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光の幻影  作者: 鐘雪 華
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指輪

「佐々木さん、どうして結婚という話になるのですか? 説明してください」

「そうねぇ… 天野教授も音羽教授も実績がないけど、天野教授は連れて行く必要がある。ここまではいい?」


「私を連れて行くというところが気になりますが、続けてください」

「本来は本人のみ連れていけばいいんだけど、穏便に済ますために家族の同伴を認める場合があるの。音羽教授は同伴を希望しているなら、結婚するしかないでしょ? で、どうするの? 結婚するのしないの?」


 私は悠人を見た。

 悠人は真剣な顔をして「彩音、結婚しよう」と言う。


「はぁ。…本気なの? 義務?」

「本気だ」


「天野教授の答えは?」

 悠人がついてきてくれるのは心強いのは確かだし、悠人との結婚を考えたこともあるけど、プロポーズがこのシチュエーションというのはねぇ…


「はい」と私は悠人に向かって言うと、悠人の緊張は少し溶けたようだ。

「ま、悠人なら義孝も文句は言わんだろう」と叔父さんも認めてくれる。


 側仕えが佐々木さんに耳打ちする。

「そうなの?」


 私は側仕えが結婚しても一緒に行けないと言っているような気がして、「何でしょうか?」と聞いた。


「東京に戻って、区役所で婚姻届を出す必要があるわ。そして、指輪を買うわ。指輪ぐらいないと様にならないでしょ? では移動するわよ」

「移動? 今から? お医者さんが許可しないでしょ?」


「話は通すから問題ないわ。準備があるからあなた達は出て」と悠人と叔父さんに向かって言う。

 悠人達と代わりに2人が入ってきた。


「着替えなさい」

 確かにこの格好じゃ、外に出れないわね。

 ワンピで、少しガーリー… 選ばない服だけど、仕方がないよね…


「下着はサイズがわかっていますので、同じサイズを用意しています。靴はフィッティングできませんでしたので、サンダルを用意しています」

「ありがとうございます」

 側仕えがいる中で着替えろってことか… なんか慣れてきた私がいる…


「この椅子に座ってください」

「はい」

 メイクも髪もセットされる… 鏡がないからどんなふうになっているのかわからん。


「おわりました」と側仕えが言い、私を立ち上がらせる。

 佐々木さんは私をじっと見て、手をくるくる回す。

 え? 回れってこと?

 私はゆっくり回る…


「合格ね」

 合格って何? 私、何に合格したの?


「行くわよ」

「待ってください。私の荷物…」


「このトートバックをご利用ください」と側仕えがバックを差し出す。

「ありがとう」と言い、バックを受け取り携帯やパソコンを入れるが、こっそり接続用デバイスを入れる。


「準備はいい?」

「あっ。はい」

 私達は廊下に出ると、悠人達と2人の黒ずくめの男がが待っていた。


「ほう」と叔父さんが言い、隣にボケっと立っている悠人を見ると、ため息を吐いて「おい!」と言いながら肘でつついた。

 悠人は「あ、彩音、似合っているよ」と絞り出す。

「ありがとう」


「こっちの回答は不合格ね。行くわよ」

 私達は黒ずくめに囲まれて移動するが、病院の中のはずなのに患者もお医者さんにも合わない。

 病院の外にはバンが待っており、それに乗り込む。


「仙台の家に向かいます。音羽教授、天野教授、準備は5分以内で終わらせるように。岡田さんはそこで降りてください」

「わかりました」


 仙台の家に着くと、慌ただしく家に入り用意をする。部屋を出て階段を歩いている後ろから声をかけられた。


「なに?」

「受け取ってくれ」と悠人はティファニーブルーのリングケースを私の前に出し、開けた。


「これって…」

「あぁ。婚約指輪だ。さっきは持ってなかったからな」


「ありがとう。つけて」と私は左手を差し出した。

 悠人は私の薬指に指輪をはめる。ぴったり… 本当に私のために用意したんだ…

 さっきとは違って、嬉しい。

 私は左手の指輪を見る。その手の先にニヤニヤしている佐々木さんが目に入った。

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