金色の光!スキル『特別手当』!!
「た、助けてくれ勇者様……! このままじゃ、俺たちの村の若者が全員死んじまう……!」
事務所に駆け込んできたのは、王都から離れた鉱山町からやってきたという老村長だった。
老村長が差し出した現場の状況報告書に、俺は目を通す。
『契約鑑定眼』を通してみると、そこには目を覆いたくなるような惨状が数字となって浮かび上がった。
『現場:グラン鉱山ダンジョン(魔導鉱石採掘場)』
『支配者:悪徳領主バロン子爵』
『現場危険度:S/労働環境評価:測定不能(極度のブラック)』
『事故発生率:87%/平均労働時間:1日18時間(休日なし)』
「1日18時間労働……!? 補強もされていない危険な鉱山で……!?」
メルティが悲鳴を上げた。
「領主のバロン子爵が、魔導鉱石の増産を命じてな……。安全対策の予算を全て自分の懐に入れ、崩落事故が起きても『代わりはいくらでもいる』と作業を強制しているんだ……」
「許せません……! 人命軽視どころか、完全な犯罪(構造的過失致死罪)です!」
胸の中で激しい怒りの炎が燃え上がる。
かつて自分が潰されかけたブラック企業の悪夢が、そして今苦しんでいる現地の人々の姿が重なった。
「メルティさん、ロイ君、リナさん。出張監査(現地乗り込み)の準備をしてください!」
「「「はいっ!!」」」
事務所ランクが『Rank 2』に上がったことで解放された新機能――持ち運び可能な『移動式出張受付デスク』を馬車に積み込み、俺たちは急遽、グラン鉱山へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
現地に到着すると、そこは地獄のような光景だった。
痩せこけた鉱夫たちが、埃と泥にまみれながら巨大なつるはしを振るっている。いつ崩落してもおかしくない亀裂の入った岩盤の下で、だ。
「おい! 手を休めるな愚か者どもめ! 今月のノルマに達しなければ食事抜きだぞ!」
豪華な服を着た太っちょの代官が、ムチを振るいながら叫んでいる。
「そこまでだ!!」
俺の声が、殺伐とした採掘現場に響き渡った。
「な、なんだお前たちは!? 領主様のお膝元で何をしにきた!」
「私は王立・ホワイト冒険サポート事務所代表、アラタです。本日付で、当現場の労働安全衛生監査を実施します!」
「あァ!? 監査だと!? 冒険者の分際で領主様の経営方針に口を挟む気か! 叩き出せ!」
代官の合図で、武装した領主親衛隊の兵士たちが一斉に剣を抜き、俺たちへ襲いかかってきた!
「危険です、アラタさん!」
ロイが剣を構えようとするが、俺は手をかざして制した。
「慌てないでください、ロイ君。これがランクアップで手に入れた新しい『福利厚生』の力です!」
俺は腰のツールポーチから、新解放されたスキルを発動した!
「――スキル発動!『福利厚生:特別手当(現場能力一時底上げ)』!」
ヴォォォォンッ!!
俺を中心として、圧倒的な黄金色のオーラがロイ、リナ、そして周囲の疲弊した鉱夫たち全員に波及した!
『――【特別手当】の発動を確認。業務危険手当として、全作業員の物理防御力・筋力・移動速度を一時的に【300%増加】させます!』
「う、うおぁぁぁぁっ!? 体の中から力が湧き出てくる……!?」
つるはしを持っていた痩せた鉱夫の手が、黄金色の光に包まれる。
襲いかかってきた親衛隊の鋭い剣が、鉱夫たちの皮膚に触れた瞬間――
キンッ!!
まるで鋼鉄にぶつかったかのように、兵士たちの剣が真っ二つにへし折れた!
「な……なにィ!?? 鉱夫の皮膚が剣より硬いだと!?」
兵士たちが目を剥いて腰を抜かす。
「特別手当(危険手当)が支給されている間、作業員はあらゆる危険から防護されます」
俺は冷然と代官を見下ろした。
「さあ……労働者の命を軽視したツケを、支払ってもらいましょうか!」
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