12話 VS巨大スライム
僕は巨大なスライムに対し、剣を抜く。
ただ、普通に斬り掛かっても、ダメージは全く入らないだろう。普通、スライムと戦うときは、熟練の魔術師に、剣に魔術をかけて貰う必要がある。
だけど、僕には『付与』がある。そしてさっき、スライムに魔術を食らわせてやった。つまり、スライム特攻が使えるのではないかと考えたわけである。というわけで早速ためそう。
「『付与』スライム特攻!!」
よし、問題なく発動したな。これで、アイツとも戦えるな。僕は巨大スライム(面倒だからスライムというが)に斬りかかる。
スライムに意思があるのかはわからないけど、僕の攻撃はダメージにならないと思っているのか躱そうともしない。いや、デカすぎて素早く動けないかもしれないな。まあ、それは置いといて……。
僕の剣が、ヤツの一部を捉える。その剣は特に抵抗を感じさせずに、刃が通った。気のせいかもしれないが、スライムが驚いているように見える。
シメシメ。しっかりと効いているようだ。油断したなスライムめ。僕がそんなことを考えていると、スライムが口から、謎の液体を吐いてきた。
うお、びっくりした……。僕は落ち着きながら謎の液体の射程から離れる。僕がさっきまでいたところのじめはジュワァと音を上げながら溶解していく。液体は強酸のようだ。
嘘でしょ……。地面が溶けるってどうなってんだよ! 僕は内心でスライムに毒を吐く。あんなのに触れでもしたら、溶けてお陀仏だよ……。
僕は強酸の液体に気をつけつつも、再度斬りかかる。しかし、その刃がスライムを捉えることはなかった。そう、スライムが躱したのだ。僕が見回した頃には、数十m先にいた。
嘘だろ……。コイツ、あんな巨体のくせにあの速度でかわすなんて……。
そんなことを考えていると、また、強酸の液体を飛ばしてきた。危な! 僕は身をよじり、ギリギリでかわす。
危ないな。僕の反応がもう少し遅かったら、この世からおさらばだった。さてさて、コイツをどうやって倒すか……。まず、今あるコイツについての情報を整理しよう。
まずコイツはどこからやってきたのか、これについては、3つほど可能性がある。
一つ目はどこからともなく、転送されてここまでやってきたか。
二つ目はもともと存在していた。ただ単に僕が気づけていなかっただけ。
三つ目は、スライムが合体してこの巨大スライムになったかだ。まあ、それは置いとこう。
次に、スライムへの攻撃だが、これは問題ない。スライム特攻で普通にダメージを与える事ができる。
そして、スライム攻撃手段は、今のところ、強酸を僕に向けて発射してくる。速度はまあまあ早いが、問題なくかわせる。まあ油断していたらこの限りではないけど……。
そして、スライムの速度だけど、うん、とても早い。あんなにでかいのに、あの速度は反則だろ……。
さてと、どうやって攻めるかな?
■■■■
ときは少し遡る。
今日はいろいろな出来事があった。私、エリス・フレイヤはそんなことを考えながら、ユートに頼まれたこと完遂しするために、カイトルの町へ向かっていた。
ことの発端は、私の乗っていた馬車が、魔物に襲われたことだった。私達を護衛してくれている、騎士の人達も弱いわけではない。ただ、相手が悪すぎた。襲ってきた魔物はドラゴンだった。
通常、ドラゴンが人里に近くにやってくることは、ほとんどない。ただ、実際に、ドラゴンがやってきたのだ。しかも、そのドラゴンは自我がなかった気がする。
だから、たまたまやってきたとも考えられない。何者かが意図的に送りこんだのだと思う。
だけど、人間がドラゴンを操るなんて、神話に出てきた勇者ぐらいしか前例がない。だから、人が操っているわけはない。
そうなると考えられるのは、もう一つしかない。それは魔王が復活した、というものだ。信じたくはない。だけど、それ以外に考えられない。
私がそんな思考の海に沈んでいると、町の門についた。
「身分を証明できる、ものをお見せください」
門番の騎士が私に言ってくる。それぞれの都市には門が設置されている。そこでは、検問が行われている。入るには、身分を証明できるものが必要だ。
「あまり大きな声を出さないでください……」
私が持っている、身分を証明できるもの、それは、フレイヤ家の家紋が入ったペンダントだ。
私は、そのペンダントを騎士に見せる。あまり広めないでほしい。フレイヤ家はかなり名のしれた侯爵家だ。
「!! ……確認しました。どうぞお通りください」
私は門をくぐり、冒険者ギルドへ向かって走って行く。
ギルドにつき、すぐに受け付けへ行く。
「こんにちは。どうされました?」
「すぐに高ランク冒険者を集めてください! 街道付近で、ジャイアントスライムが現れました!」
「!! それは本当ですか?」
「はい」
「わかりました。すぐに派遣します」
どうやら、高ランク冒険者を集めてくれるようだ。良かった。これで、ユートを助けに行ける。
数分後、空いていた高ランクの冒険者パーティーが集まった。パーティーメンバーは、四人。男性が二人、女性が二人だ。男性二人は攻撃役と守り役。女性は魔術師と回復役だ。ジャイアントスライムとも互角に戦えるだろう。
「ジャイアントスライムが出現した場所へは私が案内します。皆さんついてきてください」
私はその人達を先導して、ユートが戦っている場所へ向かう。お願い、ユート。無事でいて……。
■■■■
これもだめか……。僕は、スライムに向けて、もう何回目かわからない攻撃をして、コイツの攻略方法を模索していた。色々な攻撃を試したが、ほとんどが躱されてしまっている。でかいくせに俊敏性がとんでもない……。
せめて、もう少し人数がいれば戦いやすいのに……。エリスはまだ戻って来ていない。エリスが援軍を呼んで来てくれれば……。急いでくれよ……。
「『氷の槍』!!」
僕はスライム特攻を付与した中級魔術で攻撃をする。……が、巨大スライムに躱され、変わりに強酸の液体が帰ってきた。僕もその攻撃を難なく躱す。こんな泥沼の戦いが続いている。
『付与』は魔力を必要としない。だけど、ずっと魔術を使っていたら、流石に魔力が尽きる。どうしたものかな……。
スライム特攻を付与した特級魔術なら、倒せると思う。ただ、発動にかなり時間がかかってしまう。その隙に強酸をぶっ放されたらたまったもんじゃない。特級魔術の短時間発動の練習をもっとしとけばよかった……。今更いっても仕方ないな。
そんなことを考えていたら、スライムが強酸をさっきの倍の速度でぶっ放してきた。
嘘だろ!? まだ速度を上げられたのか!? まずい、これは躱せない。僕は死を覚悟した。
──がその攻撃が僕に当たることはなかった。
眼の前には、半透明の壁が展開されていた。『魔術障壁』だ。もちろん僕は発動はさせてない。僕は驚いて周りを見回す。
戦闘中に、よそ見をするのはご法度だがこればかりはしょうがないだろう。後ろの方から誰かが駆けてくる音が聞こえる。そこには、男女四人と、右腕をこちらに向け魔術を発動させている少女がいた。
良かった間に合ったようだ。
「おまたせー。援軍を連れてきたよ」
その少女が大きな声で言う。エリスが帰って来たのだ。
今日の15時にも投稿します。




