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旅路はいずれモノミスへ  作者: 天織 星桂


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20/24

20話 お昼時

 「フェイ、ルベ。待たせたね」

 「おかえりなさい、先生。あら、そちらは……」

 「お久しぶりです。フェイさん」

 魔災管理局を出た後、ユーストマ先生の旅の仲間であるフェイさんとルベと合流した。

 フェイさんはいつものように上品に口元に手をあてて、微笑んでいる。

 「久しぶりだな! ウィロー。そっちは新しい旅の仲間か?」

 対照的にルベは豪快にそう言った。いつもより三割増しで赤髪がツンツンしている。

 「そうだよ。ルベと会うのは初めてだね」

 「エラルドです。よろしくお願いします」

 「おう! 歳近そうだな! 俺はルベ。呼び捨てでいいぜ」

 初対面からこの調子だ。私の時もそうだった。

 「申し遅れました。わたくし、フェイと申します。先生とルベと研究の旅をしています」

 そう言って、藍色の頭を軽く下げた。すべての動作が上品で丁寧な方だ。

 「ルベとフェイはお昼はまだだよね? 良ければ5人で食べようかと思うんだけど……」

 そう言って、ユーストマ先生がこちらを見る。私は横にいるエラルドに目線を投げつつ聞いた。

 「エラルドはどうかな?」

 「うん、僕ももっと話したいこともあるし……」

 「わかった。ぜひ、お願いします」

 そう返事を返す。3人とも笑顔を見せた。

 こうして、今日の昼食は決定した。


 さっそく、近くの店に入り、注文をした。

 ひと段落ついたところで、ここにいる人達に目を向けてみる。


 よく考えてみれば、この3人も不思議な関係性だ。

 研究のために旅をしているユーストマ先生と、弟子のフェイさんとルベ。

 でも実際は、ルベに振り回されているようにも見える。研究をしているのはユーストマ先生とフェイさんだけっぽいし。


 「さて、ウィローさん。旅は変わらず順調ですか」

 そう話かけてきたのはフェイさん。いつもすごく落ち着いていて、今日も相変わらずだった。

 「はい。魔石の謎も解けたとこですし。フェイさん達は?」

 「研究のために、遺跡に行っていたんです。この街の近くなんですが」

 今も変わらず研究のためにあちこちを巡っているらしい。確か専門は古代魔法だったか。

 「成果……はイマイチですかね。うまくいくことの方が珍しいんですけど」

 そう言って小さく笑っていた。

 

 「そういえば、エラルド君とどんな経緯で知り合われたのですか? わたくし、気になってまして」

 「数日前のことですが……エラルドが森の中で魔獣に襲われているところを助けたのがきっかけで」

 フェイさんに経緯を簡単に話す。最近あった出来事に相槌をしながら、優しい顔で聞いてくれた。

 「良い出逢いがあって何よりです。本当に」

 「……エラルドもそう思ってくれてると良いんですけどね」

 これが正直な気持ちではあった。半ば強引に旅に連れ出してしまったのではないかと。

 そうじゃない、とエラルドは言ってくれたけど、簡単に割り切るのやはり難しい。


 そんな私を見たフェイさんが、話をしている男性陣に目をやり、十分に距離が離れていることを確認し、私に顔を近づけた。

 「ここだけの話ですが、わたくし、旅に出ると言った先生に無理を言って同行させてもらったんですよ」

 内緒話のトーンで悪戯っぽい笑みを浮かべながら、そう私に耳打ちする。

 「そうなんですか!? いったいどうやって……」

 「詳しいことは秘密ですが……言えることとすれば言葉より行動、でしょうか」

 「行動……?」

 「はい。ウィローさんは旅を楽しんで欲しいと思っているのでしょう? なら、それを行動で示すんです」

 

 行動で示すこと。言われてみればとても大切なことだと思う。

 フェイさんはいつも、ユーストマ先生とルベのことを気にかけている。数回しか会っていない私でもわかるくらいに。

 彼女はこの言葉の通り、常日頃から行動で旅の仲間への想いを示しているんだろう。

 

 「もっとも、すでにできていることだと思いますが。だって、ウィローさんほど楽しそうに冒険をされる方、ほかに見ませんもの」

 「そう、ですかね」

 「ええ。ウィローさんを見ていると、わたくしも旅の楽しさを思い出すんです。きっとエラルド君もそうですよ」

 

 「ありがとうございます。すごく元気をもらえました」

 「いえいえ、若い方のお役にたてて嬉しいです」

 フェイさんもお若いでしょう、というツッコミはいったん置いておいて。

 

 料理もぼちぼち届き始めたところで、何やらルベとエラルドの会話が盛り上がってるみたいだった。


 「エラルドは氷の魔法使えんのか!! カッコイイなー」

 「そういうルベはどんな魔法が得意なの?」

 「俺? 俺は電気の魔法だな」

 「強そう……!!」


 どうやら、戦闘の話で盛り上がってるみたいだ。

 興奮して、声が少しずつ大きくなっていってる。


 「僕、まだ剣は練習始めたばっかりで……あんまりうまくなくて。でも、もっと強くなりたいなって思ってる」

 「いい夢じゃねえか! そうだ、この後、一緒に戦闘の訓練をしないか?」

 「いいの? やってみたい」

 「よっしゃ、決まり! 早く飯食っていくぞ!」

 

 「ルベ、落ち着いて。時間はありますから」

 テンションが上がりすぎた二人にユーストマ先生の制止が入る。

 ひとまず食事に戻ったけれど、二人はこの後が待ち遠しくてたまらないという感じだ。顔に書いてある。


 「ルベは同性の年の近い友達なんていませんでしたから。エラルド君と話すのが楽しいんでしょう」

 一歩引いたところから一連の流れを見ていたフェイさんがそうつぶやく。

 「エラルドもきっと同じだと思います」

 彼の身の上を知っているからこそ、二人が仲良くしているのは喜ばしいことだと素直に思った。


 「それにしても……ふふ、ウィローさんも罪な方ですねぇ」

 「? 何か言いましたか?」

 「いいえ。何も」


 そんなこんなで、穏やかな昼の時間が過ぎていく。

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