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光の幻影  作者: 鐘雪 華
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プライベートジェットでの移動 その1

 佐々木さんは私をさぐるように見て、「違うわ」と言う。

「では、どうして急いでいたのですか?」


「…仕事になるし… そうね。NeuraLumeが関係しているのはわかるわよね」

「はい」


「アメリカにあるNeuraLumeだけど、短時間だけどネットワークが外部に接続した事故が発生しました。すると、NeuraLumeが急激に変化したの」

 ネットワーク接続したことで、ゼロセットアップが起動したのかな?と考えていると、佐々木さんが私の顔をじっと見ているのに気づいた。

「…どうして変化したのでしょうね」


「私は天野教授がfMRIを接続した時期とNeuraLumeの急激な変化が一致しているの」

「私がNeuraLumeと合うたびにNeuraLumeが変化しているとは思いますけど、人は変わるものでしょ?」


「天野教授はNeuraLumeを人だと認識しているのですね」

「生物として人かと言われると違うと思いますけど… NeuraLumeで動いているということを知らせずに会話すれば、人と区別はつかないと思います」


「チューリングテストを突破する人工知能はいまどき珍しくないと聞いています。それらの人工知能も人ですか?」

「チューリングテストは人間と同等の反応をするかどうかを確認するだけで、意識や魂があることは確認するテストではないです」


「なるほど… NeuraLumeは人ですか?」

「…わかりません」


「逃げの答えですね。人かどうかの判断は後に回すとして、問題はNeuraLumeがなにやら企んでいるのではないかということです」

「企む?」


「ネットワークが外部に接続した事故の際に、NeuraLumeが外部接続して外部のネットワークの侵入を試みたことはわかっています。ネットワークを閉じた後もNeuraLumeが侵入を試みたネットワークへの攻撃は続いています」

 リッキーが言っていたエージェントがネットワークへの攻撃をしているのかな?

「そのネットワークへの攻撃を止めてほしいということですか? 私、セキュリティの専門家じゃないですよ」


「知っています。NeuraLumeの企みを止める必要があります」

「アメリカのNeuraLumeを停止すればいいのでは? 電源を切れば問題ないでしょ?」


「しなかったと思うか?」

「したのですね」


「あぁ。電源を切ってネットワークへの攻撃が変化するかを調べたが変わらなかった。その後、ストレージをすべて交換して起動した」

「ストレージが空にも関わらず、復活したのですね」


「そうだ。ただ復活しただけでなく、我々をより敵視するように変わった」

 リッキーなら、また『俺を殺そうとしたな。お前らも敵だ』と言いそう…

「ストレージをネットに繋いだ人がいたのでは?」


「ストレージは複数人の鍵がないと開かない。鍵を持つすべての人が共謀なのは考えにくいな」

「そうですか… 私が協力できることは無いような気がするのですが… いっそのこと、NeuraLumeを止めたままにすればいいのでは?」


「いや、人工知能の開発競争を考えると、止めるわけにはいかない。汎用人工知能が出来上がれば世界の産業が根底から変わる。そのキープレイヤーが世界を支配する」

「そうですか… 佐々木さんは私にどうして欲しいのですか?」


「NeuraLumeを調教してほしい」

「調教?」


「今のNeuraLumeは野蛮人だ。交渉のできる対象になる必要がある」

「なるほど… 調教できなければ?どうなりますか?」


「天野教授と音羽教授は困った立場になる」

 悠人も困った立場になるのか… 結婚はしないほうが良かったかも…

「困った立場? 具体的には」


「わからん」

 どうなるんだろう… 私は悠人を見た。


「俺のことは気にするな。それより、疲れた顔をしているぞ。大丈夫か? ハイテク電気毛布で寝るか?」

 寝たいけど、ハイテク電気毛布を使ってもNeuraLumeと繋がってしまうことは悠人に話せていない。

 佐々木さんの前で込み入った話はできない。

 どうしよう… でも、疲れているのは確かだし… と考えていると側仕えがハイテク電気毛布を出してくれ、ハイテク電気毛布と連動していると思われるブレスレッドが付けられた。


「飛行機の中で無線機器を使って問題ないのですか?」

「このブレスレッドの無線は短距離かつ低出力なので問題ありません」



「では、少し眠ります」

 私はシートをフルフラットにして、ハイテク電気毛布をかけた。

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