密談 その8
私は声を出さずに『葵さんね』と言う
「そうです。公園で待っていたのですよ」
それは嘘ね。
『葵さんはどうして私がここにいることがわかったの?』
「彩音さんは重要人物ですから、追跡させていただいています」
『ここは、仙台よ? そこまでする?』
「ええ、それほど重要なのです」
『アメリカに来てほしいから?』
「それもありますが、我々の研究所で変化がありまして… 少しご意見が聞きたくて…」
葵さんの研究所で変化か…
NeuraLumeの相互接続されているから、そりゃ変化があるだろうね。
おそらく、葵さんはAvatar社と関連があるんだろうね。
ちょっと探りを入れるか。
『それは、リッキーのこと?』
「Ricky… 彼が…」
あれ? 名前を知らないの? 言い過ぎた?
それとも話がズレてる?
『違った? そっちの変化って何?』
「当初、NeuraLumeを起動して脳情報を入れましたがうまく動作しませんでした。自我がなかったのはご存知ですよね? でも、なぜか徐々に会話ができるようにはなったのです。ですが、基本的には我々にはほとんど会話をしてもらえないで、プローブを使って調べていました」
『プローブって何ですか?』
「プローブは我々が開発したツールで、NeuraLumeの脳の活性位置からNeuraLumeが見ている情報を再現するものです。彩音さんの入院の直前から脳の活動が跳ね上がりました」
佐々木さんが言っていたものかな?
ということは、佐々木さんと葵さんは同じ組織? それにしては情報交換できていないような…
もうちょっと探りを入れるかな。
『そのプローブを使えば、NeuraLumeが見ているものは完全に再現できるのですか?』
「完全には程遠いです。注目している部分ばかりの集まりですし、音もわかりません」
これは、佐々木さんが言っていたものだね。
『それは興味深いわね』
「彩音さんはそう言うと思っていました。我々の活動に興味を持っていただけましたか?」
『興味はあるかと言われれば、興味はあるわ』
「…看護師が来ます。また、外を見てください」
看護師の動作まで把握しているの?
ドアがノックされ、看護師が入ってきた。
「起きてふらつきませんか?」
「大丈夫です」
「ハイテク電気毛布を持ってきました。寝る時は必ずこの毛布を利用してください。食事も用意しました。できるだけ食べるようにしてください」
食事を机に置き、看護師さんはベッドメイクをする。
「ありがとうございます。わかりました」
看護師さんが出ていったので、私は食事をとる。
私、お腹が減っていたんだ…
仮眠をとったおかげで眠気は少し収まっていたが、お腹が満たされると眠気が戻ってきた。
うーん。私は子供か!とツッコミを入れたくなるが、眠気は強くなる。
ハイテク電気毛布? 電気毛布2があるから寝ようかな。
私はカーテンを閉めて、ベッドに入りハイテク毛布に包まる。
これは快適ね。温度が絶妙だわ。
1年中、室温を少し低めにしてハイテク電気毛布を使うと良いかも…
私はベッドに目を覚ました。
ぐっすり眠れたぁー。
ん? ハイテク電気毛布じゃない?
この部屋って、仙台の家よね? でも、なんか少し、現実感がない? 建物に使う言葉じゃないけど、影が薄い。
ハイテク電気毛布を使えば、体温が下がりすぎないと言っていたから、ここには来ないと思っていたけど…
あっ! もしかして、リッキーが座っているかも! と思い、椅子を見るがいない。
「よかった… リッキーがいるとびっくりするものね」
「呼んだか?」
「リッ、リッキー!? 急に現れたらびっくりするじゃない!」
「ここじゃ、時間や空間なんて意味がないんだから、いつでもどこにでも行ける」
周りが変わった。え! 森の上空に私達が浮かんでいる?
「俺はここが好きなんだ」
「ここは?」
「あの山を見てわからないか?」
私はリッキーが指さす方向を見る。
「ハーフドーム? ということは、ヨセミテ?」
「そうだ」




