サーバルーム その1
「どこって、ネバダ州よ」
「そんなことはわかっています。ここはエリア51ですよね?」
なにそれ?
「軍人がいるから、軍の施設だとは想像できると思うが、ネバダにはネリスやファロンもあるのに、エリア51と特定?」
「山に囲まれていて、北側に塩湖がある。簡単だよ」
え? 簡単?
あっ。悠人がやっているGeoGuessrって地理の遊びだから、わかったのかな?
「GeoGuessrでエリア51を知っていたので」
「軍の設備が出るわけないだろ?」
「そうなの?」
「それより、サインをしてくれ」と佐々木さんが言うと側仕えがワシのマークが入った紙とペンを机に出した。
英語がびっちりで、慣れない用語で読みにくいが、守秘義務誓約書のようだ。
条件が細かい… ん? 罰則が禁固刑?
「詳しく読んでもらってもいいが、サインをしない選択肢はないわよ」
「…」
私が悠人を見ると、悠人は仕方なさそうな顔をした。
私はペンを取って、サインした。
悠人もサインする。
側仕えは誓約書を確認して、佐々木さんに合図を送る。
「問題なさそうね。その端末で案内画面を表示できるわ。端末とブレスレッドは連携しているから、本人しか操作できないわよ」
私達の前に携帯電話? 端末? が置かれた。
「あなた達の自室は同じだからね」
「え? 同じ?」
「結婚しているんだから、同じ部屋よ。と言いたいところだけど、今回の移動が急だったという理由もあるけどね」
「そうなんですか…」
うーん。なんか悠人と同じ部屋ってのは緊張してきたんだけど…
ちらっと悠人を見ると、悠人は怒っている? なんか私だけ緊張しているのが馬鹿みたいじゃない。
「では、ついてきて」
「まだ質問があるんだが…」
「後にして。こちらの説明が先よ。行くわよ」
「わかった」
佐々木さんが立ち上がったので、ついて行く。
最初の扉は普通の扉だったが、次の扉は特殊だった。
「入口の扉は指紋認証で、中の扉は虹彩の認証よ。扉を閉めないと虹彩認証できないからわ。だから、一人づつよ。入って」
一番は私で、指紋を押し付けると扉の上のランプが青に変わった。
ハッチのようなロックがついた重い扉を開けて入り、扉を閉める。
目の検査のような機器が壁についている。
これを覗けってことよね?
覗くと扉の上のランプが青に変わる。
厳重なのはしかたがないけど、「ここの扉は重すぎるのよっと」と言いながら扉を通った。
扉の先はトイレ、自販機、テーブルのある部屋だった。
ほどなくして、佐々木さん達が到着した。
「飲食はこの部屋だけ可能で、この先は水分が含むものの持ち出しは禁止よ。AIによる監視カメラでチェックされているわよ」
「では、行くわよ」
部屋の先は廊下だがかなり広そうだ。2つ目の扉を佐々木さんが入る。
20帖ほどの部屋で奥の壁側にサーバーラックが10本ほど並んでいる。
手前には机があり、大きめのディスプレイとホワイトボードがある。
側仕えがノートPCをディスプレイに接続している。
サーバーラックからはファンの音がしているのでかなりうるさい。
こんな部屋でホワイトボードを使って会議できるの?と思っていると、ワイヤレスイヤホンが配られた。
つけろってことよね?
ワイヤレスイヤホンはノイズキャンセリングがついているようで、静かになった。
「さ、説明を始めるわよ」という声がクリアに聞こえる。
これは、快適ね。図書館並ね。
「想像どおり、壁際のサーバラックがNeuraLumeよ。fMRIもARメガネも用意しているわ」
「このNeuraLumeをどうしろと言っているのですか?」
「前に言ったように最低限は会話ができるように調教が目的よ」
「NeuraLumeを何に利用しようとしているのですか?」
「まともに使えるなら、AIとして活用するわ」
「例えば?」
「最初は海底や宇宙など人が長期活動できない場所での運用ね。その後は状況しだいね」
「いつまでに会話ができるようになればいいの?」
「そうねぇ。期限は1ヶ月。1週間毎に進捗を聞くわ」
「1ヶ月後には解放してもらえるということね」
「状況によっては再契約を勧めることになるでしょうね」
状況? 再契約?
「1ヶ月以内に会話ができない場合はどうなるのですか?」
「…現時点ではわからないわ」
これって、ピンチってことよね?
「そうですか…」
「ここのネットワークなどの設備の状況を知りたいのですが」
「そのPCにガイダンスが入っているわ。質問はチャットボットが回答するわ」と言うと、佐々木さんと側仕えは出て行き、悠人と2人になった。




