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光の幻影  作者: 鐘雪 華
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慌ただしい移動

「おめでとう。天野教授」と佐々木さんが言う。

「ありがとうございます」


「音羽教授、指輪を用意していたとはねぇ。合格よ。でも急いで」

「どうして急いでいるのですか?」


「あとで説明するわ」

「わかりました…」


 しかたがないので、私は玄関にいた叔父さんに「いってきます」という。

「あぁ。気をつけて。音羽教授、彩音を頼む」

「わかりました」

 私達は急いで車に戻った。


 車で一息つけたので、質問をする。

「これから新幹線ですか?」

「いいえ、病院に戻るわ」


「病院?」

「病院にヘリが来ているわ。さすがに緊急用のヘリポートを長く占有できないから不便ね」


「その後は?」

「その後は… いずれわかるわ」

 佐々木さんは何も答えてくれないまま病院について、病院の屋上のヘリに乗り込む。

 ヘリって初めてだけど、うるさいし、快適には程遠い乗り物ね…

 渡されたヘッドフォンで会話ができるみたい。

「聞こえる?」

「あぁ。聞こえるが、佐々木さんには聞こえていないようだぞ」

 佐々木さんを見ると、佐々木さんは無線で話しているので何を言っているのかわからないが、何やら指示をしている。


 ま、悠人と会話ができるならいいか… どこに向かっているのかしら…

「悠人、どこに向かっているかわかる?」

「方角から考えると東京だな。それ以上はわからないな」


 私は観光気分で見える風景を楽しんだ。

「だいぶ、都心に近づいてきたわね。どこに止まるんだろうね」

「そうだな。病院のヘリポートに使うぐらいだから予想がつかない場所だろうな」


「スカイツリーが見えたわ。東京ね」

「飛行禁止区域を飛んでいるようだが、申請済みなのかな。高度を下げているから止まるのかな?」


「指輪を買うとか言っていたから、銀座とか?」

「ヘリポートがないだろ?」


「残念ね。婚約指輪は音羽教授が買っていたから、直接羽田よ」

 ヘリポートの着陸し、すぐさま車に乗り込む。


 私は乱れた髪を手でとかしていると、「これにサインしてください」と側仕えが婚姻届が挟まれたクリップボードを渡してきた。

 なんか、情緒がないなぁと思いながらサインをする。

 悠人もサインして、クリップボードを返す。


「印鑑がないのですけど…」

「押印は任意ですので、不要です」


「そうですか」

 うーん。印鑑が必要ないんだ… ただの申請なんだけど、なんか結婚するぞという気合がはいらないというか、さみしいというかちょっと複雑…


 車が止まり、降りると、眼の前に小さいジェット機が停まっている。

 佐々木さんは飛行機に乗り込む。

 乗れってことよね?


 私は小さいジェット機の入口に立つ、制服の人をちらっと見て、飛行機に乗り込み、勧められた椅子に座る。

「あの制服の人はパイロットかな?」

「さぁ。どうだろう」


「保安検査員で、パイロットじゃない」と佐々木さんが答える。

「保安検査員? 何をする人ですか?」


「出国手続きに決まっているだろ?」

「出国!? 出国ですって!? 聞いてないです!」


「そうだったか? 海外なんて大したことじゃないだろ?」

「そうですけど… あっ。パスポート無いですよ」


「問題ない。こちらで用意した」

「用意?」


 ジェットエンジンが起動する音?が聞こえる。

「シートベルトを閉めて。出発するわよ」

「え? もう? 保安検査員?が何もチェックしていないと思いますけど…」


「搭乗口にいたでしょ?」

「そうですけど…」

 機体の振動が強くなり加速する。窓を見ると、風景からも加速がわかる。もう滑走路に入っていたの?

 ん? この楕円の窓、このフルフラットになりそうなシート… 病院での夢と同じ?

 あの夢は隣に私が座っていたけど… 

 あれ? あの夢は悠人の位置から私を見ていた?


 水平飛行に移ったからか、側仕えはシートベルトを外して佐々木さんと悠人にシャンパンを出し、私に「お酒は禁止と聞いておりますので、お水になります」とワイングラスに入った水を差し出す。

「ありがとうございます。佐々木さん、急いでいたのは飛行機の都合ですか?」

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