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旅路はいずれモノミスへ  作者: 天織 星桂


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14/24

14話 初めての魔法

 「じゃあ、魔法について説明するね。まずは魔法の原理から」

 街を出発し、森に差し掛かったところで、ウィローさんがそう切り出した。

 「魔法っていうのは、魔力っていう力を変化させて発生させるの」

 「魔力……魔物の体を作ってるものだよね」

 「そう、あれも魔力だね。魔物はすべて魔力からできているから」

 僕が知っている魔法は、魔物を構成する魔法と、ウィローさんの炎の魔法だけだ。

 「魔法で一番大事なのは魔法陣! あれがないと魔法が成り立たたなくなっちゃう」

 ウィローさんが言うことをまとめると……

 魔法陣の役割は2つ。

 ひとつ目は魔力の形を自分の望むように書き換えること。

 ふたつ目は魔力を虚界から引き出すこと。

 「虚界……ってなに? 多分初めて聞いた」

 『前』にも聞いたことのない言葉だったのか、まったくイメージがわいてこない。

 そんな僕の反応に、ウィローさんは緑色の目を伏せながらしばらく考え込み、その後、ポンッと手を打った。

 「エラルドはさ、この世界がもうひとつあるって考えたことある?」

 「世界がもうひとつ?」

 「うん。この世界と同じように広い世界が広がっていて……でもそこには人間も動物も、魔物さえ何もいないんだ」

 一度、そんな世界について思いを馳せてみる。

 この世界に布1枚隔てたところにある、重なっているけれど、何もない世界……

 「なんとなくわかるかも」 

 「それが虚界っていうんだ。その世界は何もない代わりに、魔力だけが満ちている」

 「つまり……魔法陣がその世界とこの世界をつなげるってこと?」

 「大正解! やっぱエラルドは呑み込みが早いね」

 褒められてついつい、口角が上がってしまう。ウィローさんに見られないよう、ちょっと顔を伏せた。

 「つまり、魔法陣を使ってこの世界に魔力を引き出して、それから魔力を整えれば魔法が使えるってこと。これさえわかってれば魔法を使えるようになるよ」

 理論はなんとなくわかったと思う。あとは実践あるのみだ。

 「次の休憩地点で魔法陣を教えるね」

 初めて使う魔法……どんな感じだろう。

 楽しみが目の前にあると、足が軽く感じるような気がする。


 しばらく歩くと、森の中に開けた場所があった。

 ちょうどいい岩に腰掛け、足の疲れをとる。

 連日の移動で、足が痛くない日はない。でも、置いてかれないよう、ついていかないと。

 「じゃあ、やってみようか。魔法陣を展開するためには、まず魔法陣の形を覚えるとこからだね」

 休憩を取った後、ウィローさんがそう言いながら地面に木の棒で魔法陣を書き始めた。

 「これは、ウィローさんの炎の魔法の魔法陣?」

 「そうだね。いつもよりはだいぶ小さくしてあるけど」

 魔法陣を書く手に迷いは全くない。地面の上に円状の模様が出来上がる。

 「この模様を覚えて。そしたら次は魔法陣の展開ね」

 お手本として、ウィローさんが模様に手をかざして、魔法陣を展開する。

 光が地面の図形にそって広がり、小さな炎が発生する。

 「魔法陣の展開は頭の中で図形を浮かび上がらせるイメージで……言葉でいうのは難しいから、実践あるのみかな」

 そう言われ、魔法陣の前に立った。

 目を一度瞑り、開く。呼吸を整える。

 ——魔法陣をイメージ。できる。大丈夫。

 「——燃えろっっっ!!」

 言葉を放つと同時に魔法陣が光りだす。


 ……だけど、いつまでたっても、炎は出てこなかった。

 「はぁ、ふぅ……失敗だったかな」

 集中しすぎて、息が止まってたみたいだ。少し頭がぐらぐらする。

 「どういうこと……? ちゃんと道は空いているのに」

 ふと横をみると、ウィローさんが考え事をしているようだった。

 いや、深刻な顔というのか? すごく困ったような、悩んでるような……

 「どうかしたの? ウィローさん」

 「ん……ああ、ごめんね。ちょっと考え事を」

 そう言ってしゃがみ込み、地面の魔法陣を指でなぞっている。

 「やっぱり、魔法陣の形に間違いはない。光っていたから、魔力を通す道が開いてたはず……なのになんで何も起こらなかったんだろう?」

 「もう1回試してみてもいい?」

 「もちろんだよ。原因が特定できるといいけど」

 改めて、魔法陣の前に立つ。手をかざす。

 さっきと同じように魔法陣から光があふれる。でも、魔法は発動しない。

 「こんなこと、初めて。原因が分からない……」

 ウィローさんは手帳を取り出して、何かを書き始める。

 しばらくして、ウィローさんが呟いた。

 

 「”星の光は我らに降り注ぐ”」

 そう言った途端、ポンッと魔法陣から小さな炎が発生した。

 「わっ」

 突然のことで驚いてしまう。いったい何があったのだろう?

 「詠唱魔法っていうやつだね」

 「詠唱魔法?」

 またもや聞いたことのない言葉。なんだか難しそうだ。

 「魔法がうまく使えない人が、祝詞を唱えるとうまくできることがあるんだ。エラルドもそのタイプなんだね」

 「……今の魔法は僕のだったの?」

 「そうだね。祝詞を唱えたのは私だけど、魔法はエラルドのだね」

 「なんだか不思議な感じだ」

 そうか。魔法を使えたのか。

 確認のために、もう一度やってみよう。祝詞はたしか……

 「星の光は我らに降り注ぐ」

 ボウゥと魔法陣から炎が起こる。

 「ほんとにできた……」

 「うまくいって良かった。おめでとう、エラルド」

 強くなるための第一歩になっただろうか。

 まだまだ魔法の修行は始まったばかり。もっと、練習を重ねなければ。

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