与えられた生
——どうやら俺は、リオルドとかいう皇子になったらしい。
最初はどこの馬の骨かと思ったが、
リオルド・セレスティア。
……まさか、生前まで敵対していた国とはな。
あの大きな戦争から、およそ三年。
この体の持ち主は、まだ十二歳の子供だ。
——何の因果だ。
よりにもよって敵国の皇子、それも見るからに貧弱な体ときた。
……まあ、確かに。
金を持って楽に生きたいと思ったことはある。
だが——これは、さすがに極端すぎる。
誰が皇子になりたいと言った。
幸い、第二皇子らしい……幸いでも何でもないが。
王になる必要がないだけ、まだマシか。
リオルドになってから、二日。
レイモンドとかいう執事長が、泣きながら事情を説明してきた。
ヴィンセントは王家専属の医師。
そして——
グレンとかいう、最初から俺に喧嘩を売ってきた男は、リオルドの護衛兼騎士団長を務めるらしい。
……要するに、かなりの実力者だ。
まあ——
俺のほうが強いがな。
前世の俺は、一応“最強騎士”なんて呼ばれていた。
別名——「究極の負けず嫌い」。
才能はあったが、身体には恵まれなかった。
同じ騎士の中でも、女と並ぶほどの背丈。
……そして、何の因果か。
リオルドもまた、小さい。
いや——俺より小柄じゃないか。
この、筋肉の欠片もない細い腕。
——こんなもので、剣が握れるのか?
試しに、立ち上がってみる。
……遅い。
まるで時間でも止まっているかのように、体が言うことをきかない。
イライラしながら、ようやく上体を起こし——
ベッドの脇に手をついて、立ち上がる。
「……っ」
ふらり、と視界が揺れた。
壁に手をつき、どうにか体を支える。
——なんだ、この体は。
これしきのことで、息が上がる。
「はっ……はぁ……くそ……」
肺が焼けるように痛い。
壁を伝いながら、無駄に広い室内を進む。
——情けない。
かつては木の枝を飛び回っていたというのに。
今、同じことをすれば——確実に死ぬ。
じわりと汗が滲む。
震える手を、壁から離した。
「……あ」
次の瞬間——
足元が、崩れた。
——ずてん!!
見事に、滑った。
「……は?」
床に転がったまま、天井を見上げる。
——なんだ、このザマは。
これで「最強騎士だった」などと口にしてみろ。
誰が信じる。
——いや、諦めるな。
この性格のおかげで、俺は生き延びてきたんだ。
前世よりも、訓練できる環境はある。
元の力を取り戻すのに、そう時間はかからない。
——やってやる。
ここから、這い上がってみせる。
——ガチャ。
「殿下!?」
扉が勢いよく開き、レイモンドが飛び込んでくる。
そして——
ベッドから大分離れた位置で倒れている俺を見つけた。
「お、いいところに——」
「ギャァアア!?殿下ぁああああ!! 誰にやられたのですか!?」
悲鳴のような声が、容赦なく鼓膜を叩く。
——なんだこいつ、俺より汗かいてるじゃねぇか。
「頼むから……静かにしてくれ」
頭が、ガンガンと痛む。




