仙台へ その3
「彩音、起きろ。ランディングだ」
「ん? あっ。到着ね…」
私は座席の背もたれを戻し、シートベルトを確認する。
プライベートジェットは小さいからか、揺れる時は大きな旅客機より大きい気がする。
「ちょっと揺れるわね」
「あぁ。風が少し強いらしい。少し前よりマシだがな」
「少し前?」
「彩音は寝ていたから知らないだろうが、かなり揺れたんだ」
「かなり揺れたぐらいじゃ済まされないぞ。あれほどは私も初めてだったぞ。よく寝ていられたな」
「そんなに凄かったの?」
「シートベルトがなかったら、天井に体がぶつかっていただろうな」
「そうなんだ…」
なんか、私が超鈍感みたいじゃない…
「酔い止め薬のジフェニドールは眠くなりにくいはずだが… 三半規管、小脳、脳幹は関係深い。それが関係しているのか?」と佐々木さんが呟く。
確かジフェニドールは平衡感覚を司る三半規管や内耳の血流を改善し、異常な神経の興奮を抑えるのよね…
確かに、三半規管は小脳と脳幹と深く関係しているわね。
私は長時間のフライトでも寝れないのに、寝たのはどうしてなんだろう?
それに、私は乗り物酔いにはならないのに、体質が変わった?
「ねぇ、悠人」
「なんだ?」
「私が寝ていた間、ハイテク毛布は作動した?」
「作動していない」
タブレットを確認しなくても即答? 悠人は私を心配して起きていてくれたのかな。
ありがとう悠人。
「ありがとう」
「ん? あぁ」
ハイテク毛布が作動しなかったし、NeuraLumeに入った記憶もないから、今回の睡眠で、NeuraLumeに入らなかったと考えるのが自然よね。
今までとの違いは酔い止め薬になるわね…
これは、追試が必要ねと考えていると、車輪が滑走路に少し強く接触したようで、体が少し上に浮くが、問題なく着陸したようだ。
プライベートジェットが止まり、降りるとすぐにヘリに移動…
入国審査はしているの?と思うぐらいだ。
ヘリって揺れるよね…
それより、側仕えにもらった酔い止め薬が特殊だったかもしれないから、確保しておく必要があるわね。
私は側仕えに向かって「さっきの酔い止め薬ってまだありますか?」と聞いた。
「はい。どうぞ。酔い止め薬は約6.5時間で血中濃度が半減します。時間的にも、一錠服用された方が良いかと思います」
「ありがとう」
私は錠剤と水をもらったが、錠剤を飲むふりをして水だけを飲んだ。
「ハイテク毛布をかけておけ」
「ありがとう… なんか、ハイテク毛布をずっと持ち歩くなんて… ブランケット症候群の子みたいじゃない?」
「ブランケット症候群? 毛布を持ち歩く症状か?」
「まぁ。そうね。幼児が特定の毛布やタオル、ぬいぐるみなどを肌身離さず持ち歩き、それに触れることで精神的な安心感を得ることよ」
「なるほど。ライナスだな」
「ライナス?」
「スヌーピーに出てくる安心毛布を持ち歩くキャラクタだよ」
「ふーん」
「彩音が小さい時、いつも赤いクマのぬいぐるみを持ち歩いていたじゃないか?」
「赤いクマのぬいぐるみ? そんなぬいぐるみあったかなぁ。赤いクマって特徴があるから、覚えていると思うけど…」
「そういえば、急にぬいぐるみを持ち歩かなくなったな。いつからだ?」
「持ち歩いていたことも覚えていないんだから、知るわけないでしょ?」
「ま、そうだな。それより、眠くならないのか?」
酔い止めの薬を飲んでいないのだから、眠くなるわけないんだけどね…
「さっきまで寝ていたからか、眠くならないわ」




