14話 カイトルの町
「知らない天井だ」
そんなありきたりな言葉がふと思い浮かんだ。窓からは優しい朝日の光が僕に差し込んでいる。
起き上がると、ベットの端にエリスが頭を預けて寝ていた。なんでエリスがここに? と思ったが、そもそも僕は、なんでここにいるのか、そもそもここはどこなのかが気になった。
えーと、確か、ジャイアントスライムと戦って、超級魔術と王級魔術を並列構築を行い発動させた。それから……。あっ、そうだ思い出した。その後魔力切れで倒れたんだ。
「ん……」
しまった。急に起き上がったせいか、エリスを起こしてしまったようだ。虚ろだった目がいつもの状態に戻ると、目を見開いて僕の方をまじまじと見つめていた。なんか付いてるかな?
「ユート!! 良かった、目が覚めたのね」
「ああ、うん。僕ってどれぐらい寝てたの?」
「三日くらいよ。全然目が覚めないから心配したのよ」
まじか……。僕、そんなに寝てたんだ。それは心配するね。
「ごめん。心配かけたね」
「そうよ、すごい心配したんだからね! 次からは気をつけなさいよ」
エリスが強い口調で言ってくる。本当に申し訳ないな。流石に魔力を使いすぎたか。次からはできる限り気をつけるとするか。
一瞬、次はなくねとか思ったが口に出すのは野暮というものだ。
「ところでここってどこ?」
もう一つ聞きたかったことを今更ながら聞いた。
「ここはカイトルの町よ。グラムさんたちがここ、宿屋『星の夢』につれてきてくれたの」
どうやらグアムさん達がここまで運んでくれたのか。後で会ったら感謝の言葉を伝えないと。
「教えてくれてありがとう。よし! お腹も減ったし、ご飯でも食べに行くか」
「そうしましょう」
ちょうど今は朝ごはんの時間だ。きっと、朝食をお願いしてないだろうしいいだろう。
一度エリスに出ていってもらって服を着替えて、宿のエントランスに降りていった。
そこではもうすでに準備を整えたエリスが椅子に座っていた。
「ごめん待たせちゃった?」
「いいのよ、私もいま来たばかりだし」
そう言ってるけど、ホントかね? まあ聞くだけ無駄か。
「じゃあいきましょう」
「うん」
そうして二人で朝食を取れる良さげな場所を探しに扉から外に出た。
外に出るとまず、目に入るものがあった。それは露店だ。フォワードの町ではあまり露店を見かけることはなかった。しかし、このカイトルの町は道を覆い尽くすほど(人が通れる場所はある)の数の露店があった。アクセサリー屋だったり、ポーション屋、果てには嘘か本当かわからない怪しい薬が売られていたりする。
家は、ほとんどがレンガ造りだ。ここはフォワードの町とそこまで変わらない。カイトルの町はとても活気に満ちていた。
「そんなにキョロキョロ周りを見てたら変な目で見られるわよ」
僕が物珍しさにあたりを見回してたら、エリスが注意してきた。そんな事言われてえもねぇ……。
「しょうがないじゃないか。町同士でもこんなに違うんだもん」
「そういえばユートはどの町から来たの?」
ふと思い立ったようにエリスが話題を変えてきた。
「フォワードの町だよ」
「へぇ、領主と領民が異常な程に仲がいいっていうフォワードの町?」
「そうそう。そのフォワードの町」
へぇ、他の町からはそんなふうに言われているんだ。父さんの政策はこの世界では珍しい、民主的なものだ。
民主主義と言い切りたいが、グラディア王国では今でも王政が中心に行われている。ただ、国民を完全に無視した独裁というわけではなく、それどころか、国民の意見も多く取り入れている。そのためグラディア王国の国王はグラディア王国の民にすごく慕われている。
おっと、話がそれた。いや、それてはいないか……? まあいいや。フォワードの町では、町会という、日本の国会に近い会議が開かれている。
フォワードの町はかなり領土が広い。そのため様々な人がいる。もちろん意見も多種多様だ。
そこで、父さんは町をいくつかの区画に分けた。と言っても差別的なものではない。例を上げると、東区、西区、南区、北区、中央区などだ。
それぞれの区画で、選挙に近いことを行い、それぞれの区画の代表者を決める。その選挙で選ばれた代表者が、月に一回ある、町会で意見を出し合い、町の方針を決める。
これがフォワードの町の運営方法だ。ちなみに、領主は内閣総理大臣のような役割だ。
「私もフォワードの町に行ってみたいな……」
「じゃあ、今度連れて行ってあげるよ。と言ってもまだ復興の途中だから、ある程度復興ができたらね」
「そうよね、この前魔王軍の襲撃があったのよね。あなたは大丈夫だったの?」
「うん、全然大丈夫!」
「そう……。それならよかったわ」
そんな会話をしながら、途中面白そうな露店を見つけては少し覗いてほしいものがあったら、買ったりとしばらく町をブラブラした。
そんな感じで、町をブラブラしていると、面白そうな食事処を見つけた。
「ねえ、エリス。あの店はどう?」
「ん? 面白そうね。いいと思うわ」
エリスの許可も得たので、その店に入った。その店の名前は『ニチホン料理店』だ。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「二人です」
店に入ると、人の良さそうなお姉さんが出迎えてくれた。そのお姉さんに勧められた席に座る。
「お冷とおしぼりをお持ちしました。カトラリーはそちらの箱に入っております。ご注文が決まりましたらお呼びください」
そう言って、お姉さんが箱の方を指す。日本の飲食店なら、どこにでもあるような箱だ。店員さん呼び出し用のベルは無さそうだ。
僕は机の上にあったメニューを見る。焼き魚定食、天ぷら盛り合わせ、生姜焼き定食など様々なものが書いてあった。そう、転生してから久しく食べていない、和食だ。懐かしい。
他のページを見ると、洋食もちらほら見える。どれも美味しそうだ。
「すいませーん」
僕は店員さんを呼んだ。
「はい。承ります」
「えーと、天ぷら盛り合わせを一つお願いします」
「私はハンバーグ定食で」
「かしこまりました」
いまさらだがこの店の名前にある『ニチホン』は国の名前だ。正式名称は大ニチホン帝国だ。この国は皇帝が絶対の権力を持っており、その皇帝を中心に富んだ国、強い兵を目指しているらしい。さながら日本の明治時代の富国強兵のようだ。
まあ、それは置いといて。この国の文化はすごく日本に近い。いつか僕が言ってみたい国の一つだ。
その後、僕は料理が来るまで、エリスと談笑した。
「ねえ、ユート。この棒でどう食べるの?」
エリスが聞いてくる。そうか、ニチホンは最近外国と交流を始めたばかりだ。そりゃ、箸のことは知らないか。
「それは二本使って食べるんだよ。こうやってね」
僕はそう言いながら、箸を開いたり閉じたりする。
「すごいわね……。私も使って見ようかしら……」
エリスが驚いている。
「いや、多分使えないと思うよ。これ、慣れたら簡単だけど、なれるまでにすごい練習が必要なんだよ」
「うーん、それなら諦めるわ」
そんな感じで、談笑しながら待っていると、料理が到着した。
天ぷらは、僕の記憶にあるものと瓜二つだ。エビの天ぷらや、さつまいもの天ぷら、鶏肉の天ぷらなど種類が豊富だ。しかも、衣はしっかりと狐色になっている。ゴクリ、と思わず喉を鳴らしてしまう。エリスが頼んだハンバーグも美味しそうだ。
「「いただきます」」
僕らは声を揃えて言う。こっちの世界にも、食べる前に「いただきます」を言う習慣がしっかりあるのだ。
そうして、僕らはご飯を食べ始めた。
■■■■
「いやー美味しかったなあ」
「そうねー」
ご飯を食べ終わった僕らは町の冒険者ギルドへ向かっている。今までゲットした素材の売却だ。
「またいきたいわね」
「そうだね」
どうやらエリスはあの店が気に入ったようだ。なんとなく日本の文化が認められたようで僕も嬉しい。
そんな会話をして歩いていると、冒険者ギルドについた。重厚な扉だ。僕は少々ビビりながら扉を開けた。さて、ここの冒険者ギルドはどんな感じかな?
これからしばらく3日間隔更新が可能そうです。




