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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第1章 腐敗した世界の魔女狩りは
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【38】After

事情聴取は案外あっさりと、淡白に終了した。ノストは抵抗することなく聞かれたことを洗いざらい吐き出すように。滞りなく彼女の口から情報を抜き取っていった。


「お前、なぜそこまでしおらしく素直に話すんだ?先とは比べ物にならないほど弱々しいといえるが」


しかし、ノストは無表情でこちらを睨みそのまま続けた。


「今更抵抗をしたところでわたくしは解放されないじゃないですか?それに、もういいんですよ。わたくしがどう足掻いたところで結果は変わらない。知っていますか?この世界の事象全て。結果が決まっているのです。決まっていることにどう抗って無理なこともありますわ」


彼女の表情に曇りがさして、ライトはノストの襟首を掴んだ。シルヴィアはそれを無言で見つめて。


「ならば、お前はオレとの戦闘において負ける気で臨んでいたというのか?」


ノストがそこで唇を噛んで言葉を濁した。


「……」

「そういう事だ、決まっているものなどありえない」


掴んでいた襟首を離したライトはノストと一定距離を置いてまた話し始めた。


「お前の処置で迷っていることがあるのだが。青軍に任せまるか、協会に任せるか。お前はどちらがいい?」

「そこにわたくしの選択権はあるのでしょうか?」

「一応、選ばしてやるぞ。ただオレは協会側の方がいろいろと良いと思うがな。多分……」


そこまで言ってライトは後方から聞こえた声に振り返る。変わらない彼らを見て頬を緩まして。


「遅かったな、エイジ」


エイジとトオリが顔を出してこちらに歩み寄ってくる。2人は少し複雑な表情を浮かべたが、それも一瞬で誰も気づかない。


「地下室にアレンさんが倒れてて、いろいろしてたら遅くなった」


そう言ったのはエイジで、書類やら何やらを提示した。自慢げに見せてきたエイジにライトは苦笑し。


「あぁ、お疲れ様」


と一言労いの言葉をかける。しかし、エイジはそこに座ってこちらを無表情で見つめるノストに視線を向けた。そして、口を開く。少しの怒気でエイジの瞳が揺らいだ。


「2つ、質問をいいか?」


ノストの顔色を伺って、そのままエイジは彼女に対峙する。声色を変えずに、だが彼にしては冷たい。


「お前がこれの記入者ということに間違いはないな?それでは、それを前提として話を進める。1つ目、これを1人で研究したことに間違いはないか?2つ目、ここに書いてあること、全て本当の事実か?」


エイジの、書類を掴んでいた手に力が入る。トオリはシルヴィアの方に駆け寄るも、表情はエイジと同様に。冷たくそして動揺に揺れていた。ノストは重たい口を動かして少しの微笑を浮かべた。


「もちろんですわ。わたくしがそれの研究者です。5年前に地下室にこもってそれらの研究を開始しました。まず最初に取りかかったのは、力の根源たる天使と悪魔についての研究です。傷つけたらどうなるのか、それを解き放てばどうなるのか。そして見つけました。天使を黒に染める方法を」


そこで区切ったノストの言葉が止まることはない。


「次に取りかかったのは持続可能な力の保持についてです。天使、悪魔において。潜在的に持つ人間は別として。まずは定義を整理しました。天使は対価を払わずとも力を得ることが出来る。しかし、それは最低限の自己防衛の力である。対して悪魔は対価を支払い甚大な力を手に入れる。その対価の重みも含めて。さて、強力かつ持続可能な力の開発をどう進めれば良いか。わたくしも悩みました。そして組織からの仕事は絶えずわたくしの元に届く」


そう言ってノストはシルヴィアとトオリに目線を向ける。


「魔女の見つけ方はとても簡単です。瞳の色が変化する。ですよね、そこの魔女さん」


シルヴィアが無言で視線を下ろす。ノストは姿勢を戻して単調に言葉を繋げていった。


「わたくしは、魔女を殺しました。最初の方は仕事として必死に取り組んで、捕縛するだけでした。しかし、研究の対象として彼らの解剖を実施し全てをさらけ出すために見極めて。そして、たどり着いたのです。全ては犠牲と対価で成り立っているということに」


冷たく、心ここに在らずの女は口調を変化させることなく。


「そこからは、以前よりも深く掘り下げて研究に没頭しました。研究には魔女の器が必要であったため多種多様な薬品も開発し、着々と段取りを進めていったわけですが。そして研究対象は、大幅に範囲が広がって悪魔や天使だけではなく対象者までに及んだわけです」


そこまで述べたノストはすぅっと視線をエイジに戻して。狂気に近しい笑みを貼り付けて返答をした。


「だから、そこに記したことはわたくしが5年の月日をかけて出した試行錯誤の結果です。わたくしが出した答えですからそこに偽りなど記していませんよ。ですから全てが真実です」


シルヴィアの糸がノストの手首を縛り上げて立ち上がらせる。彼女はなにか抜け殻のようになってもうそこに自我が存在しないようだった。シルヴィアがノストの背後に立つ。


「抵抗なんてしませんよ。そこまで愚かではありません」


冷たく吐き捨てた言葉と共に冷たい足取りを踏んでゆく。


「アレンの所に彼女を連れていく。それでいいわね?」


他3人にからの意見を求めてシルヴィアはノストを押した。彼らの同意に頷いてシルヴィアはノストに声をかけた。


「君は、もう自由勝手に行動を起こせない。だけれど、その情報力と研究においての腕を見込まれて今後はこの組織の裏側として働くことになるでしょうね。多分お咎めはその程度だ。有能な人材を潰すようなマネはしないでしょうから」


シルヴィアの声にノストは、前方の光に足を運んだ。



◇◇◇



「お疲れ様」

「マジ疲れたわ」

「あぁ」

「お疲れ様でした」


順にシルヴィア、エイジ、ライト、トオリだ。全ての事が済んでシルヴィアとライトに下されていた依頼は解決した。解決というと若干ニュアンスが異なってくるかもしれないが、犯人の捕縛に成功し情報収集も無事終えたことに変わりない。


まぁ、それも例外を除けば無傷と言えるのか……そんなことを考えているとシルヴィアが、こちらに自己主張強めに圧をかけてくる。


「まぁ、食べるか」


食事の方に目を向けてライトはその場を凌いでみせる。現在、食堂で夕食をとっているところだ。


「君は嫌味を言っているのかしら?」


シルヴィアからジリジリとした視線が向けられるのでライトは彼女の下に目を向ける。そうすれば理由も直ぐに分かるものだ。彼女の食事はレバニラ1色。シルヴィアの表情もどんよりとした曇りらしい。


「これをあげるから、機嫌を直してくれ」


シルヴィアの口元に野菜を運ぶライト。シルヴィアは、髪を耳にかけてもぐもぐと満足そうにそれを食べる。ライトの失笑と残されている2人の苦笑いは、ある意味違う部類のものではあった。


「でもあれだな。オレたちがああやって、この協会内での残虐者を裁いたところでそこら辺を歩くアイツらはそれを知らない。それに、アイツらは関係ないということで収まっちゃうんだよな」


エイジが自分のチキンをフォークで突き刺して周囲の環境に目配せした。しかし誰しも闇は持っていて、当然それは秘密である。だからそれ以上は何も言わないことが道理だ。


「それでも、いろいろ知れて私はよかったですよ。例え彼らがそういうことを知らなくて能天気に生活していたとしても、それは平和の印ですし」


トオリが視線を泳がせることなくニコリと真っ直ぐに笑みを浮かべた。一つ一つのことが自分と向き合う機会に繋がる。そういうことだ。


「だが、この世界は傾いている。狂気も悪意も絶えないのが現実だ。それに巻き込まれれば嫌でも迎え撃たなければならない」


その言葉を聞いたシルヴィアが胸内から手紙を見せた。


「だからこれが終わると次がある」


ライトの方にそれを渡したシルヴィアはレバニラを口に運びながらトオリとエイジの服を見た。


「その白服ともお別れだ」


トオリとエイジが驚きに満ちた表情で、目を見開いたのを見てシルヴィアは固い頬を緩めた。そして気丈に振舞って彼女らしく言葉を進めた。


「ライト、私たちは本来この場にいることを許されない立場だ。そして、私たちがここに入れるのはカモフラージュとそこの2人のおかげ。それと、アレンが上に報告しておらず私たちの情報不足があったからこそだ」

「だから、オレたちがずっとここにいることはありえない。そして新しい依頼が来たのなら、次に行くほかないということか。理解した」


2人の会話にトオリは明るく振舞って。エイジは空の笑みを浮かべて。彼らに言葉をかけた。


「そ、うですか。そうですよね、会えましたけどヴィアとずっと一緒にいれるわけじゃないし。ライトとともお別れですよね。いや、私がついていくことも……」

「ビックリしたけど、それもそうだな。いろいろありすぎて、忘れてたわ」


2人とも動揺しているのは目に見えている。だがシルヴィアもライトも目を合わせて頷いた。


「じゃあ、お開きにしましょうか」

「そうだな」


食べ終えた2人がお盆を持って席を立つのでトオリとエイジはポカンと数秒口を開けたまま固まってしまった。だが、慌てて我に返った2人は彼らに置いてかれないように席を立って彼らに続く。


「「おやすみ」」


そして早々と別れた男女に唖然顔を見合わせるトオリとエイジ。


だが、シルヴィアもライトも何も考えなしに行動を起こしたわけでもなかった。

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