15話 冒険者ギルド
ギルドの中に入ると、扉が閉められた状態でも聞こえた喧騒がより一層聞こえた。
まだ、昼も回っていないのに飲んでいる冒険者、中には喧嘩をしている奴らもいる。左側にあるボードの前には受けるクエストを決めているであろう冒険者のパーティーがちらほら見える。
フォワードの町では有事の際以外は冒険者ギルドを訪れたことはない。フォワードの町のギルドでも通常時はこんな感じなのだろうか。
「すごいわね」
エリスの口からも驚きの声が出ている。内心、僕もかなり驚いている。
「おいおい、ここはガキが女を連れてくる所じゃないぞ」
「俺等が現実を教えてやるよ。授業料はその女でいいぞ。かわいがってやるよ」
「兄貴、俺の分も残してくださいよ」
なんとなく予想はしていたが、男三人組に絡まれた。一人は筋肉が鎧レベルでついている、身長は二メートルは超えているだろう。背中には戦斧がかけられている。
二人目は、無駄に高そうな鎧を身にまとっている。背中には盾が背負われているがディフェンダーだろうか。身長は一八〇センチメートルぐらいだろう。
三人目はひょろひょろな痩せてる男だ。身長も一六〇センチメートルぐらいしかない。
それぞれ、気持ちの悪い笑みを浮かべている。
「おいおい、無視してんじゃねーよ」
一番デカイ男が、何も言わない僕に痺れを切らしたのかめちゃくちゃ不機嫌そうにガンを飛ばしてくる。やっかいだなあ。
「別にあなたに教えてもらうことはありません」
僕はできるだけフレンドリーに話す。
「俺の聞き間違いか? 俺に教えてもらうことがないって聞こえたが?」
なんだコイツ……。めんどくさ。もういいや。
「はあ、もう一度いう。お前らなんかに教えてもらうことは何一つない。あっ、どうしたらそんなにイキれれるのか知りたいかな?」
こっちがせっかく下手に出てやったのに、全然どいてくれない。こいつらそこそこ名のしれた冒険者なのかな。いい意味ではないだろう。そんないい意味で知られてる冒険者がバカなわけないか。悪名では有名かもね。
「ああ? 今なんて言った? 今土下座して裸踊りをすれば許してやる」
「いや、なんでお前なんかに謝る必要があるんだ?」
「殺す! やれ!」
そして、一番でかい男が中くらいの男に命令する。ディフェンダーだろうに戦えるのか? まあ、僕の敵ではないけどね。
「悪く思うなよ」
中くらいの男が、僕に殴りかかる。
うん、遅い。しかも鋭さがない。目を瞑っていても躱せる。
僕は躱しざまに、相手の腕を取り、相手を投げた。背負投だ。学校の体育でならった技だがまだ使えるようで良かった。
男たちの驚いた顔を見て少しだけスカッとしたのは内緒だ。
「お前何をした?」
「えっ、何をしたかって? 背負投だよ」
一番でかい男が質問してきた。別に隠すこともないので答える。
ちなみにさっき背負投してやった男が起き上がっている。手加減しすぎたかな? いや、ここはギルドの中だ、これ以上の力で叩きつけるとギルドの床が壊れる。
「くそ、おいお前ら二人がかりでやれ」
どうやら二人で来るらしい。
「おいおい、僕相手に二人でくるのか?」
「フン、怖気付いたか?」
「冗談、二人ごときでいいのか? 全員で来いよ」
僕は挑発する。ただ、一人ずつ戦うのも時間がかかるし、三人相手でも問題はないだろう。これでキレてくれたら戦いやすいんだがどうかな?
「お前、舐めるのもいい加減にしろ! 後悔させてやる」
「覚悟しろ!」
「兄貴達を侮辱した罪、償ってもらうぞ!」
かかった。コイツら挑発耐性もないのかよ……。まあ戦いやすいに越したことないからな。
おや、コイツら武器を構えたぞ確か冒険者規則には、”冒険者同士の諍いに武器を用いることは決闘を除き処罰の対象になる。”と書いていたはずだ。コイツら、これを破るのか? 本当にバカだな。
「規則を破る気か?」
「フン、もう遅い」
「せめて外でやろうか」
こんなところで武器を振り回したら、ギルドに多大な被害が出てしまう。それは流石にやばい。いやコイツらが武器を抜いてる時点でもうやばいか。
「大丈夫なの」
さっき固唾を飲んで待っていたエリスが声を発した。
「大丈夫、大丈夫。コイツら言うほど強くないから」
「それならいいけど」
さてと、外に出てとっとと倒すか。
「これ以上は見過ごせません! 今すぐ武器を収めてください」
そんなことを考えていると、受付嬢さんが慌てて仲介に入る。
「うるせえ! 邪魔すんな」
「きゃっ」
そう言って男が受付嬢さんを吹き飛ばす。僕は受付嬢さんが壁にぶつかる前に、自分が壁になる。
「大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます」
どうやら怪我は無さそうだ。壁にぶつかってしまっていたら、怪我をしていたかもしれない。
というか、アイツ女性相手にも容赦しないのか。武器の使用、そして受付嬢への暴力、さて僕が撃退したらどうなるのかね。
とりあえずギルドを壊すわけにはいかないので、外に出る。ギルド前はちょっとした広場になっている。ここならある程度被害は抑えられるだろう。
「どうやら公衆の面前で恥をかきたいらしいな」
恥をかくのはどっちかな?
「じゃあ、続きをやろうか」
僕は手で挑発する。
その後、男たちが各々の武器で攻撃してくるが、やっぱり遅い。それに攻撃が単調すぎる。さっきまで手加減していたがもういらないな。
僕はひょろい男の攻撃の合間を縫って、力いっぱい腹パンしてやった。耐えきれなかったのかすぐに崩れ落ちた。
「次はどっちかな?」
男たちの顔から恐怖が見えた気がした。
僕は素早く踏み込み手刀で首を叩き、他の二人も気絶させた。
「大丈夫ですか!?」
さっきの受付嬢さんが扉を開け放ち、僕の方へ駆け寄った。その横には筋骨隆々の男がいた。誰だろうか?
「はい、問題ありません。アイツらはそこで伸びてますよ」
「はあ……」
受付嬢さんが呆れたような声を出した。
「俺はここ、カイトルの町のギルド長をやっているカイルだ。済まないがギルド長室に来てくれ」
あれ? 事情聴取かな? まあ、こっちに非はないし、受けるか。……ていうか受けないと怪しまれるよね。
「わかりました。伺います」
「悪いな」
その後、僕はカイルさんの後をついていき、ギルド長室に向かった。
ギルド長室の中には、何やら筋トレグッズが転がっていた。暇な時は筋トレしてるのだろうか? それらあの筋肉も納得できる。
「じゃあ早速話を聞こうか。そこに座ってくれ」
ギルド長席に座ったカイルさんに勧められるがままに、近くにあったソファーに座る。とても柔らかい。かなりの上物だろう。
「どうしてあんなことになったんだ?」
僕は事細かに詳細を話した。
「なるほどな。あっちが仕掛けてきて、抜刀もあっちが先か……。アイツらに話を聞いてみないとわからないが、きっと冒険者資格の剥奪だろうな」
「そんなに重いんですか?」
確か冒険者資格の剥奪は、ギルドの内の罰則で最も厳しいものだったはずだ。
「そりゃあそうだろう。ギルド職員への暴行、そして、ギルド内での決闘以外の抜刀。ここまでやるとそうなるわな。アイツらはギルドでも手を焼いていたんだよ。」
だそうだ。さっきまでキレていたがちょっとスカッとした。
「協力ありがとうな。あっ、そうだ。ギルドカードを見せてくれ」
「わかりました」
僕は言われるがままにギルドカードを見せる。
「おお、ありがとう」
それを受け取ったカードを見てカイルさんの表情が変わった。
「名前はユートであってるな?」
「はい」
どうしたんだろうか?
「お前、これどういうことだ? 討伐欄にジャイアントスライムと、ゴブリンロードの文字が見えるんだが?」
「ああ、それですか。確かに、僕が倒しました」
「本当のことだとは思うんだがどうやって倒した?」
ええー。言わないとだめかなー。できれば言いたくないんだけどなあ。
「安心しろ。ギルドには守秘義務がある」
そんな僕の内心を知ってか知らずか、そんなことをいってくる。それなら大丈夫か。
「スライムの方は特級魔術『隕石衝突』と絶級魔術の複合魔術『形状変化』を組み合わせた魔術で核を破壊して倒しました。ゴブリンロードの方は、僕が持つスキルを利用して倒しました」
「はっ?」
カイルさんが驚いている。そりゃそうだ。だって絶級魔術なんて、使える人は片手で数えられるぐらいしかいないからね。
「はー。分かった。そういうことにしてやるよ」
どうやら信じていないらしい。まあいいか。
「下に戻っても?」
「ああ、好きにしろ」
そう返ってきたので。僕は一礼して、ギルド長室を出た。
はあー、疲れた。




