仙台へ その1
「悠人、質問はもう少し慎重にした方がいいぜ。Saraが戻ってくるぜ」
「…」
リッキーは私がNeuraLumeの中に入っていない状態でも私の考えが読めるの?
リッキーに私の考えが読まれるし、たぶんそこらじゅうに盗聴設備があるだろうし、気を使わないといけないことばかりじゃない!
面倒ね… と思っていると、佐々木さんが入ってきて「仙台行きは許可されたわ。20分後に部屋に迎えに行くので準備して」と言った。
「20分後?」
「行くぞ」
はぁ。仙台に行きたいと言ったのは私だけど、20分後って慌ただしすぎる…
『そうだな』
『リッキー、佐々木さんが仙台行きを上司に納得させた理由はわかる? カメラで見ていたのでしょ?』
『わからない。こちらから見えない部屋の中で話し合われた』
『そっか…』
「彩音、調子が悪いのか?」
「え? だっ、大丈夫よ」
「本当か?」
「本当よ」
『うーん。切り替えが難しいわね…』
『人はマルチタスクに向かないからな』
『短い時間で一つのタスクを終わらせて、次のタスクへ切り替えているだけだものね』
『あぁ。だが、俺はマルチタスクができるぜ』
『それは切り替えが上手ということでしょ?』
『いや、最近気づいたが、マルチタスクができる。今もSaraを監視しながら、お前と話をしている。足元に気をつけろ』
『え?』
私はつまづいて前のめりになるが、悠人が支えてくれた。
「大丈夫か? 仙台行きは伸ばしてもらった方がいいんじゃないか?」
リッキーと話していて気が散っていたとは言えない…
「ダメよ。飛行機で休むわ」
「そうか…」
悠人は私の腕を掴んだまま、部屋に戻る。
心配してくれているのはわかるけど、連行されているみたいじゃない…
「部屋に戻ってきたが、用意することもないな」
「何言っているの!?」
「何が必要なんだ?」
「日本に戻るのよ? Tシャツにトレーニングパンツでウロウロできないわ」
「日本でもおしゃれをしていないだろ? 変わらないだろ?」
「全然違うわよ!」
「そうか… 仙台での確認が終わったら戻される可能性が高いぞ」
「だとしても、着替えない理由にはならないわ」と言いながら、私はクローゼットにある服を取り出し、洗面所に向かう。
悠人を見ると、面倒だからここで着替えろよと言いたそうに見える。
でも、それはちょっと無理!
ふと、洗面所の鏡を見ると私が見える…
『もしかして、リッキーも見えているの?』
リッキーから、回答がない。
見えているのね。
『見たら、殺す!』
『お前の裸なんぞ興味がない。さっさと着替えろ』
リッキーが本当に私の裸に興味がないことが感覚でわかる… うーん。それはそれで腹がたつ… なんか釈然としない…
私は着替えをして部屋に戻ると、悠人も着替えが終わって部屋をチェックしている。
ふと、ベッドを見ると、着ていたTシャツにトレーニングパンツが畳まれて置いてある…
私の手にあるTシャツにトレーニングパンツは畳んでいない…
はぁ。私の女子力…
うーん。悠人は気遣いもできるし、女子力も高い。
私はTシャツにトレーニングパンツを畳みながら、ちょっとまずいわねと思う。
『俺から見たら普通だが、日本人女性というカテゴリで考えるとダメだな』
『うるさいわよ。いつもは違うんだから!』
『悠人は気にしていないようだから、お前はこんなものと思われているんだろうな』
『リッキーの言っていることは正しいと思うけど… 正しいことは痛いのよ!』
『ふっ。がんばれ』
視線を感じると思ったら、悠人がじっとこちらを見ている。
「どうしたの?」
何か悠人が言おうとした時、ドアがノックされた。
悠人がドアを開けると、佐々木さんが「行くわよ」と言って歩いて行くので、慌てて追いかける。
「佐々木さん、部屋はあのままでいいのですか?」
「問題ない」




