18話 パラライズリザード亜種の討伐
茂みから出てきたのはフォワードの町に住んでいた、僕の幼馴染のニウス・プロテクトだった。彼は、僕が小さいころ一緒に武器の修行をしていた。何度か、二人で、大人たちに、「行くな」と言われていた森に入って何度も怒らたっけ。
ゴブリンロードの襲撃の時に姿が見えなかったから、無事だったか不安だったけど、無事で良かったと思う。
「ブライトのおっさんから聞いたぜ。お前が町を壊滅寸前に追い込んだ、魔物を討伐したんだってな。すげーな」
「いや、たまたまだよ」
軽口を言い合う。懐かしいなあ。
「⋯⋯誰?」
一人だけついていけないエリスが首をかしげている。
「あっ。ごめん。ほらニウス自己紹介」
「おっと悪い。俺はニウス・プロテクトだ。もともとフォワードの町に住んでいて、そこのユートと古くからの友達だ」
「エリスよ。ユートと冒険者をやっていてパーティーを組んでいるわ」
「俺も冒険者だぜ。ディフェンダーをやっている。今はCランクだ。良かったら、お前たちのパーティーに入れてくれないか?」
確かにそれはいい案だ。このパーティーはアタッカーである僕。魔術師であるエリスしかいない。ちょっとバランスが悪いのだ。
ここにニウスというディフェンダーが入ってくれると戦いやすくなるだろう。
「私は賛成よ。ユートが決めて」
「じゃあ、ニウス、これからもよろしくね」
「こっちこそよろしくな」
僕が手を差し出すと、ニウスがそれを握ってくれる。
「そうだ。忘れてた。すぐにギルドに戻って報告しなきゃ」
「忘れてたわ」
「どうしたんだ?」
そうだった、ニウスに伝えるのを忘れた。
とりあえず、ギルドへ走りながら伝えることにする。急いだほうが良さそうだ。
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「なるほど。情報ありがとうございます。まさかパラライズリザードに亜種がいてその亜種が麻痺だけでなく毒までも扱うとは。そういえばユートさんは大丈夫だったんですか?」
「はい。エリスが状態異常を回復する魔術を使えたお陰で助かりました」
ありのままを話す。あっ、そういえば。
「すいません。ニウスを僕らのパーティーに入れてもいいですか?」
「よろしく頼む」
「わかりました。ではこちらにリーダーの方のお名前と追加されるメンバーの名前をご記入ください」
「了解です」
僕は受付嬢さんからペンを受け取り、リーダーの欄に僕の名前を書く。一応僕がリーダーとなっている。
書き終えたあとニウスにペンを渡し名前を書いてもらう。
「確認しました。これでパーティーメンバーの追加の申請は完了しました」
「ありがとうございます。では僕らはこれで」
そう行って去ろうとした。
「待て」
が、去ることはできなかった。声の主の方向を見る。そこには筋骨隆々の大男が立っていた。何を隠そう、この町のギルドマスターをしているカイルさんだ。
僕はカイルさんの姿を見るなりとーっても嫌な予感がした。次に発せられた言葉でその予感は的中していることを知る。
「パラライズリザードの亜種の討伐、お前たちにお願いしていいか?」
ほらやっぱり。どうせそんなことだろうと思ったよ。流石に今更逃げることはできなさそうだ。
「わかりました。話を聞きます」
「悪いな。ギルド長室に来てくれ」
僕らは言われるがままに、ギルド長室に向かった。
ギルド長室に入るとやっぱりと言うかなんというか筋トレグッズがそこかしこに転がっていた。僕らは椅子に座り、カイルさんの言葉を待つ。
「お前たちに依頼する理由だが、この町にいる状態異常を回復できる魔術が使えるのはエリスだけだ。それに、ゴブリンロードを撃退したユートもいる。ニウスがどれぐらいの実力かは知らんが、お前らに依頼することが一番だと判断した。改めてよろしく頼む。報酬は金貨五枚だ」
どうしてだろう。少ないと感じてしまう。この前白金貨五枚ももらってしまった弊害だろう。金貨五枚。つまり五十万円ももらえるのだ。かなりこれでもいいほうだろう。この町の人達のためだ。受けるか。
「わかりました。お受けします。二人もそれでいい?」
「「異議なし」」
良かった二人も賛成のようだ。
「ありがとう。頼んだぞ」
こうして僕らは、調査依頼のハズだったが、討伐依頼に発展した依頼を受けることにした。
■■■■
さっきまでいた南の森に、さっきとは違い三人で来ていた。
依頼内容は調査から討伐になっている。Cランクの討伐依頼だそうで、本当はまだ受けたくなかったが、町のためにも受けることにした。
さっきよりも素早く調査できるだろう。理由は簡単。前回はどんなやつなのか検討もつかなかったが、さっき一度見た。だから、『捜索』で探せるのだ。
「『捜索』」
なるほどここから東に四百メートルぐらいか。かなり近いな。
「ここから東に四百メートル進んだ先にいる」
「了解」
「今に始まったことじゃないが本当にユートの魔術はすごいな」
ニウスが感心してくれている。よせやい気恥ずかしいだろうが。
僕らはその場所へと走る。『付与』による加速を付与しているため、ほんの十数秒で目的の場所にたどり着けた。
「アイツか?」
「うん。そうだよ」
一度も見たことがないニウスが小声で聞いてくる。その問いに僕も小声で返す。
「もう一度確認しとくよ。アイツと目を合わせたら状態異常になるから気をつけるんだぞ」
さっきは目を合わせてしまったからひどい目にあった。次は流石に気を引き締めるか。
「じゃあ、ニウス。アイツと目を合わせないように、ヘイトを集めてくれ。その隙に僕らが攻撃を仕掛ける」
「了解」
ニウスは返答すると同時に、持っている武器である槍で、パラライズリザード(めんどくさいからそういう)を突き刺す。
ガキン!!
金属同士がぶつかる甲高い音があたり一面に響いた。 パラライズリザードには傷一つついていない。予想はしていたがかなり硬いらしい。ニウスにはすでに予想として伝えているから。特に驚いた様子もない。
ニウスがヘイトをもってくれているうちに僕らも攻撃を仕掛ける。
「『火の玉』!」
「『氷の棘』!」
エリスは火属性、僕は氷属性の魔術をそれぞれぶつける。ちなみに僕の『氷の棘』は貫通力を高めるために、通常よりも鋭くしている。当たる面積が小さければ小さいほど、圧力が大きくなり、貫通しやすくなるのだ。
結果は予想通り、傷をつける程度だ。だけど、コイツは厄介なことに再生能力を持っている。だから、つけた傷はすぐに元通りになった。
おっと忘れてた。コイツには逃げるのに最適な早足というスキルも持っていた。
「『物理障壁』」
僕は対物理に特化した結界を張った。効果は簡単で、物理攻撃による突破を不可能にする、というものだ。魔術や複合技では簡単に破壊されてしまうが、パラライズリザードは魔術はもちろん、複合攻撃も使えない。つまり、この結界はコイツを捕まえるうえで最適なものなのだ。
僕はエリスの魔術攻撃の合間を縫って剣撃を浴びせる。剣がパラライズリザードに触れるたびに衝撃が僕の手を襲う。やっぱり硬いな。
しばらく切りつけたあと、ヘイトがこちらに向かないよう、一度離れた。そろそろあれが使える。
「『付与』リザード特攻!」
僕はその力を込めた剣撃を叩き込むべく、剣を振る。だけど、その剣はアイツに触れることはなかった。
そう、パラライズリザードが超スピードで躱し、逃げて行ったのだ。
今までは僕の攻撃には見向きもしなかったのに、僕の攻撃が通ることに気付き、不利を察したのか逃げ出したのだ。
敵ながら、気づいたことはすごいけど、自分がもう詰みであることには気づいていないらしい。
パラライズリザードが逃げていった方からゴン!! という鈍い音が聞こえた。見事に結界にぶつかったらしい。
「行くぞ」
「「了解」」
ニウスが先陣を切って、僕らに提案する。異論なし。
音が聞こえた方に行くと、まだ、パラライズリザードが結界に体当たりして突破を試みている。なんだか哀れだ。
みんなにもリザード特攻を付与してあるから、攻撃は通るはずだ。
ニウスが、槍をパラライズリザードに突き刺す。さっきとは違い、刺さっている。
「ギャアァァ!」
痛みのためかパラライズリザードが悲鳴を上げる。もう一度突き刺すべく、ニウスが槍を突き出したが、躱されてしまった。僕も何度か攻撃をするが全て躱されてしまった。
すると、ニウスとパラライズリザードの目があった。まずい。しかし、気づいたときはもうニウスが麻痺して倒れたあとだった。
僕は念のため『鑑定』で鑑定する。状態の欄には「麻痺」とだけ書いてあった。その時、僕の脳内に勝ち筋を見つけた。
「すぐ治すわ。『状態回復』!」
「悪い助かった」
すぐにニウスは立ち上がり、ヘイト集めに奔走してくれる。
僕は手をパラライズリザードに向ける。
「『付与』麻痺!」
そう、前に受けたときに、自分も状態異常系の付与が可能になったのだ。
敵が動き回って攻撃が当たらないなら、敵の動きを止めればいい。
麻痺を食らったパラライズリザードは力なく地面に倒れる。僕はその隙を逃さずに確実にパラライズリザードの首をはねた。
しばらく、死体を見つめ、ゴブリンロードのように復活しないか確認した。が、動き出す様子は見られない。
「よし。討伐完了。ギルドに報告しよう」
「やっぱりユートの『付与』はすごいな。というかそんな付与あったっけ?」
「やっぱりユートは規格外よね」
後ろの方で、二人がなんかいってるけど、気にしない。僕だって不思議でたまらないんだよ!!
とりあえず、パラライズリザードの討伐任務も見事に完遂したのだった。




