17話 パラライズリザードの調査依頼と再会
目を覚ますと、見るのは二回目の天井が目に入った。
昨日、ギルドに素材買い取りの依頼をしたら、想像以上に高い白金貨五枚とギルドランクのCへの昇格がされた。今でも夢のようだ。
だって日本円にしたら、五百万円もゲットしたんだよ。前世なんて、月に五千円もらえたら良い方だったんだよ。⋯⋯自分で言ってて虚しくなるな。
そんなことを考えながら、ベッドから降りて、身支度を整える。時計を見たら六時ちょうどだった。朝ごはんは確か七時に作ってくれるから、しばらくは時間がある。
僕は特にやることもないので、二度寝をすることにした。僕はベッドにダイブして再び眠りについた。
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やらかした!
目を覚まし時計を見ると、八時を回っていた。軽く寝る予定が二時間近く寝てしまった。
僕は慌てて一階に降りる。
「すいません。寝坊しました」
予想以上にテンパっていたけどしょうがないだろう。
「おはよう。珍しいね」
「おはよう。珍しいわね」
この宿のオーナーさんとエリスが挨拶をしてくれる。オーナーさんは、二人分の食事を運んできてくれる。温め直してくれたのか湯気が上がっている。どうやら、エリスは食べるのを待ってくれていたらしい。
「おはようございます」
僕も挨拶を返す。
こっちの世界にも、「おやすみ」、「おはよう」を言う文化が存在している。
僕は机の上に置かれた食事を見てみる。
今日の献立はフランスパンみたいに長いパン。スープは見た感じコーンスープだろうか。大きなプレートの上には、新鮮そうなサラダ、そして、スクランブルエッグに近い卵(?)料理。ソーセージっぽいやつが乗っていた。
どれも美味しそうだ。
早速、コーンスープを横においてあったスプーンで、すくって口に運ぶ。
うまい! 口の中にコーンの甘みが広がる。このとうもろこしは、トウキビといっても良さそうだ。
ソーセージもうまい。噛めば噛むほど、口の中にジューシーな肉汁が広がる。焼き加減が完璧だからここまで美味しいのかもしれない。
そんなことを考えながら、美味しい朝食に舌鼓をうった。
「このあとはどうするの?」
食事を終え、一段落すると、エリスが聞いてきた。
そうだなー。どうせCランクに昇格したのだから今まで受けられなかった、討伐クエストを受けられるべきだろう。
飛び級でCランクになったがそれで天狗になるつもりはない。最初は、Dランクの討伐依頼でも受けて、討伐依頼に慣れるかな。
「ギルドで依頼を受けよう。大金が入ったけど、それに甘えるつもりはないからね」
「分かったわ。じゃあギルドへむかいましょう」
こうして、また、ギルドの依頼を受けることにした。
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今僕達は”南の森”に来ている。”南の森”は他の森よりも魔物が多く生息しており、魔物によってはCランクに到達する魔物もいるそうだ。噂でしかないが運が悪ければ、B+ランクの魔物と遭遇することがあるそうだ。
そのため、この森は、初心者の冒険者が入ることを控えるように言っている。ただし、絶対ではないので、もし行くなら自己責任で、ということらしい。
Eランクは当然、それどころか、依頼としてこの森に入るDランクの冒険者でも、年に数十人は戻って来ない、かなり危険な森なのだ。
僕らはそんな危険な森に、足を運んでいた。
今回の依頼は、この森に生息しているとあるパラライズリザードが最近様子が変だということで冒険者ギルドが調査することになったそうだ。
本当は討伐依頼が良かったが残念ながらDランク対象のものがなかったのだ。Cランクの依頼にはあったが、なりたてである僕らが急にCランクの討伐依頼を受けるのはリスクが高すぎると考え、受けなかった。
だけど、代わりと言っては何だが、Eランクの調査依頼を受けてきたのだ。
今更だけどギルドの依頼には何種類かある。主に存在するのは、討伐依頼、調査依頼、捜索依頼、採取依頼等だ。
今僕らが受けているのは二番目のやつだ。
僕はできるだけ魔物との戦闘は避けながらパラライズリザードを探していた。
「全然いないわね」
「そうだね」
僕にしか聞こえないぐらいの小さい声でエリスが言ってきた。
僕はそう簡単にできないって思っていたから、そこまで焦ってはいない。今は、どうやって探すか考えている。
「いたわ」
「えっ? どこ?」
「そこよ。そこ」
エリスが指を差した方向を見る。確かにそこには依頼書に書いてある絵と瓜二つの魔物がいた。さっきのはフラグだったのかね?
まあそれは置いといて、早速僕は、『付与』と魔術を同期させてできるオリジナル魔術を使う。
「『鑑定』」
すると僕の眼の前に僕が指定した人以外には見えない透明の板みたいなのが出る。そこには文字が書いてある。
「これを見て」
「分かったわ」
僕はエリスにも見てもらう。もうすでにこの魔術はエリスに伝えている。そこに書いている内容は、
名前 パラライズリザード亜種
スキル 状態異常、再生、早足
だ。
この魔術は、僕の魔術と『付与』の力を合わせている。名前と所有スキルがわかる。
ただし、相手の力が強いと簡単に抵抗されてしまう。だけど、これだけで、かなり役に立つのだ。
「亜種?」
エリスが不思議そうな顔をする。
僕だって心情は同じだ。
とりあえず見つからないようにこっそりとパラライズリザードを観察する。少しでもいい情報を持ち帰りたいからな。
「とりあえずもう少し観察しよう」
「ええ、そうね」
それからしばらくパラライズリザードを観察した。もちろん、周りの魔物に気をつけながらね。
そんな油断が悪かったのだろう。パラライズリザードの亜種と目があった。
⋯⋯。
思わず息を飲む。やべ、油断した。
次の瞬間僕の体から急に力が抜けた。力が入らなくなった僕の体は、重力に従い地面に倒れる。
意識はあるだけど体が思うように動かない。しかも、頭がくらくらする。
意地で自分に『鑑定』をかける。すると、「状態」の欄に麻痺、毒と書かれていた。
今更だが、パラライズリザードはどっか行った。
「大丈夫!?」
エリスが切羽詰まった声で聞いてくる。
今更だけどこれってかなりまずい状況ではないだろうか⋯⋯。毒の状態によっては死んでしまう可能性ですらあるんだよなあ。だけど、なぜだか焦る感じがしない。なんでだろう。
「『状態回復』!!」
エリスが状態異常回復の魔術を使ってくれる。みるみるうちに体に力が戻る。
力が入るようになったから、自分の力で起き上がる。エリスがいて助かったな。
「ごめん、ありがとう。もう大丈夫だよ」
「良かったわ」
エリスが安心した顔になる。どうやらかなり心配してくれたらしい。申し訳ない。次からはもっと気をつけないとな。
「パラライズリザードはどこか行ったわ」
「そうみたいだね」
「ところでさっき状態異常をかけられてたけど、どんなのかけられたの?」
エリスが聞いてくる。
僕がエリスの立場でも気なっただろう。僕はさっきの状態を伝えた。
それを聞いたエリスの表情は驚きに満ちていた。
「まさかパラライズリザードが麻痺だけではなく毒までも操るなんて⋯⋯。亜種だからなのかしら」
「その可能性も捨てきれないだろうね。とりあえず、ギルドに報告しようか」
「そうね」
こうして僕らはギルドに戻ろうとした。
「こっちから声が聞こえた気がするな」
僕らのいる場所から右側の茂みの奥から声が聞こえた。足音はこちらにどんどん近づいてくる。
「こんなところに人がいるとはな。おいお前ら大丈夫か?」
人が茂みから出てきた。その姿を見て僕は愕然とする。
「ニウス⋯⋯?」
「なんでお前俺の名前を知って⋯⋯。⋯⋯!? まさかユートか」
「そうだよ」
そう、その人はフォワードの町での僕の幼馴染のニウス・プロテクトだった。




