11話 森の中の出会い
二章の始まりです。楽しんでいただけると幸いです。
あれから僕は、王都へ向かい歩いていた。王都に行くには途中にあるカイトルの町を通るルートが一番早く確実で安全な道だ。
それにしても、本当に安全だな……。魔物が一匹もいないや。商人達からすると、嬉しい事かもしれないけど、僕達冒険者からすると物足りないと思ってしまう。そんなことを考えながら道を歩く。
えーと、カイトルの町まで、歩いていくと2時間ぐらいか……。はぁ、自転車とかほしいな。だけどここは異世界。自転車なんてあるわけ……。あっ。ないなら作ればいいんだ! あっ。でも材料がないから無理だな……。
……それにしても暇だな。なんか出てこないかな……。
「ガルルゥゥゥ」
おっとそんなことを考えてると魔物のお出ましか。見た感じ、フォレストドッグだな。
フォレストドッグとは簡単に言うと、森に住んでいる、凶暴な犬、といったところか。さてと、とっとと片付けて進みますかね。
「『付与』火!」
僕は剣に火属性を付与する。剣がみるみるうちに火に包まれる。ちなみに使用者にダメージはなぜだか入らない。ただし、使用者以外が触れると火のダメージを受けることになる。
僕は火をまとった剣で、フォレストドッグに斬りかかる。その剣がフォレストドッグの首を切断した。ただし、その切断面から血が出ることはない。斬ると同時に、傷口が焼かれたためである。
よし、討伐完了っと。僕は登録したときにもらった、ギルドカードをみる。討伐モンスターの欄にフォレストドッグ 1 と表記された。へぇ、こういうシステムなんだ。きっと数字は討伐した数を表すのだろう。
そんなことを考えながら、収納魔道具のチェストリングから、ナイフを取り出す。ん? なんでナイフなんか出すのって? そんなの簡単だ。この魔物から剥ぎ取りをするためである。部位によるが、ギルドで買い取ってもらうことができるためである。
フォレストドッグの買い取ってもらえる部位は毛皮である。どうやら、冒険者の装備を作るために必要らしい。
毛皮を剥ぎ取り、ナイフとともに僕はチェストリングの中に入れる。これでよし。さぁ、どれぐらいの値段で買い取ってくれるのかね? ちょっと……というかとても楽しみだな。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
そんなルンルン気分を打ち消すように女性らしき悲鳴が聞こえた。何事だ? 僕は確認のために、声が聞こえた場所へと向かった。
……最悪だ。木の上に立ちながらそんなことを考えた。そう、考えてしまったのはしょうがないだろう。
声が聞こえた所には、僕と同じくらいの年齢の女の子が魔物に囲まれていた。
それだけならまだいい。いいのだが……。その、囲んでいる魔物の方に問題があるのだ。その魔物はスライムだ。スライムは地球上のアニメや漫画だと、最弱のモンスターになっている。ただ、この世界ではそんなことはない。ギルドで、決められているランクはBなのだ。そう、かなりの上位ランクなのだ。
なぜ、このランク帯にいるのかと言うと、その体によるダメージの吸収によるものだ。スライムは体が柔らかく、剣の刃が全く通らない。剣士からすると天敵のような存在だ。だからといって、魔術による、攻撃がよく効くわけでもない。
じゃあ、どうやって倒すかって? 剣撃と魔術の複合攻撃を使って倒すのだ。熟練の魔術師は、剣に魔術を宿らせることができるのだ。
ただ、逆に言うと、魔術を剣に付与できなければ倒すことができないのだ。つまり、剣に魔術を付与できないなら、戦ってはだめだ。
おっと考えている時間はない。このままじゃ女の子がひどい目にあう。
僕は木から飛び降り、女の子の横に着地した。
「誰!?」
「今はそんなことを考えてる時間はない! 僕が道を作るからその道から逃げて!」
「わかったわ」
女の子が驚いていたが今は気にしてる場合じゃない。悪いけど、強い口調で言わせてもらった。
女の子が納得してくれたので、僕はとりあえず、魔術を使い道を開くとしよう。
「『風の壁』!!」
僕は風属性の魔術を唱える。すると、あたりを囲んでいたスライムが吹き飛んだ。
ちなみに『風の壁』は、防御魔法だ。相手の遠距離による攻撃(魔術、物理問わず)を風の壁で逸らすための魔術だ。ただ、これを自分を中心に広範囲に強い風を展開できれば、魔物達を寄せ付けないのでは? という考えから誕生した使い方である。要するに僕の独自の使い方なのだ。
「今のうちに逃げるよ!」
僕は女の子の手を握って走り出した。顔が赤くなっている気がするが今は気にしてられない。後ろを確認したが、スライムが追いかけてくる気配はない。ただ、念のため、この森から出て街道まで行こうと思う。
「助けてくれてありがとう。それであなたは誰?」
森から出て街道に到着してからそんなことを聞かれた。それもそのはず、この子からしたら、僕は急に出てきて名乗りもしない変なヤツだろう。
「ごめん。名乗るのを忘れてたよ。僕の名前はユート・フォワード。冒険者だ」
本当は、フォワードの町の領主なのだが言う必要はないよね。それどころか混乱させてしまうだけかもしれないからね。
「ユートでいいかしら? 私はエリスよ」
「うん。それでいいよ。僕もエリスでいいかな?」
「ええ。いいわよ」
お互い自己紹介が終わったので早いかもしれないが気になっていたことを聞くことにする。
「ところでエリスはどうしてこんなところに?」
「面白い話じゃないけど、聞く?」
「うん。お願いするよ。あっ、嫌なら言わなくてもいいよ」
「大丈夫よ」
曰く、家族と一緒に、馬車でカイトルの町に向かっていた。道中で、盗賊団に襲われ、家族はエリスを逃がした。そして、森を彷徨っていた所、スライムに囲まれて、僕が来たというわけだ。
改めてエリスを見ていると、汚れていたから気がついていなかったけどかなり上質なものだ。エリスの容姿は銀髪のロングで、髪は結ばれていない。自然体だ。
「なに見てるの? なんかついてる?」
「ん? いや、なんでもない」
僕はなんとか平静を装って返す。女性は視線に敏感ってよく聞くしな。これからは気をつけないと、悲惨なことになりそうだ。
「じゃあ、エリスもカイトルの町に向かってるんでしょ? 一緒にいかないか?」
「いいの? じゃあお願いす──」
ドガッァァァ。
エリスの言葉は耳をつんざくような音により遮られる。なんだ……? 僕は心の中で疑問を浮かべながら周りを見回し警戒する。僕らの右側に、二階建ての建物をゆうに超えていそうな特大のスライムらしきヤツがいた。
何じゃありゃぁ!? さっきまで影も形もなかったぞ。どっから出てきたんだよ。いや、今は関係ない。アイツをどうするか考えないと。ん? 待てよ。さっき僕は、スライムを攻撃した。ということは──。そうだよ。今の僕だったらアイツにも勝つことができる。
「エリス。ここから町は近い。町に行って応援を呼んできてくれ」
「でも……」
「大丈夫だ。勝つ方法は思いついてるからね」
僕はエリスに、応援を呼んでくるようにお願いする。ただ、これは口実だ。僕は純粋に逃げてほしいと思う。ただ、エリスは逃げずに「戦う」と言いそうだ。だから、こうしてお願いした。
「……わかったわ」
エリスはそう言うと、カイトルの町まで走って行った。よし、これでエリスの安全は保証されたも同然だ。カイトルの町は冒険者たちから人気の町だ。きっと高ランクの冒険者も何人かると思う。誰かが援軍に来てくれれば勝利は揺るぎないだろう。それでも油断は危険だ。落ち着いてやろう。
さてと、巨大スライム狩りといきますかね。




