19話 意外な専門家
「魔災管理局へようこそ。ご用件をお伺いします」
森を抜けて、ラゼンスクに着いた後、エラルドと一緒に魔災管理局へ言った。
「魔石について聞きたいことがあって……これ、紹介状です」
受付の男性は一通り手紙に目を通し、口を開く。
「ちょうど良いタイミングでしたね。今、たまたま有名な先生が来ておられるんです。そちらに話を通す形でよろしいですか?」
「良いんですか?ぜひお願いします」
運がよかったみたい。できるだけ早くこの謎を解明したかったから。
「わかりました。ではこちらへ」
そう言われて、エラルドと一緒に、面会室に通された。
机と椅子が置かれた部屋に入り、しばらく待っていると、ノックの音が聞こえる。
「失礼します、ご紹介いただきました……あれ?」
「ユーストマ先生?」
入ってきたのは、青髪の男性。すでに面識のある人物だった。
「ああ、ウィローさんだったんですね。お久しぶりです。そちらは新しい旅のお仲間ですか?」
「ええ、最近一緒に旅を始めた仲間で……」
「エラルドです。はじめまして。」
「はじめまして、エラルド君。僕はユーストマ。旅をしながら研究をしている者です」
二人も挨拶を交わしている。自分の知り合いと知り合いが話しているところって、なんだか不思議な感じがする。
「ウィローさんとユーストマ先生は前から知り合いだったの?」
「うん。エラルドと出会う前に、旅の中で何度か会うことがあったの」
最初に会ったのは、私が旅を始めて5日目のことだったか。 彼の旅の仲間と話し込んでいたのが始まりだった。
「そういえば……ルべとフェイさんも一緒ですか?」
過去に会ったときは、二人の旅の仲間を連れていた。
特にルベは年も近く、何度も話をしている。
「ええ。今日は街を見て回ってるはずです」
変わらず、元気に旅を続けているみたいだ。いいことだ、と思う。
「では、思い出話はここまでにして……さっそく、魔石の解析をしましょうか。」
「わかりました、これがその魔石です」
今まで手に入れた、3つの魔石を手渡す。ユーストマ先生は1つずつ丁寧に解析を進める。
「ふむ……魔物は狼形態だったとのことですね?」
「はい。うち2回はエラルドを攻撃しました」
「そうでしたか。エラルド君が無事だったみたいで何よりです」
光にすかしたり、ルーペを取り出したりして、魔石の内部構造を慎重に調査していた。
しばらくすると、魔石を机に置いて、先生が口を開いた。
「解析は終わりました……ですがその前に、ウィローさんの見解を教えていただけますか?」
「私の見解……ですか?」
「ええ、見たところ何かしら確信があって、今回はその確認といったところでしょう」
ちゃんと見抜かれていたか。やはり、観察力がずば抜けている。
「私の見た限りでは、神様の元から生まれた魔物だと考えます」
魔法陣の構造から導き出した見解を話す。
過去に得た知識と、実際の魔石の特徴を合わせ、説明をした。
話をし終えると、先生は深くうなずき、口を開いた。
「完璧な推論です。僕の見解と同じですね。この魔物の発生源は神の死骸です。」
そして付け加えるなら、と言って立ち上がり、部屋の壁にある地図をさした。
「そして、大本はレイファンにあります。」
そう、結論づけた。
「レイファンの魔物……魔獣のこと?」
そういったのはエラルドだった。
先生と私の視線がエラルドに向く。
「僕は何もわからないけど……レイファンって聞いて、この前のウィローさんの弾き語りの内容を思い出して。なんとなくそうかなって思っただけだけど……」
「ものすごい記憶力と推理力ですね。ええ、まさにその通りです」
今回の魔石の正体は、レイファンで発生する魔獣由来のものであった。
魔物の姿が変わっていたのは、根源の神様の死骸から離れて性質が若干変化していたから、らしい。
「でも、神様の死骸って……あんまり神様が死ぬって考えられないんだけど」
「そのとおり、神はめったに死にません。この件については……レイファンの建国神話を知るのが一番でしょう」
そう言って、先生が話してくれたのはこんな話だった。
むかし、レイファン国ができる前、そこには新しく建てられた国があった。その国の王様は強く、だれもが尊敬していた。
しかし、ある日、王様はとても美しい女性と恋に落ちる。それ以降、王様は国の運営を放棄し、すべてのお金をその女性のために使ってしまった。
民たちはそんな王様に愛想をつかし、憎しみまでおぼえるように。
そして、運命の日、人々はその女性を殺してしまう。
怒り狂った王様は、狂気の内に自殺をし、体に宿った莫大な魔力だけが土地に残されてしまった。
「その後、今のレイファンの神々が土地を再び人が住めるように直したのですが……魔獣の発生だけは抑えられませんでした」
「その後、60年周期の魔災が発生するようになったんですね」
これは、前の街で買った本の内容。実際に過程も含めて人から聞くと、理解の深さは段違いだ。
「こんなところですかね、今回の解析は」
解析は終わり、原因の特定はできた。あとはこの内容を報告し、対応策を実施してもらうだけ。
「では、報告書をだしましょう」
「ありがとうございます」
ここしばらくの謎も解けた。なんだか清々しい気分だ。
「さて……この後ですが、お時間ありますか?」




