密談 その4
看護師が入ってきたので、Macを閉じる。
看護師さんには見えていないはずだけど…
「天野さん、このブレスレッドを着けてください」
私は、ブレスレッドを受け取り、左腕につける。
「何ですか? これ」
「体温、脈拍などのデータを無線で送信する機械です。今度体温低下が起きてもすぐに駆けつけます。完全防水ですから、安心して付けていてください」
「なるほど、わかりました」
「天野さん、眩しいのですか?」
「眩しい? 眩しくないですよ」
「サングラスをかけていますよね?」
「ARグラスです」
「ARグラスですか。院内を歩くときは外してくださいね。少しでも足元が暗くなると危険ですので」
「わかりました」
禁止されなくてよかった。
チャットも中断されたし、お手洗いに行くかな。
この部屋って、あらためて見ると、かなり豪華で個室だ。
あの扉はお手洗い?
扉を開けると、トイレとお風呂がある。少し小さいけど、湯船もあるじゃん。
費用のことが一瞬頭に浮かんだが、まっ良いか。
ふと、鏡を見ると疲れた私の顔があった。
うーん。目の下にくまがあるじゃん。
徹夜明けみたい…
NeuraLumeの中にいる間は寝ていないのと同じなのかな?
もし、今後、寝るたびにNeuraLumeの中に入るとなると、睡眠できないことになるじゃない?
えっと、睡眠で体温が変化するわよね。
就寝後から明け方にかけて最も低くなり、起床に向けて上昇するだっけ?
さっき、看護師さんが体温低下したら駆けつけると言っていたけど、通常の範囲外なら駆けつけるのよね?
体温低下するとNeuraLumeの中に入るのか、NeuraLumeの中に入ったから体温低下するのかわからないけど…
暖かくして寝るが一番よね。
バスタオルもあるし、お風呂タイムよね。
私はお湯を張り、湯船に浸かる。
はぁ〜。極楽ね〜。
なんか、外でバタバタしている音がする?
急にお風呂の扉が開けられ、「大丈夫ですか!」と看護師さんが飛び込んできた。
急展開で私は間抜けにも「はい…」と答える。
看護師さんは私の脈を取り、ブレスレッドを外した。
そして、看護師さんはお風呂場の扉から顔だけ出して何か言っている。
私、まずいことしたのかな…
看護師さんが扉を閉め、私と看護師さんだけになった。
「もしかして… ブレスレッド壊れました?」
「はい」
「完全防水なんですよね?」
「そうです。シャワーは問題ないですが… 失礼します」と言いながらお湯に手を入れる。
「これ、40°Cを軽く超えていますよね… 熱くないですか?」
「え? そうなのですか? いつもは熱いお風呂は苦手なんですけど、気持ちいいです」
「そうですか… 湯船から出てください。ふらつくかもしれませんので、手すりを握ってください」
え? すぐに出ろってこと? せっかくのお風呂タイムが…
私は看護師さんに渡されたバスタオルで体を拭いて、渡された寝間着を着ると、外に引っ張り出された。
そこには、お医者さんや看護師が5人も居た。
私はベッドに戻され、血中酸素濃度や血圧や聴診器での診察など一通り調べられた。
そして、新しいブレスレッドが付けられた。
お医者さんはタブレットを見てから、ベッドサイドに立つ。
なんか威圧感があるのですが…
「天野さん、こちらからの連絡不足でした。入浴は控えてください。シャワーを利用する際は看護師に連絡してからにしてください。水とお茶は自由に飲んで問題ありません。食事は当院が提供するもののみ可能です。その他のものは口にしないでください。何かあればそのボタンを押してください」
連絡不足だったからか、こと細かく説明された。
「はぁ…」
お医者さんが出ていったので、圧から解放された気分…
大人しくしておくか… 私はベッドで横になった。




