13話 『刹那の一閃』
すいません投稿の順番間違えました。「カイトルの町」の前の話です。
「ユート! 無事で良かった……」
エリスが援軍を連れて戻ってきてくれた。エリスが張ってくれたシールドのお陰で大ダメージを受けずに済んだ。エリスに感謝だ。
「心配かけてごめん。それより、申し訳ないけど離してほしいかな……。かなり苦しいんだけど……」
そう、僕はさっきからエリスに抱きつかれいる。心配をかけたから、文句をネチネチ言われると覚悟していたのだが……こう来るとはね。
エリスもこれでいいのかね? まだ出会って数時間しか経ってないよ。当たってるよ? なんて僕に言えるはずもない。
ぶっちゃけ、女の子と付き合ったことすらない僕からすると天国じゃね? と思っていたが、抱いてくる力がおかしい。女の子にこんなことを言うのはあれだが、バカ力だ。
痛い……。それが最初に出てくる感想だ。
「あっ、ごめん……。ユートが無事だったからつい……」
エリスの顔が赤くなっている。やっと自分がしていたことに気づいたらしい。ああー痛かった。
今更だが、戦闘中にこんなことしていていいのか? と思う人もいるかも知れない。だが、心配ご無用! 現在進行形で、『付与』による結界を展開しているから問題はない。
さっきは焦っていたから忘れていたが、結界を張ることもできたのだ。……はあ、なんで忘れてたかなー。
今度冷静さを保つ訓練でもしようかな……。
「えーと、俺らが自己紹介してもいいか?」
そんな考えを断ち切るかのように、救援で来てくれた男の人の一人が僕らに問いかけてきた。
……うん。完全に忘れてた。というかエリスの顔がさっきよりも赤くなっている気がする。おっと、エリスの方を見てたらエリスに睨まれた。ごめんて。
「すみません。お願いします」
「じゃあ、改めて俺らは『刹那の一閃』Aランクパーティーだ。それで俺はリーダーを務めさせもらっている、グラムだ。剣士をやっている。よろしくな」
これは驚いた。まさか、『刹那の一閃』だとは……。確か、半年前ぐらいに登録して、あっという間にAランクに昇格した、実力派のパーティーだったはず。
グラムさんからは、ちゃらそうな印象を受ける。装備は丈夫そうな鎧を急所を守れる程度に装備していた。腰にはこれまた上物そうな剣が差されていた。ザ・剣士の装備だな。身長は一七五センチはありそうだ。
「私は魔術師のヒマリよ。魔術は超級魔術もある程度は使えるわ」
ヒマリさんからは、クールな印象を受ける。手に杖を持ち、黒っぽいワンピースに青色のマントを羽織っていた。髪はハーフアップにしている。なんというか、かっこいいという感想が思い浮かぶ。身長は一六〇センチぐらいだろうか。……でかいな。なにがとは言わない。
「俺はグアン。見ての通りタンクをやっている」
グアンさんからは、なんというか、近寄りがたい圧のようなものを感じる。全身に鎧をまとい、背中には一本の大剣と大きな盾を背負っていた。重くないのだろうか。身長はゆうに二メートルは超えていそうだ。
「えっと、わ、私はユリカ……です。回復術師をやってます。よ、よろしくお願いします」
ユリカさんからは、おどおどとした印象を受ける。緑色の服に、白色のマントを羽織っている。身長は一五三センチぐらいかな。
「僕はユートです。一応剣士をしてます。来てくれてありがとうございます」
「改めまして私はエリスです」
僕らも軽い自己紹介をする。
ちなみにスライムはこの結界を破れないとわかっているのか攻撃はしてきていない。今のうちに作戦会議でもするか。
「早速ですが、戦ってみて分かったことを伝えます。まずは──」
分かっていることを伝えた。途中までは質問などもしてきたが、後半に進むにつれて、だんだん静かになっていった。
「なるほど。大体は分かった。これらの情報から推測するに、アイツはジャイアントスライムの変異種だろうな。下手したらB+ランクかもしれないな」
グラムさんがそんなことをいう。ていうかあのスライム、ジャイアントスライムだったな。まさか、B+ランクとはな……。
「俺等がアイツの相手をするから、お前は休んどけ」
グラムさんが言う。ありがたい。もう、僕の魔力は尽きかけている。少し休もう。
「わかりました。お願いします」
「おう、任せとけ」
そう言って豪快に笑う。
「よし、お前ら行くぞ」
「「「おう!」」」
グラムさんの言葉に『刹那の一閃』のみなさんが声を上げる。言葉を発したグラムさんもさっきまでの飄々とした態度と違い、キリッとした表情になっている。これをギャップって言うのかね。
ヒマリさんとユリカさんは僕らの近くにいる。後衛だからかな。
一方、グアンさんはジャイアントスライムの前に立ち、盾と剣をガン! ガン! と打ち付けている。こうすることで、魔物を挑発し、自分にヘイトを向かせるのだ。
ジャイアントスライムは挑発に乗ったのか、グアンさんの方を向き、例の強酸を吐いてきた。グアンさんはそれを難なく躱す。
流石だ。その動きには全くと言っていいほどに無駄な動きがない。時々、スライムが体当たりをしてくるが、盾でいとも容易く防いでしまう。
グラムさんは、グアンさんが攻撃を防いでいるうちに、剣による攻撃をする。その剣にはヒマリさんが施したであろう炎が宿っている。しっかりとダメージが入っている。
おっと、グアムさんが強酸を躱した隙にスライムが体当たりをした。間一髪で盾を構えたおかげか、見た感じ致命傷は受けたなさそうだ。それでも、完全に防ぎきれたわけではなく、ちらほら傷ができている。
「『回復』!!」
しかし、その傷もユリカさんが発動した治癒魔術で元通りになった。さっきの自己紹介の時、ユリカさんは、おどおどした感じだったけど、戦闘中はその影もない。
「ユート、魔力回復薬よ。飲む?」
『刹那の一閃』の戦闘に目を奪われていると、ふと、隣から声をかけられた。横を見ると、手に青色の瓶に入った液体を持ったエリスが立っていた。どうやら手に持っているのは魔力回復薬のようだ。
魔力回復薬とは、その名の通り、魔力を回復する薬だ。魔術を連発する魔術師には必須のアイテムだ。冒険者に人気で、案外安価で手に入る。ただ、効能によって値段は様々だ。
「ありがとう。ありがたくもらうね」
僕はエリスから、薬を受け取り、一気に飲み干した。魔力が五割ほど回復した。あれ? 僕の魔力は人よりも多い。そんな中、魔力が五割も回復した。ということは──。
「エリス、これ性能はどれくらいの?」
「えっと、確か大抵の魔術師の魔力が全部回復するぐらいだったわよ。ちょっと高くて、金貨二枚はしたわ」
嘘だろ……。めっちゃ高価なやつじゃん。
ちなみに貨幣には金貨、銀貨、銅貨、鉄貨の四種類ある。日本円の価値にすると、金貨は十万円、銀貨は一万円、銅貨は千円、鉄貨が百円といった感じだ。つまりこの回復薬は二十万円というわけだ。
いや、高すぎるって!! というかエリス今なんて言った? ちょっと高かった? エリスって一体何者!?
そんなことを直接聞けるわけもなく、平静を装いつつ、聞く。
「飲んだ後に言うのはあれだけど、そんなに高価なやつをもらっても良かったのか?」
「ええ、良かったわよ。ユートのために買ってきたもの」
嘘でしょ!? 僕のために買ってきてくれたのか。なんだかありがたいやら申し訳ないような……。いや、考えても仕方がないしっかりと感謝を伝えるか。後で請求されないよな……。
「ありがとう。これでもう少し戦えるよ」
「うん、頑張ってね」
さて、『刹那の一閃』に戦闘に再び集中しよう。あれから戦い続けているが、そこまで有効な攻撃はできていないようだ。ダメージは入っているだろうが、たちまち再生している。やっぱりジリ貧は変わっていないようだ。
なにか方法はないかな。
「どうすれば……。ッ! グアン! 構えろ、大技が来──」
方法を考えていると、グラムさんの切羽詰まった声があたりに響いた。まずい……。
「『瞬間付与』防御力強化!!」
僕は急いでグアンさんに防御力強化を発動させる。次の瞬間、グアンさんを光の奔流が飲み込む。頼む無事でいてくれ。僕は願う。
光が止んだところには満身創痍だがなんとかグアンさんが立っていた。良かったいきてた。だけど、まずい状況は変わっていない。僕がやるしかない。
「『付与』ヘイト上昇!!」
僕は、自身にヘイトを向けさせる。使える気がしたんだ。
結果は大成功。グアンさんに向いていたヘイトが僕に向く。
「ユリカさん、今のうちにグアンさんの治療を!」
「うん。でも君は大丈夫?」
ユリカさんが心配なのか聞いてくる。
「大丈夫です。皆さんが来るまで、しっかりと戦えていましたから」
「分かった。でも無理しないでね」
やれやれ困ったものだ。僕は改めて、ジャイアントスライムを正面に見据える。すると、すぐに、さっきと同じように溜めるような動作をスライムが取った。
「ユート、来るぞ……」
グラムさんが警告してくる。
うん。やっぱりだ。
僕は落ち着いて、『付与』の結界を展開する。それと並行して、二つの術式の構築を始める。
スライムがさっきと同じかそれ以上の規模の光線を放ってくる。しかし、その攻撃は結界によって僕には届かない。結界で、自身を守りながら、やっと両方の術式の構築が完了した。その術式は今まで構築してきた中でも大きい。
そして僕は魔術をさっきからスライムの胸の付近で輝いているモノに向けて解き放つ。
「『隕石衝突』+『形状変化・針』!!」
僕は、ありったけの魔力を込め超級魔術を発動させる。あたりが暗くなった。隕石が空を覆っているのだ。
通常、超級魔術・『隕石衝突』は、隕石を相手に衝突させる魔術だ。しかし、今の隕石は丸くなく、鋭く尖っている。
これは絶級魔術・『形状変化』の力だ。言っていなかったが、魔術には絶級魔術という階級がある。
ただ、これらの魔術は魔術に特殊な効果を発揮させる物が多い。
しかも、繊細な魔力操作が求められるため、現在、この絶級魔術を使うものは、ほとんどいない。僕は母さんに教えてもらった。習得に一番時間がかかった魔術がこの絶級魔術だ。
僕が発動させた魔術は、狙い違わず、スライムの胸のあたりに輝くコアに当たり、貫いた。
スライムは一瞬痙攣し、動かなくなった。
「「「やったー」」」
みんなが一斉に声を上げる。良かった、なんとか倒せた。あっ、やば。体が思うように動かない。強烈な睡魔に襲われて、僕の意識は暗転した。




