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旅路はいずれモノミスへ  作者: 天織 星桂


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12話 ファーディナンド冒険記

 午後は僕も魔災管理局に行って、覚えてる限りの状況を証言した。

 やはり、あまり起こる事態じゃないらしい。

 「ふぅ……お疲れ様。体調は変わりない?」

 「うん、一日寝てたからね。元気が有り余ってるくらいだよ」

 夕方の街を歩きながら

 実際、今はアイツが出てくる気配もない。

 「このままどこかでご飯食べて宿に戻ろうか……なにか食べたいもの、ある?」

 「お肉が食べたい!!」

 ちょっと食い気味に答えてしまった。今日食べたものはおかゆだけだったので、食べたい気持ちが先走ってしまった。

 そんな僕を見て、ウィローさんは手を口元にあてて笑いながら言う。

 「わかった。そうしよう」


 夕飯が食べられる場所を探すため、街の中心に向かっていた。

 すると、何やら優しい音楽が聞こえる。

 音の元は街の中心の木の下みたいだ。楽器を持った女性がベンチに腰掛け、演奏をしている。

 「あれ、なにかな?」

 僕には見慣れない光景だった。なのでウィローさんに聞いてみる。

 「竪琴を使った弾き語りだね。アウローラの街ではよくみられる光景だよ」

 そうか。あれが弾き語りか。

 本の中でしか見たことがなかった。なんだか、すごく旅っぽい。

 

 演奏が終わると、女性は頭を軽く下げた後、他の男性に楽器を手渡した。

 男性の演奏が始まる。さっきに比べて、力強い音が響き渡る。

 そんな様子をみて、ウィローさんは近くにいた街の人に話しかけた。

 「すみません。あの楽器は使っていいものなんですか?」

 「ん……ああ、旅の人か。この街の伝統みたいなもんでね、新しい楽器を買うと、古いのはこうやってみんなが弾けるように貸し出すことが多いんだ」

 「そうなんですね……街の人でなくても使えますか?」

 「もちろんさ。みんないい音楽を聴きたがってるからね」

 「わかりました。ありがとうございます」


 街の人との会話が終わると、こちらを振り向いた。

 「エラルド、ちょっと弾いてきてもいい? ちょっと時間遅くなっちゃうかもだけど……」

 「もちろん! ウィローさん、楽器もできるの?」

 「うん、叔母(かあ)さんがもともと吟遊詩人で……小さいころに教えてもらったんだ」

 たしか、旅に出たきっかけに、家族のことを言っていたはず。

 なるほど、旅人といっても、いろんな生き方があるんだ。


 男性の演奏が終わった。ウィローさんが楽器を受け取る。

 一呼吸つくと、目つきが変わった。普段とも、魔物と対峙するときとも違う、


 「今から皆さんにお聞きいただくのは、かの英雄、メテオ・ファーディナンドの叙事詩です」

 風のような竪琴の伴奏が始まる。

 詩として語られた物語は、こんな内容だった。


 むかしむかし、ある屋敷に住んでいたメテオという少年と、その召使の妖精は、たまたま街に訪れた旅人の少年、サダルスに出会う。サダルスは2人に対して、旅の話をした。

 それを聞いたメテオは、自分も旅に出たいと思うようになる。そして、3人で旅に出ることになった。

 場面は変わって、レイファンのとある街にて。そこに住む人々は、狂暴化した魔物の被害に頭を悩まされていた。

 そこに来たのが3人の旅人。つまり、メテオたちだ。

 メテオはすべてを切り裂く輝く斬撃を、サダルスはすべてを燃やし尽くすほど強い炎の魔法を、妖精は時間さえ止めてしまうほど冷たい氷の魔法を持っていた。

 彼らは魔物を倒し、根源を突き止め、ついには魔物の大本の神にまで刃を向けた。

 街の人々は大いに喜び、彼らを英雄とたたえた。

 しかし、彼らは、賞賛も褒美も受け取らなかった。


 「こうして、またほかの誰かのために、英雄たちは静かに旅立っていきました」

 竪琴の最後の音が風に流れ、消えると同時に、あたりからは拍手が聞こえ始めた。

 ウィローさんもまた、軽く頭を下げて、次の人へ楽器をわたしこちらに戻ってくる。


 「えへへ、どうだったかな、弾き語り……エラルド?」

 「あっ! 本当にすごかったよ!!」

 あまりの没入感に一瞬、固まってしまった。

 「ありがとう。弾いてたのは私の大好きな物語なんだ」

 たしか、前もそんなことを言っていた。

 「英雄の旅(モノミス)だっけ? こういうことだったんだね」

 「うん。この物語……ファーディナンド冒険記は英雄の旅(モノミス)がテーマのお話なんだ……私もこんな風に人を助けられるようになりたいなって思ってて」

 「ウィローさんなら絶対なれるよ! 僕のことを助けてくれたのだってウィローさんだったんだから」

 「そう……かな、えへへ、元気出るよ」

 頬に手を当ててはにかむ彼女の姿に、こちらまで温かい気持ちになった。


 「おおーい、ちょっといいか? さっきファーディナンド冒険記を弾き語りしてたのは嬢ちゃんかい?」

 「はい、そうです……どうかしました?」

 突然、街の人がウィローさんに話しかけた。どうやらさっきの弾き語りを聞いていたらしい。

 「俺はそこの飯屋のモンなんだが……さっきの続き、ウチで弾いてもらえないかい?」

 「えっ?」

 「本当にいい演奏で感動してな。もちろん、タダでとは言わないぜ。うちの料理を好きなだけ食べて行ってくれ! お仲間さんも一緒にな!」

 ウィローさんはしばらく悩むようなしぐさをして、言った。

 「えっと……メニューに肉料理はありますか?」

 「おうよ! ウチの看板メニューだぜ!」

 そこまで話し、ウィローさんがこっちに振り向く。

 「だってさ、エラルド……どうかな?」

 「うん、行こう! 僕もウィローさんの弾き語り、もっと聞きたい」

 「話はまとまったな。じゃあ、案内するぜ!」

 そんなこんなで、今日の夕飯は決まった。


 店ではウィローさんが話の続きを披露してくれた。

 今度はファーディナンド冒険記のアウローラでの話。

 メテオたちは、昔から人々を襲ってきた悪龍の討伐に乗り出す……そんなお話。


 集まった人々も楽しそうにウィローさんの弾き語りを聞いている。

 彼女の声を聴いているうちに、穏やかに夜が深くなっていった。

 

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