、もちろん嫌だとか言うわけではない。王女様は可愛いし、王女様だから緊張するのだ。
そんなわけで、居心地の悪い時間が過ぎていった。
「今日はこの町の宿で休みます」
途中の宿場町に入ると、前の馬車から、メイジさんがそう言ってきた。
さすが王族、門番に紋章を見せるとすんなりと通された。僕らが入ろうとすると、身分証を見せてから、少々確認に時間がかかる。長かったら、十分以上待たされる場合がある。
それが一分未満だぞ。いいなあ。
そんなことを考えていると、今日泊まる予定の宿についた。
見た感じ、装飾が派手で、気後れする。僕だって、領主の息子だこういうのにはなれている⋯⋯はずだ。
そんな僕でもここはとんでも無い気がする。絶対、王家御用達か何かのホテルだよ。どこが宿だ、どこが。
「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。あなたは私達の命の恩人なのですから。当然のもてなしです」
僕が恐れをなしていることを知ってか知らずか、王女様がそんなことを言ってくる。そんなことを言われてもねー。
ふと、ニウスたちの方を見てみる。ニウスは⋯⋯寝てるな。エリスは、特に気負った様子もなく自然体だ。侯爵家の娘ともなると、慣れるのかねえ。僕には無理だな。
そんなことを考えていると、入口に到着した。王女様の護衛の騎士であろう人が馬車の扉を開く。
そこから見えた景色に僕は絶句する。ホテルの担当者であろう人が、一糸乱れぬ整列をして僕らを迎えたのだ。⋯⋯いや、僕ら、というより王女様をかな。
「降りますよ。私のあとに付いてきてください」
王女様が小声で耳打ちしてくる。⋯⋯近い。
とりあえずなんとか動揺を隠し、王女様の後ろについてくる。一瞬、ホテルマンの人から不審な目を向けられたが、すぐに、さっきのように地面を見ている。
そりゃあ、不審に思うだろう。王女様が乗っている馬車に搭乗してるというだけでも不思議なのに、僕らは貴族が着る服でもないラフな格好なのだから。
そんな感じでドギマギしながら王女様の後ろをついていく。どうしたらいいかわからん。
気づくと、受付カウンターに到着していた。いや、あのシャンデリア何円するんだ? 白金貨二桁分だったりして⋯⋯。
なんで、建物の中に、滝みたいなやつだったり水路があんの!? ⋯⋯とりあえず、考えるのやめよ。
「お待ちしておりました。リュミエール王女御一行様。部屋へご案内します」
「すみません。空いておりましたら、三部屋追加でお願いします。お金はこちらが持ちます」
「承りました」
「この三名の方は私の命の恩人です。失礼のないようにお願いしますね」
「かしこまりました。では、ご案内します」
装飾についての思考を放棄した僕の知らないうちに話がどんどん進んでいく。
「皆さん。九時に会議室で、明日のことをお話します。いらっしゃてください」
「「「はい」」」
王女様はそう言ったあと、ホテルマンの人について行った。
「それではご案内します」
「お願いするわ」
「「お願いします」」
なぜだかエリスが強気だ。ちょっとまずいんじゃないですかね。いや、確かエリスって侯爵家のお嬢様だからな、普通なのか?
僕は、二人と別れ、案内された部屋に入った。が、一つ問題が発生した。
「広すぎるだろー!」
そう、広すぎるのだ。ダブルベットの部屋ならいい。シングルにしては広すぎるのだ。広さは、学校の教室と同じくらいだ。
だめだ、落ち着かない。この部屋を照らす照明は、シャンデリアだ。そのシャンデリアに光の魔石がついていて、そこから光が発せられている。
ベットは広く、軽く二人は寝れそうだ。周りには王族のベットにあるイメージの謎のカーテンもどきがある。まじでなんのためにあるんだ?
壁には、家にありそうな壁時計がかかっている。時刻をみると、七時を指ししていた。会議の時間まで、まだ時間はある。
とりあえず、やることも無いので、ベットにダイブする。ベットは、最近日本で出てきていた上が柔らかく、真ん中あたりが固く、下が柔らかいというやつだ。なんでも、寝心地がよくなるとかなんだとか。こればっかりは、実際に寝てみないとわからないな。
枕は、ふわふわで、沈み具合が完璧だ。首にほとんど負担が無い。すごいな。
えーと、確か、夕食はそれぞれの部屋に運ばれてくるんだったけ。だから、机が広いのか。椅子もかなり柔らかそうだ。
そうだそうだ。ホテルと言ったら外の景色だ。どうかなあ。
ウキウキしながら窓辺による。
外の景色は、日本とは違い、そこまで明かりがあるわけではない。もちろん、明かりはある。明かりが少ないお陰か、星空がよく見える。キラキラ光っていてきれいだ。
ここまできれいな夜空は転生しなかったら見れなかったかもしれない。
あっ、流れ星だ。きれいだ。そうやってしばらく夜空を見上げていた。
■■■■
「それでは、明日のことについての会議を始めます」
王女様の号令で会議(明日の予定確認らしいが)が開始された。
ここは、ホテルの一室である会議室だ。
さっきまで、夜空に見とれていたせいで、会議に遅れそうになった。ニウスが来てくれなかったらやばかったかもしれない。反省反省。
「明日の朝九時にここを出発し、王都を目指します。明日の夕方には到着する予定です。明日も長旅になるので、今日はゆっくりと休んでください」
この場にいるのは、王女リュミエール、その、お付きの宮廷魔術師のメイジさん。そして、その護衛の騎士の方々、そして、僕らだ。王女様の言葉に、僕らが一斉に頷く。
「これで、明日の確認は終わりです。次に、道中の追加の護衛の依頼を受けてくださった人たちの紹介をします。皆様お願いします」
そう言って、僕らに話を振る。
「俺はニウス・プロテクト。ディフェンダーをやっている⋯⋯います。得意武器は槍⋯⋯です」
ニウスから自己紹介をする。普段使わないからか敬語がおぼつかない。ちょっとおもろい。
「私は、エリス・フレイヤよ。フレイヤ家の娘よ。魔術師をやってるわ」
「「「フレイヤ家!?」」」
騎士の人々が目を丸くする。そうか、侯爵家だったな。
「僕はフォワードの町の領主のユート・フォワードです。現在は、信頼できる人に領主の代理を任せています。魔術に、武術は一通り使えます。得意な武器、⋯⋯武器ね。大体の武器は使えます」
そういえば、僕の得意な武器って言われてもわからんな。剣のほうがたくさんあるから剣を使ってるけど、父さんに色々教え込まれたからなあ。
「「「ファワード家!?」」」
なぜだか、エリスの時と同じ反応だ。いや、王女様だけは違うな。さっきは、知ってましたよ? みたいな顔してたけど、今回はなぜだかかなり驚いている。そんなにか?
「ということは、ユート様、あなたがフォワードの町に出現したゴブリンロードを撃退したのですか?」
王女様に聞かれる。あっ、そうかそれで有名なのか。
「はい、確かに僕が倒しました」
僕がそう言うとあたりがシーンと静まり返った。
あれ? なんか変なこと言った? かなり気まずいんですけど⋯⋯。
「まさか、英雄と出会えるなんて⋯⋯」
一人の騎士がこの沈黙を破る。
その後、沈黙が破られたことで、談笑が始まり、会議は終了した。その後、たくさんの騎士たちに色々と聞かれて、無駄に疲れたのは言うまでも無い。
■■■■
なんとか、事態が収束した頃には十一時を回っていた。僕は、部屋に戻るなり、ベットに横になった。
はあー疲れた。どうやって倒したのか、どれぐらいの強さだったか、などの質問攻めにあった。
答えられる質問は極力答えた。で、解答したら、次に質問を繰り返された。ニウスやエリスだって助けてくれず、王女様とおしゃべりに興じていた。
いや、打ち解けられたならいいと思うけど、なんで助けてくれなかったのかなあ。あっ、そうだ。こんな疲れたときは夜空を見上げて気持ちを切り替えよう。
そう思い、窓辺に椅子を持ってきて、星空を眺めた。
あー、きれいだ。椅子の柔らかさもあって、だんだん心地良くなる。ん? あれは何だ?
そんな星空の中、流れ星とは違う動くモノが見えたのだ。
僕はとりあえず、ストレージリングから、望遠鏡もどきを取り出した。
この望遠鏡もどきは、僕が、気分で作ったやつだ。魔術を利用しているため、見える距離も自由自在だ。やろうと思えば十キロメートル先も鮮明にみることができる。まあ、距離に比例して、使用する魔力も増えるのだが、まあ、それはいいだろう。
てなわけで、手で持てる地球上にあるどの望遠鏡よりも遠くが見えるのだ。流石に、宇宙望遠鏡には敵わない。
そういうわけで、望遠鏡を通して、謎の動く物体を見てみる。僕はその姿を見て驚愕した。
「おいおい、なんでこんなところにいるんだよ⋯⋯」
そう、謎の動く物体⋯⋯いや、生物はドラゴンだった。その姿は東洋系のドラゴンでは無く、西洋系のドラゴンだ。ここからでも分かる大きな翼にに胴体。足に手、全ての大きさが規格外だ。
体の色はダークブルーで、体長は軽く六十メートルは超えているだろう。なぜだか、翼のところどころに穴が空いている。その手には、卵のようなものが抱かれている。
更に拡大してみると、体中が傷だらけだった。血のようなものを所々から垂らしている。目の光が徐々に失われていっている気がする。
ふと、そんなドラゴンの後ろを見てみると、手の無いドラゴンがいた。正確には手が翼になっているのだが、それはおいておこう。数十体はいるだろう。そのドラゴン⋯⋯いや、ワイバーンか、は、前を飛んでいるドラゴンの後をついて行っているように見える。
あっ、ワイバーンがドラゴンに向けて火を吐いた。それに気づいたドラゴンが、右に旋回してその炎を避けた。
確定⋯⋯だな。ワイバーンはあのドラゴンを追い、仕留めようとしている。その狙いはわからない。普通は、それがあのドラゴンの運命だ、と言って無視するだろうが、今回ばかりは無視できない。
なぜなら、ドラゴンは卵を守るようにしているからだ。この後生まれる命を見殺しにはできない。
僕は書き置きを残し、窓から『飛行』を発動させ、飛び立っていった。
しばらく飛行を続けると、ドラゴン達の近くに到着した。それと同時に、ワイバーンがドラゴンに一斉砲火(火のブレスだが)を行った。僕はドラゴンを守るように結界を張った。
ブレスがドラゴンを掠めることはなかった。
突然の乱入者に両者とも驚きが顔に出ていた。が、ドラゴンの方は僕が守ったことに気がつくと、今まで止まっていたが、速度を上げて逃げていった。
申し訳ないが、ドラゴンに、僕から場所が分かるように魔術を施させてもらった。
僕は、そのドラゴンを見送り、まだ固まってるワイバーンに向き直った。
「「「ギャアアア」」」
ワイバーンが騒がしく叫ぶ。うるさいな。
そう思いながら、改めて奴らを観察する。一番小さいやつでも体長は十メートルはあるだろう。そんな奴らに剣で挑むなんて自殺行為だ。
なので、魔術で攻撃する。
「『炎の竜巻』!!」
魔術に巻き込まれたワイバーン数体が黒焦げになって地面に一直線で落下する。
それを見た残りのワイバーンが恐れをなしたのか、後ろに後退していく。
そのまま帰ってくれるといいんだけどな⋯⋯。今更だが、ワイバーンはBランクの魔物だ。一体だけなら倒せても、たくさんのヤツに囲まれたらひとたまりもない。
実際、ワイバーンを倒せそうで、深追いし、ワイバーンの巣にやって来て、ワイバーンに一斉に攻撃されて命を落とした、という事例も少なくない。
さっきの攻撃は不意打ち気味だったからと、この速度で発動できるとは思わず油断していたからだろう。
きっと二度目は無いだろう。
が、怯えているのか一向に動こうとしない。⋯⋯やってみるか。
「『付与』恐怖!!」
僕は『付与』の状態異常の拡大解釈で、アイツらに今を越える恐怖を付与できないか検証がてらやってみた。
すると、今まで動かなかったワイバーン達が脱兎の如く逃げ出した。
よっしゃ! 成功みたいだ。僕は、しばらくワイバーンが飛んでいった空を見続けた。アイツらが戻って来る感じはしない。うまくいったか。
おっと、忘れてた。えーっとあのドラゴンはっと⋯⋯いたいた。ふむ、そこの山の頂上か。飛べなくなったのだろうか。
僕は、そのドラゴンがいる場所に飛んでいった。
頂上につくと、傷だらけのドラゴンが、丸くなっていた。
『何者だ!?』
脳内に言葉が響く。ドラゴンの方をみると、こちらを睨みつけて来る。どうやらこのドラゴンは喋るらしい。
また一週間間隔に戻します。




