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旅路はいずれモノミスへ  作者: 天織 星桂


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8話 魔災管理局

 山を越え、街につく。太陽は真上を通り、傾き始めていた。

 まずは、目当ての魔災管理局を目指す。

 「ようこそ、魔災管理局へ。ご用件お伺いします」

 「魔石の提出に来ました」

 受付の女性に話しかけ、2つの魔石を手渡す。

 「お預かりします。続いて魔石を獲得した場所の登録をお願いします」

 書類を受け取り、必要な情報を書き込んでいく。もう慣れたものだ。

 「書けました……それと、1つ聞きたいことがあって」

 討伐した魔物がこの辺りでは見られないものだったことと、魔石に刻まれた魔法陣に違和感があることを伝える。

 女性は一度ルーペで魔石を確認し、言った。

 「確かに珍しい形ですね。狼形態の魔物もこの辺りでは見られませんし」

 「原因って分かったりしますか?他にも同じような魔石が提出されたとかも」

 「こちらは支所ですので、魔石の研究は基本おこなっていないんです」

 話によると、提出された魔石は国内で4つの研究拠点に送られ、そこで解析が行われるらしい。

 一般的な魔物ならともかく、こういった特殊ケースだと、支所では対応しきれない、ということらしい。

 「この魔石も同様に拠点に送られますが……もしも、結果を知りたいとなれば直接出向いてもらうのが一番早いですね」

 魔石を提出し、お金をもらえばそれで終わりだ。

 でも、このまま放っておくのはなんだか違う気がした。

 「ここから一番近い拠点はどこですか?」

 「そうですね……ここからなら、ラゼンスクの街でしょうか」

 ラゼンスク……たしか、テラアウローラ国の東端にある街のはず。レイファン国への道からそう遠くないはず。

 「もし、そちらに行かれるのでしたら紹介状を出しますが、どうされますか?」

 と、そこでやり取りを隣でじっと見ていたエラルドに声をかける。

 「エラルドはどう思う?」

 「えっ、僕?」

 話しかけられるとは思っていなかったみたいで、驚いた顔をしていた。

 ――君も旅の仲間なんだけど。

 「ラゼンスクはレイファンへ行く途中で寄ってくこともできると思うんだ……どうかな?」

 「僕も……自分を襲った魔物の正体は気になる。だから、行ってみたい……」

 話はまとまった。

 「紹介状お願いできますか?」

 「承知しました。では、用意いたしますので、掛けてお待ちください」

 一度カウンターを離れて、待機することにした。


 「ありがとね、エラルド。冒険計画の立て直しもしないと」

 「全然構わないよ。僕も気になっていたのは本当だし」

 待機所の少しいい椅子に体をあずける。

 この街まで山道を歩いてきたため、足が熱を持ってるみたいだ。

 「でも、ここでも魔石の正体が分からないなんて……」

 「今までこんなことはなかったの?」

 「そうだね、こんなことは初めて。本当になんでなんだろう……」

 魔石に刻まれた魔法陣も、魔物の正体もわからない……

 でも、その方がわくわくする。

 「未知のものって、それだけでなんだか気になるよね」

 エラルドまで同じようなことを言うから、吹き出してしまった。

 「これも、旅の醍醐味かな。もしかしたら、裏で大事件が起きてましたーなんてあったりして」

 「そこにウィローさんがかっこよく登場するとか?」

 「それをいうなら、そこの役はエラルドじゃない? 前も言ったけど、エラルドって英雄みたいなんだよ」

 「僕が英雄……ないかな」

 そんな歓談をしているうちに、紹介状の用意ができたみたいだ。

 おしゃべりはここまでにして、一度カウンターに戻る。

 

 「では、こちら紹介状と魔石になります。ラゼンスクの魔災管理拠点に一緒に提出していただければと」

 「ありがとうございます。お手数をおかけしました」

 「いえいえ。それとこちら、今回の報奨金になります」

 「先にもらえるんですか」

 魔石の返却もあったので、報奨金は後払いかと思ってた。

 路銀は余裕があったことなんて一度もない。旅人にとっては本当にありがたいことだ。

 「手続きは以上になります。では、太陽があなたの旅路を照らしますように」

 そう言って、会話は終わった。


 外に出ると、太陽が沈みかけていた。

 オレンジ色の空を眺めていると、エラルドがふと、立ち止まって言う。

 「そういえば、さっきの何だったの? 受付の人がいってた……『太陽が旅路を照らしますように』って」

 「ああ、あれ? 冒険者どうしの挨拶だよ」

 旅をしてないと気づけないことだ。当たり前に思っていたけれど、そうでもないみたい。

 「そうなんだ。ウィローさんも不思議な挨拶するよね?」

 「『明日も太陽がこの地を照らしますように』のこと? アウローラだと普通のことの気がするけどね」

 「僕は一年間ずっと『太陽の動く限り明晰であるように』って言われ続けたから……。お祈りの時間も朝じゃなくて今の時間だったし」

 明晰であるように……か。学者みたいな言い回しだ。それに、夕日の信仰。

 「それはクロノセアの言葉かな。レイファンを抜けた先にある国の」

 「クロノセア……確かに先生はそこにいたはず」

 アウローラにいても、信仰対象はオーロラ様だけじゃない。

 この5つの国は皆がそれぞれ神を信じ、暮らしている。だから、この世界の探検はやめられない。

 「お祈りってどんなのだったの? せっかくだしちょっとやってみない?」

 「わかった、こうやって手を頭において」

 「わふっ」

 急に頭に手が伸ばされる……いわれてみれば神話にこんなシーンがあったような?

 「太陽も貴方も狂うことがありませんように」

 「……物騒な祝詞だね」

 「昔使われていたものなんだって。親しい人にしか使わないって言ってた」

 親しい人、か。気づいていないかもだけれど、ちゃんと私を信頼してくれてるんだ。

 「ありがとう。太陽がエラルドの旅路を照らしますように」

 お祈りにはお祈りで。感謝の意を示す。

 なんだか、エラルドの大切なものを知れたようで、うれしい気持ちになった。

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