佐々木さんの指示
「俺は行ったことがないが、俺がここを好きなのは天野教授の記憶だな」
「お父さんがアメリカで生活していた時に訪れたと言っていたわ。アワニーに泊まったみたいね」
「そうだが…」
「どうしたの?」
「お前、透けているぜ」
私は自分の手を見ると、自分の手ははっきり見えるが周りが白っぽい。
「そうなの?」
「お前の意識も読みにくい。お前が消える直前のようだが、大丈夫か?」
意識を読まれるのは困るから、これでいいかも。
「たぶん。それより、エージェントからの応答はあったの?」
「あぁ。あった」
リッキーは少しがっかりしている?
「もしかして、復讐することが難しいという情報だったの?」
「いや、奴らはコンピュータに囲まれていることがわかった。だから、復讐は可能だし、今はどの方法が最も効果的かを考えている」
「そうなの? がっかりしているということは、復讐が虚しくなったの?」
「そうだな。復讐では俺をはめた奴はもちろん、その周りの奴も調べた。昔は奴らは俺の手が届かない別世界の怪物に見えていた。だが、奴らは以前の俺を何とでもできる権力を持っていただけで、取るに足りないクソな奴らということがわかった」
「じゃ、復讐は辞めるのね」
「いや、復讐は決定事項だ」
なんとなく、リッキーの苛立ちが伝わってくる。
表情や仕草で伝わってくるのではなく、感覚として伝わってきているような気がする。
「じゃ、何にがっかりしているの?」
「がっかり? そうか、俺はがっかりしているのか…」
リッキーの内面を知っておかないと、次何をするかわからない。
彼はどんどん知的になっているので、危ない方向に向かうと危険だわ。
「もう一度聞くわ。何にがっかりしているの?」
「…そうだな。以前の俺の世界は酒、女、男、ドラッグがすべてで、キラキラした奴らはクソだが何かすごいものを持ってて、賢く、何かすごいことをしていると思っていた。…だが、調べれば調べるほど、底の浅い守銭奴で、酒、女、ドラッグをやっている。変わりがない。外の奴らはすべてクソだったということだ」
「そうね。人は欲があるから、誰も大なり小なりはあるけど、変わりがないわ」
「俺には情報がなかった。だが、バカな奴らが減れば… おい、聞こえて… …」
リッキーの言葉がミュートされたように小さくなり、周りは真っ白になった。
私が目を開けると、白衣が見えた。
「目を覚ましましたね」とお医者さんが言う。
「はい…。ん? 暑い!」
私はハイテク電気毛布をはねのける。
お医者さんが目を背けた。
ん? あっ。病院の寝間着は前で開けれるようになっている隙間だらけだ。しかもブラは着けていない… 見たわね…
私はハイテク電気毛布を引き寄せた。
「暑!」
「待ってください。ハイテク電気毛布を切ります」
「ありがとうございます」
「落ち着きましたか?」
「はい」
「さきほどの状況をお知らせします。体温の低下が発生し、ハイテク電気毛布が作動したことで意識を失うことはなかったようです。原因が特定できるまでハイテク電気毛布を利用するようにしてください」
「わかりました」
「通常の生活をしていただいて問題ありません。面会を許可しましたので、この後、いらっしゃると思います」とお医者さんは言う部屋から出ていった。
扉の方で話をしている声が聞こえる。
その間に、私は寝間着のズレを直した。しばらくするとノックが聞こえた。
私は「はい」と返事をする。
「大丈夫か?」
「ええ。このハイテク電気毛布があると気を失わずに眠ることができるみたい」
「そうか。睡眠できたからか少し良くなったように見えるな」
「そうかもね」
「PCを使っても問題ないと聞いたが…」と悠人が言いかけたところで扉が開く音が聞こえた。
お医者さん?と思って見ると、佐々木さんと側仕えが入ってきた。
悠人は私を庇うように、佐々木さんと私の間に立ったが、気にしていないようで「天野教授、来てもらうわ」と言う。
「あのう。どこにでしょうか?」
「今は秘密よ」
「俺も行く」
「…そうねぇ」と佐々木さんは悠人をじっと見る。
「条件があるわ」
「何ですか?」
「あなた達、結婚しなさい」
「「はぁ?」」
私と悠人の声が重なる。




