10話 旅立ち
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〈魔王軍サイド〉
魔王軍の本拠地となっている、城に魔王軍四天王の一人が任務を終え、今帰還した。その男はガルダー。その手には三名の男女が抱えられていた。そう、ユートの家族である、ソード、クリスタそしてアイリスだ。
今回ガルダーが任された任務はフォワードの町から、彼らの絶対の主君である魔王の敵になるであろうフォワード一家を連れて帰ることだった。彼は魔王軍四天王及び、復活した魔王のいる場所へと向かう。
「魔王様。ご復活、誠におめでとうございます」
ガルダーは会議の間につくと同時に魔王に向かい、恭しく一礼をした。
「うむ。ところでそやつらが例の……」
それに対し、魔王は答えガルダーが連れてきた三人に目を向ける。魔王の姿は、額に二本の角が生えていた。その身長は二メートルは軽く超えているだろう。
「左様でございます。コイツらがフォワードの子孫でございます。任務は達成しましたが、ゴブリンロードが撃退されたのは痛手でした」
ガルダーは答える。その場にいた魔王軍四天王が一斉に三人に目を向ける。
「それぐらい、いいんじゃない? 任務をクリアしたならねー」
「ガルダー、あなた意外とやるときはやるのね」
「…………」
モファー、マニファ、ユウキの順にそれぞれが反応する。いや、ユウキは反応してるとは言えないが。
「コヤツらは捕虜として、我々が管理する。男と、女はマニファ、貴様に預ける。少女の方はガルダーに任す。異存はないな」
「「「はっ」」」
魔王軍四天王が一人を除いて返事をする。声を出してないユウキも頷いてはいた。
「ではこれで会議は終了する」
魔王がそう締めくくった。その後四天王達が順に退出していく。その頃には連れてこられたアイリスは気意識を取り戻していた。
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〈アイリスサイド〉
目が覚めると、私、アイリスは知らない場所にいた。周りにはぞろぞろと退出していく魔族の姿があった。怖い。それが目覚めて最初に感じたことだった。自分から連れて行かれたのに変なものだ。
そんなことを考えていると、四天王の一人であろう、男の人がこちらに向かって来た。なんでこっちに来るの? 私は恐怖を覚えた。
「すまないな──」
えっ? この人は私にしか聞こえないだろう声でそんなことをいってきた。どうして? そんな疑問で頭がいっぱいだ。でもどうしてだろう、あの人の声は悲しみを孕んでいるようだった。なんでこんな悲しい声をする人が魔王軍にいるのだろう? そう思わずにはいられなかった。
「おい、行くぞ」
さっきとは違う魔族が私にいってきた。連れて行かれるようだ。でも不思議とさっきよりも恐怖はない。あの人のおかげかな?
「おい! 聞いているのか?」
「聞いてます。すみません」
私はそう返事する。きっとお兄様が助けに来てくれる。そう思うと、恐怖が更に和らいだ気がする。
そんなことを考えながら、ガルダーと呼ばれている魔族について行った。
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あのあと、僕はしばらく泣いた。そのおかげか、気持ちの整理がついた。それに、連れて行かれたなら助けに行けばいい、という答えも出た。
ただ、これを行うには町から離れなければならない。そう考えると気が気じゃなくなった。今の僕は領主の息子ではなく、領主なんだ。
とりあえず、ブライトおじさんに会いに行こう。おじさんも心配しているだろうし。そう考えて、僕は部屋から出て、降りていった。
ギルドでは、ある程度怪我人の治療が終わっていた。確認したところ、死者は出ていないらしい。良かった……。ただ、父さんの姿は捜索されたがどこにもないらしい。きっと父さんも連れて行かれたのだろう。
「ユート様。もうよろしいのですか?」
ブライトおじさんを探しつつ、ギルドの中を見回っていたら、受付嬢の人に声をかけられた。父さんたちがいなくなったから、さっきも言ったが、今のこの町の領主は僕になっている。それもあるため、そう簡単に町を離れられないのである。
「すみません。心配をおかけしました。もう大丈夫です」
正確には大丈夫ではない。吹っ切れただけだから……。だけど、今の僕は領主だ。領民達に心配をかけるわけにはいかない。領主が暗いと、領民たちも不安になってしまうからな。
「本当に大丈夫なのですか?」
「本当に大丈夫ですって」
「それなら良いのですが……。それでは失礼しますね」
この人はよほど僕のことが心配のようだ。古くからの知り合いだし、気づいてしまうのかね……。そんな話をしたあとに受付嬢の人は去っていった。
しばらく捜索していると。やっとブライトおじさんを見つけた。
「おじさん。ごめん。心配かけたよね」
「いや、謝る必要はないよ。そうなっても仕方がないほどの出来事があったんだから。今でもまだ思うところはあるんでしょ?」
「やっぱり分かる?」
「もちろん。ユート君が小さい時から知っているからね」
そんな会話をかわす。やっぱり古くからの付き合いの人は気づいてしまうものらしい。じゃあ、きっとさっきの受付嬢の人も気づいていたのかもしれない。
「それに、見た感じやりたいことがあるのかな? 私にいってごらんなさい」
「やっぱり分かるんだね……。僕は、母さん達を助けたい。だけど、今の僕は領主の息子ではなく、領主だからこの町を出るわけにはいかないと思う」
「やっぱりかい。そんな気がしてたんだよ。私についてきなさい」
ブライトおじさんがついてくるように促す。特に断る理由もないので僕はついていく。
案内されたのはギルドの受付の部屋だった。今この部屋にはこの町の人がたくさんいた。
どうしたんだろう? 僕は疑問に思った。
確かにこのギルドは今はこの町の避難場所になっている。ただ、この部屋にはこの町に住んでいる人のほとんどがいるのだ。
そんなことを考えていると、ブライトおじさんが口を開いた。
「私達の領主様は、前領主様一家を取りもどさんと、町を出たいとおっしゃっている! 反対意見の人はいるか?」
僕が心のうちにしまっておいたことを大声で喋った。なんでだよ。いや、僕も口止めはしてないからなんとも言えないけど。というかなんでこんなに静かになってるんだ? こうなるから言うのやだったんだよ……。
その沈黙を破ったのは意外にもさっき話した受付嬢の人だった。
「私は賛成です。領主様のしたいことこそ私たちのしたいことです!!」
「そうだー! いってらっしゃいユート様!」
「町は俺らに任せな!」
「「「領主様ばんざい!!」」」
ちょっ。恥ずかしいからやめて! しかし、そんな僕の内心を知ってか知らずか、願いは通ることはなかった。受付嬢の人の声をきっかけとしてやいのやいよの大騒ぎだ。
「ユート君。みんなもいいといっているよ。君のやりたいようにしなさい」
ああ。心配する必要はなかったようだ。みんなもこういってくれているし。
僕は覚悟を決めた。絶対に家族を取り戻す。そして、魔王も討伐して平和に暮らすんだ。
僕は手を上げてみんなに一度静かになってもらう。
「僕は、この町を出て家族を助けに行きます。その間の領主代行はブライトおじさんにお願いします。そして、送り出してくれた皆さんに感謝を。皆さんのような方々に出会えて幸せです。本当にありがとうございます」
「「「ユート様万歳!」」」
僕は決意表明をした。僕の言葉が終わると同時に再び大騒ぎになった。やっぱ、フォワードの町と人たちは最高だ。僕は改めてこの出会いへの感謝を心の中でした。
「旅に出るのでしたら冒険者登録をしてはいかがでしょうか?」
そんなことを考えていたら、受付嬢の人が聞いてきた。
「はい。お願いします。もともとその予定でした」
「良かったです。ではカウンターへ来てください」
僕は受付嬢の人に導かれるまま、カウンターへと向かった。
カウンターでは受付嬢の人が紙を取り出していた。
「こちらに必要事項の記入をお願いします」
「わかりました」
僕はその用紙に、名前と使える魔術を記入していく。書き終えた用紙を見ていると、自分がかなりすごいことに気がついた。だって全属性の魔術が使えるんですもの。
普通、魔術の属性は適正の有無で魔術の上達率が変わる。四つでも適性が高ければいいほうだ。ちなみに、属性の適性がなくても魔術は使える。ただ、適正が高い属性のほうが上達も早く効果も高くなる。
僕はとくに上達が遅くて困った属性はなかったから、きっと全属性の適性が高いんだろう。僕はそんなことを考えながら。用紙を受付嬢の人に提出する。
「はい。確認しました。ギルドカードを発行してきますので少々お待ち下さい」
そういって、受付嬢の人が後ろの部屋へ消えていく。
待つこと数分。奥の部屋から、受付嬢の人がカードを持って出てきた。
「こちらがギルドカードです。説明は必要ですか?」
「はい。お願いします」
曰く、ギルドカードは身分の証明に使えるらしい。他者がカードを持っていると、色が変化するようだ。普段は白色だが、他者が保持していると黒色になるそうだ。
そして、ギルドカードを保持して魔物を討伐すると、その討伐した魔物の名前が記載されるようになっているそうだ。
全く持ってこれがどういうシステムなのか検討もつかない。
ちなみに冒険者ギルドは、町の人達から依頼をもらい、それを冒険者に回すことで成り立っているそうだ。依頼人と冒険者の仲介をしてくれるため、問題が起きることはほとんどないそうだ。
冒険者にはランクがあり、仕事の成功率やギルドへの貢献度でランクが上がることもあるそうだ。もちろん下がることもあるそうだ。他にも色々あったがおいおい話していこう。
「わかりましたか?」
「はい。ありがとうございます」
「このあとはどうされるのですか?」
「そうですね。とりあえず、今日はもう休みます。そして、明日は王都へと向かおうと思ってます」
「いいですね。王都は様々な情報が来ますからね。前領主様達の情報もあるかもしれないですし。王都へついたら、ぜひ、ギルドのグラディア本部に訪れて見てください」
「わかりました。いってみます」
僕は受付嬢の人とそんな話をしたあと、自分の部屋に戻っていった。
戻った頃にはもう日は落ちていた。とりあえずご飯を食べた。さてと、明日は出発だ。英気を養うとしますかね。そう考えながらベットにダイブし眠りについた。
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次の日、僕は準備を整え、町の外に来ていた。装備は急所を守れる程度のものにした。もちろん効果を付与済みだから、耐久性はすごい。そして、腰には剣を差した。鉄製のものだが、こちらも、付与済みだ。
出発のときは大変だった。町のみんなが押し寄せて来たのだ。でも嬉しかったな。そんなことを考えながら、僕は王都に向けて歩を進めた。
これで、一章終わりです。二章も楽しみにしていてください。




