19話 いざ王都へ
長くなりました。
三人で協力して、なんとかパラライズリザードを撃退できた。その報告をすべくギルドに来たのだが⋯⋯。
うん、何故か始めて来たときよりも視線を感じる。なぜだ? ニウスがパーティーに増えたから? ⋯⋯わからんな。
「お前ら無事だったのか? やるなー」
「よくやった。パラライズリザードの亜種を倒したんだってな。すごいな」
冒険者達が声をかけてくる。詳しく話を聞くと、僕らがパラライズリザードの亜種の討伐の依頼を受けたことがバレて、僕らが生きて戻って来るか来ないかで賭けをしていたらしい。
人の生死を何だと思ってるのかね。はー、まあいいや。とりあえず、とっとと討伐証明をしますかね。
僕らは、ギルドの受付へと歩いていく。
「ユートさん。お戻りになられたんですね。良かったです。それで、どうですか?」
「はい、討伐できました」
「では確認しますね」
僕らはギルドカードを受付嬢さんに見せる。
「はい、確認しました。こちらが報酬金の金貨五枚です。ご確認ください」
「ありがとうございます」
僕は金貨を受取り、確認する。うん、確かに五枚あるな。
「ではこれで」
僕は、ギルドから出ていった。
「ところでこの後どうするんだ?」
ニウスが聞いてくる。
「まあ、もう夕方だし、宿に戻るか。ニウスはどこで宿を取ってるの?」
「今は取ってない。契約は昨日までだ」
「じゃあ、僕らのいる宿に泊まったら?」
「じゃあそうさせてもらうかな」
よし、決まりだ。
「エリスもいいよね?」
「いいわよ。というかなんで私に聞くの?」
それもそうか。部屋に一人増えるわけでもないしなあ。
「そうだね」
とりあえずそう返す。さてと、宿に戻って明日のことを考えるか。
■■■■
「よく来てくれた。君たちのことを呼んだのは他でもない。明日のことを話すためだ」
宿に帰り、夕飯を食べ終えたあと、二人に部屋に来てもらった。そこで僕は無駄に雰囲気を出すために、厨二病っぽく言った。どうだ。
「⋯⋯ユート。気持ちは分かるが卒業したほうがいいぞ」
「ださ⋯⋯」
あれ? 二人が痛い人を見る目を向けられてるんですけど。ひどいや。
「ゴホン。雰囲気を出すためにわざとやたんだよ。まあ、それは置いといて。明日はここを出て、王都に向かおうと思う。ここで朝食を頂いてから出発する予定だ。いい?」
「問題なし」
「いいわよ」
よし、じゃあ明日出発だ。王都は一体どんなとこなんだろうなあ。広いのかな? どんな人がいるんだろうか。はあ、楽しみだ。
「⋯⋯それだけか?」
「うん、これだけだけど」
あれ? もっとほかの事あると思ってた? なんか申し訳ないなあ。
「あっ、そうだわ。せっかく私達でパーティーを組んだんだから、もう少し自分たちのことを話さない?」
なるほど、名案だ。まだ、日が暮れてからそんな時間が経っていないしいいかもしれない。
「じゃあ、改めて。僕はユート・フォワード。好きな食べ物は焼肉。好きな色は青。それと⋯⋯」
──フォワードの町の領主、と言おうとして迷う。エリスに言ってもいいのだろうか。ニウスはもうすでに知っているから問題はない。だけど⋯⋯
「?」
エリスが首をかしげる。
うん、仲間なんだ。隠し事はなしでいこう。
「言ってなかったけど、僕はフォワードの町の領主をやっている。まあ、今は、知り合いに領主の代行を任せているけどね」
「!?」
エリスが驚いている。そりゃあ、そうだ。フォワードの町はかなり有名だ。ぶっちゃけると、このグラディア王国の中で知らない人なんかいないんじゃないかというレベルだ。
僕の父さんはグラディア王国の国王である、オーディン様直々にファワードの町の領主に選ばれた人なのだ。
父さんは領主に任命されてから、幾度となく魔物の襲撃から、町、そして国を守っていたのだ。
今回は襲撃してきた魔物が強すぎて、連れて行かれてしまったのだろう。
そんなわけで、フォワードの町の領主は国を守る英雄とまで言われていたのだ。もちろん、そんな父さんの息子である僕も実は案外有名だったりするのだがそれはまあ、どこかの機会で。
閑話休題
「まさか、ユートが英雄様の息子だったなんて、驚きだわ」
まあ、そりゃそうだろう。
「次は俺だな。改めて俺は、ニウス・プロテクト。得意なのは槍術だ。好きな食べ物は、うーん、そうだなあ⋯⋯全部だ。好きな色は緑だ。ユートとは古くからの知り合いで、幼馴染だ」
好きな食べ物は全部⋯⋯か。大きく出たな。いや確かに、好き嫌いしないタイプだからなあ。付け足すなら、仲がいい人にはとても優しい。僕が、困っていたときは幾度となく助けてくれた。
「じゃあ、私の番ね。私はエリス・フレイヤ。魔術が得意よ。好きな食べ物は、スイーツよ。好きな色は白。ユートが正直に言ってくれたから私も言うわ。私は侯爵、フレイヤ家の娘よ」
「「なんだって!?」」
嘘だろ⋯⋯。エリスって侯爵家のお嬢様だったの!? 聞いてない聞いてない。打首とかないよな!?
「打首だけは勘弁してくれー」
ニウスがなんか懇願してる⋯⋯。
「大丈夫よ。言ってなかったし。私が侯爵の娘と知っても今まで通り接してほしいわ」
「ふー、助かったぜ。じゃあそうさせてもらうぞ」
「改めてよろしくねエリス」
「ええ、こちらこそよろしく」
こうして、お互いの知らない面をぶつけ合い、語り合い、その日の夜は過ぎていった。きっといままで以上に仲良くなれただろう。
■■■■
次の日、僕らは、カイトルの町を出て、”北の森”を通る王都への道に沿って進んでいる。
王都への道だからか、道がかなり舗装されている。お陰でものすごく歩きやすい。うまくいけば、あと四日で王都につけるだろう。
「にしてもすごいな。フォワードの町からカイトルの町への道なんか目じゃないくらいに舗装されてるぞ」
「⋯⋯舗装できてなくて悪かったね」
くそ、ニウスのヤツ、言いたい放題言いやがって。見てろよ、みんなを助けて、魔王を倒したら、フォワードの町を日本くらいの生活水準にしてやるよ。
「ちょっと二人とも喧嘩しないの」
「「はーい」」
そんなことを考えてると、エリスに注意された。これ以上言い争う必要もないし、素直に従う。
ん? なんか音が聞こえたような⋯⋯?
「ねえ二人とも、なんか音聞こえなかった?」
「えっ? 音?」
耳をすます。うん、確かに聞こえる。これは金属同士がぶつかる音だ。前方から聞こえてくる。
「確かに聞こえるわ」
「俺は、気づいてたぞ。ハハハハハ」
ニウス。こんな所で見栄を張らんでよろしい。
「行ってみよう」
僕は音が聞こえた方向に走っていった。
しばらく進んだところできらびやかな馬車とそれを守るように周りを囲む騎士と、魔物が戦っていた。
魔物は見た感じゴブリンだろう。フォワードの町を襲撃してきた奴らと同じように、ゴブリンには似合わない上物の剣が握られていた。
その中にひときわデカイやつがいた。見た感じゴブリンコマンダーだ。
ゴブリンコマンダーとは簡単に言うとゴブリンの群れの長だ。前にゴブリンロードを倒したが、ゴブリンロードよりもゴブリンコマンダーは弱い。
ゴブリンロードがBランクなのに対してゴブリンコマンダーはB−ランクだ。だからこそ、騎士がこんなヤツに遅れをとるはずはないのだが⋯⋯。
見た感じ騎士側が押されているようだった。理由は簡単だ。ゴブリンの数がおかしいのだ。騎士個人がいくら強かろうと、多勢に無勢。数で押されたらひとたまりもない。今は、一斉攻撃がないからなんとか持ちこたえているようだが、時間の問題だろう。すぐに救援に入ったほうが良さそうだ。
おや? 馬車から人が出てきたぞ。数は⋯⋯女性が二名か。一人は何やら大きな杖を持ち、紫色の外套を羽織っている。魔術師か何かだろうか。その外套には、クロスされた剣の紋章が入っている。
あの紋章、どこかで見たことがある気がする。今更だけど馬車にも同じ紋章が書かれていた。
もう一人の女性は、フードがあるマントを羽織っており、そのフードを被っているため、顔は見えない。が、溢れ出る気品は隠せず、思わず見とれてしまうほどだ。
魔術師らしき女性が足元に術式を展開していく。あれは、『飛翔』の術式だ。どうやら、騎士たちに殿を任せ、脱出するつもりらしい。あの速度だとまだ、数秒は掛かりそうだ。
走って近づきながらそんなことを考える。ん? 術式が消えた? 見た感じ術式は発動していない。どういうことだ? 解除されたのか?
あっ、まずい。騎士たちの包囲網の隙間からゴブリンが侵入した。ゴブリンは、女性二人の方へ一直線だ。
「僕は先に行く。到着したら騎士たちの援護に回ってくれ『瞬間付与』加速!」
「「了解」」
僕は自分に超加速を施し、一気に女性達の隣に到着する。
「『風の壁』」
続けざまに風の防壁を作り出す。
今まさに攻撃をしようとしてきていたゴブリンは風の防壁に吹き飛ばされ、地面を転がった。チッ、仕留められなかったか。まあ、いいや。
「大丈夫ですか?」
■■■■
〈リュミエールサイド〉
怖い。私、リュミエール・S・グラディアは馬車の中で身を縮ませて怯えていました。隣にはグラディア王国の宮廷魔術師筆頭のメイジがいます。
仕事を終え、王都へと帰る途中、ゴブリンの襲撃にあってしまいました。そんなゴブリンたちに私の護衛の騎士たちが勇敢に立ち向かってくださっています。
そんな彼らが私は誇らしく、それでいて心配です。彼らだって王都には家族がいる。私を守ってくださるのはありがたいですが、何より、彼らが無事に家族に会えることを願っています。相手はゴブリンのなのでそこまで苦戦しないと思っていました。
ですが、現実は残酷なものでした。
最初は、騎士たちのほうが優勢でした。それなのに、ゴブリンコマンダーの参戦によって戦況は一変しました。
ゴブリンコマンダーは、ゴブリンが倒れると、すぐに新たなゴブリンを召喚したのです。気づけばゴブリンの数は護衛の騎士の方々よりも多くなっていました。
いくら一人一人が強くとも、数の暴力の前にはすべてが無意味に等しいのです。
「かなりまずい状況です。姫、飛翔魔術で脱出しましょう」
メイジがそう、提案してくる。それが正しいのでしょう。ですが⋯⋯。
「メイジ。戦ってくださっている騎士たちはどうするのですか?」
「ここに、殿として残ってもらうしかありません⋯⋯」
メイジの顔が罪悪感に染まる。彼女も苦渋の決断なのだろう。
「⋯⋯わかりましたわ。そういたしましょう」
「このような決断をさせてしまい申し訳ありません」
「気にしないでください」
そうやって明るく振る舞うけれど、心の中は悲しみでいっぱいです。
私とメイジは馬車からおりました。その後、メイジが術式を構築し始めました。
「姫! お逃げください」
「私達は最後まであなたのために戦います!」
騎士の方々が、口々に言ってきます。私は罪悪感で胸が押しつぶされそうな感覚に襲われました。
「最後までよろしくお願いします」
「「「お任せください!!」」」
その時、異変が起きました。メイジの構築していた術式が、完成までわずかのところで、砂が風に飛ばされるように消えました。
「どうしたのですか!?」
「わかりません。術式が消えました」
どういうことでしょうか。
「姫ー!! お逃げください!!」
一人の騎士の声が耳に入りました。
ふとそちら側を見ると、数体のゴブリンが包囲網を抜け、こちらに、武器を振りかざしながら、こちらに迫ってきていました。
メイジも気づき、魔術を発動しようとしますが、間に合いません。その瞬間私は死を覚悟し、目をつむりました。
「『風の壁』」
そんな声が響きました。ただその声は、メイジのものではありません。男の人の声です。
「大丈夫ですか?」
その後、また声が聞こえました。私達は助かったのでしょうか。目を開けると、そこには黒髪黒目の私と同年代くらいの男の子が立っていました。
横を見ると、ゴブリンが地面に転がっていました。
もう一度男の子の顔を見ると、なぜだか自分の胸が高鳴るのを感じました。
「はい大丈夫です。ありがとうございます」
そう言うと、彼は安心したような顔をしたあと、後ろを向き、ゴブリンたちと対峙し、剣を抜きました。この人ならこの絶望的状況から私達をすくってくれる。そう確信しました。




