リッキーの復讐?
私達がカフェに行くと、佐々木さんと側仕えがいた。
「おはようございます」
「おはよう。寝不足が解消できたようね。顔色が良いわ」
「はい。昨日はよく眠れました」
「音羽教授が一緒で安心できたからじゃないか?」
うーん。佐々木さんになんて答えるのが正解? 否定するのは子供っぽいか… さらっと大人として流すが正解だよね。
「そっ、そうかも知れません」
うっ。言葉に詰まって、さらっと言えなかった…
佐々木さんが私達をじっと見て、指で机をトン・トン・トン・トンとゆっくりしたリズムで叩く。
私は何か苛つかせたのかな?
「あのう。何か気に触ったことを言いましたか?」
「単刀直入に言うが… 天野教授、体温低下時にNeuraLumeと繋がっているのではないのか?」
うーん。どう答える?
「…わかりません」
「わからないというのは? とぼけているのか?」
「そうじゃないです… 夢かもしれないと思ったからです」
「夢?」
「fMRIも付けていないのに、NeuraLumeと繋がっているなんて論理的におかしいでしょ? 私が体温低下時に見たものは夢と考えるのが普通だと思います」
「NeuraLumeと繋がった夢は見たんだな。なぜ言わなかった?」
「研究対象のことは四六時中考えるものです。NeuraLumeのことを夢で見てもおかしくないでしょ?」
「わかったわ… では、昨晩はNeuraLumeの夢を見たのか?」
「昨晩はぐっすり眠れたので夢は見ていません」
「体温低下も起きず、ハイテク毛布を使わなかったようだな」
「はい。体温低下はなかったみたいですね。いつ体温低下が起きるか謎ですね」
「そうだな…」
「佐々木さんはどうして、私が体温低下が発生しているときにNeuraLumeと繋がっているのではないか?と考えたのですか?」
「天野教授が低体温になっている期間は必ずNeuraLumeの稼働が活発になっている。それに、その期間はNeuraLumeの見ている画像に天野教授の顔と思われるものが頻繁に登場する」
「なるほど…」
「天野教授、昨日はfMRIを利用していないが、今日からfMRIでNeuraLumeに接続してもらいたい」
私は佐々木さんが少し焦っている? ような気がした。
「fMRIで接続して同期すると、NeuraLumeに変化が現れることを期待しているかもしれないが、彩音がまた昏睡するかもしれない。危険だ」と悠人が言う。
「体温を調節しながら、fMRIを利用すれば危険性は減るわ。NeuraLumeの調教を早く終わるでしょ?」
「どうして、fMRIの接続を急いでいるのですか?」
「昨晩、交通事故が発生した。車に乗っていた人は即死だったわ」
唐突な話しの変更ね…
交通事故は自動車の自動運転が普及し、激減しているが0ではない。
車の整備不良もあるし、自分で運転する人も残っているので、なくなりはしないだろう。
ただの交通事故じゃないなく、NeuraLumeというかリッキーが復讐したい相手だったのかな?
私は悠人はどう考えているのだろう?と思い、悠人をちらっと見たが、悠人は佐々木さんに続きの言葉を待っているようだった。
佐々木さんは私と悠人を見て、自分のこめかみを指でトントンと叩いている。
どこまで公開すべきか考えているのかな?
「…自動運転のプログラムが改変されていたわ。どう改変されていたのかは今後の調査が必要だけどね」
「改変ですか… どうして佐々木さんが私達にその話をするのですか?」
「それは…」
「それは?」
「事故はNeuraLumeが関係していると思われる」
ま、そうだろうね。NeuraLumeに関係ない話しだったら、びっくりするよ。
リッキーが事故を起こして、復讐を果たしたということかな… 私は悠人を見る。
悠人も私をちらっと見てから「NeuraLumeはネットワークに接続していないのに、どうしてNeuraLumeが関係しているのと考えたのですか?」と言う。
「…勘だ」
「カン? 直感? 理屈ではない感覚的な判断の勘ですか?」
佐々木さんは勘なんて信じないと思っていたので、ちょっと意外…
勘と言い切るのだから、論理的に説明はしてくれないのだろう。
「調教を急いでくれ」
佐々木さんが立ち去ろうとするので、私は慌てて呼び止めた。
「佐々木さん、佐々木さんに連絡を取るにはどうしたらいいですか? チャットボットに佐々木さんへの連絡方法を問い合わせたのですが、佐々木さんが登録されていませんでした」
「知っております。佐々木を登録しておきました」と側仕えが言い、立ち去っていった。
うーん。すべてのことが筒抜けと思ったほうが良さそうね。




