表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅路はいずれモノミスへ  作者: 天織 星桂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/24

15話 危機、再び

 ラゼンスクに向かう道中のことだった。

 「ラゼンスクってどんなところかな? 大きい街なんだよね?」

 「うん。本には交易で栄えた街って書いてあったよ。レイファンに近いからかな」

 「そっか……おいしい料理屋さんがあるといいな」

 「意外と食いしん坊だよね、エラルド」

 ウィローさんとそんな他愛ない話をしていた時。


 「キャーーー!!!」

 どこからか女性の悲鳴が聞こえてきた。

 バタバタとあたりから鳥が飛び立っていく。異様な空気だ。

 「聞こえたね? エラルド」

 「うん……なにがあったのかな」

 「わからない。でも、きっと危険が迫っている」

 「様子を見に行こう」

 もしかしたら、前の僕みたいに、魔物に襲われた人がいるのかもしれない。

 あたりを警戒しながら、声のした方に向かっていく。


 「いた」

 ウィローさんが小さくそう呟く。声のした方には座り込んだ女性と今にも襲い掛かりそうな魔物が。

 あの魔物は僕を襲った……。

 助けないと!

 腰にさした短刀を引き抜き魔物の方に走り出す。

 「エラルドっ!」

 後ろでウィローさんの声が聞こえる。

 作戦を立てるでもなく、飛び出してきてきてしまった。でも、動かずにはいられなかった。


 「やぁぁああ!!」

 まずは魔物の頭に一発。

 「グルルル……」

 あまり効いていないみたいだ。

 でも注意はこちらに向いた。これでいい。

 「ウィローさん!! その人を連れてって!」

 今なら逃げられるはず。僕は次の攻撃をしないと。

 「星の光は我らに降り注ぐ」

 詠唱完了。魔法の準備はできた。

 「凍れ!!」

 新しく習得した氷の魔法。魔物の足を固定する。魔物は足を上げることができず、戸惑っているようだ。

 視界の端でウィローさんが女性の手を引いて走っているのが見えた。

 ……良かった。ちゃんと逃げ出せたみたい。


 改めて魔物の正面に立ちはだかる。

 体長は僕より大きい。短剣を握る手が震えるのが分かった。

 でも、できる。大丈夫。

 

 「もう一発……くらえ!!」

 体制を低く前に踏み出してから顎の下に攻撃を入れる。硬くてあまり手ごたえはない。

 でも引けない。氷は今にも砕けてしまいそうだ。

 「前のヤツより強い……どこかに弱点があれば」

 頭部は硬くて、攻撃は効かないみたいだ。氷の枷のヒビはどんどん大きくなっていく。

 次はどうするべきか。次は体の方に攻撃を……

 「ガルルッ!!」

 「ぐっ……痛ぁ」

 拘束を振りほどいた魔物に左手を噛まれた。痛みで反対の手の短剣を落としてしまう。

 何とか走って距離をとる。魔物の視線は外れない。

 こうなったら魔法を使って……

 「集中……魔法陣を展開」

 今度は魔物の体をめがけて氷のつぶてを放つ。が、避けられてしまう。

 次の攻撃はなんとか避けたけど、地面に転がる形になってしまった。

 まずい。このままじゃ、やられてしまう……

 

 「燃えなさい」

 静かで強い声が響く。

 「……ウィローさん?」

 次の瞬間、見たことない大きさの火球が魔物をつつむ。

 魔物の足は完全に止まった。突然のことで時間が止まったみたいに。

 そして、目にもとまらぬ速さでウィローさんが斬撃を繰り出す。少し遅れて魔物の傷口が開き、巨体が地面に倒れこむ。

 「これで、終わり」

 倒れこんで動くことができなくなった魔物に最後の斬撃が入れられる。

 魔物は声を上げることもできずに、魔石へ変わっていった。


 「エラルド!! 大丈夫!?」

 「うん……なんとか」

 心配そうな顔でこちらに駆け寄ってきた。

 「さっきの人は無事?」

 「うん、すぐそこにいるよ。怪我もなさそう」

 「そっか……良かった」

 やっと安心できる。役に立てたかな。

 「まずは手当て。人を助けるのは良いことだけど、自分を蔑ろにするのはダメ」

 そう言いながら、ウィローさんが包帯を取り出す。

 グローブの下の噛まれた手からは血が出ていて、周りの皮膚も黒くなっていた。

 「とりあえず包帯で止血しておくよ。左手はできるだけ動かさないようにね」

 「わかった。ありがとう、ウィローさん」

 

 「あの……」

 木の陰から顔をのぞかせたのは銀髪の女性。さっきの人だ。

 「助けていただき、本当にありがとうございました。その……お怪我は大丈夫でしょうか?」

 「あ、ええ。大丈夫です。無事で何より」

 ペコペコと何度も頭を下げ、お礼を言われた。本当に助けられてよかった。

 「このあと、街まで行かれますか? 魔物が増えてるようなので、良ければ一緒に」

 ウィローさんがそう女性に問いかける。

 「お気遣い、ありがとうございます。ですが、今はちょうど山に戻るところでして……」

 山に戻る? どういうことだろうか?

 帰ってきたのは意外な答えだった。

 「わたくし、妖精族の者で……魔法も使えない未熟者ですが」

 妖精。自然の中で人々とは離れて暮らす者たちも多いと聞いたことがある。

 「山に向かうならなおさら。また魔物に襲われると大変ですし」

 「僕もそう思います。急ぎの旅じゃないし」

 「本当にいいんですか? 助かります」

 次の行動は決まった。この人を無事に送り届ける。

 「わたくしは名の無い妖精ですが……お二人の名前をうかがってもよろしいですか?」

 「私はウィロー。冒険者です」

 「僕はエラルドです。」

 「ウィローさんとエラルドさん。よろしくお願いいたします」

 謎の妖精さん。彼女にいったい何があったのだろうか?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ