改革の勇者
「ひ、ひえぇぇぇっ!? 剣が……兵士たちの剣が折れたぁ!?」
代官は自分の目が信じられないといった様子でガタガタと震え、腰を抜かして泥の中にひっくり返った。
「ば、化け物どもめ! 全員まとめて叩き潰せ!」
なおも往生際悪く叫ぶ代官に応じ、奥の坑道から巨大な岩石の魔物――『ガーゴイルゴーレム』が地鳴りを立てて現れた。領主側が現場の監視と威圧のために配置していたBランクの魔獣だ。
『Target:ガーゴイルゴーレム/危険度:高』
『契約鑑定眼:岩石装甲・物理耐性90%』
「ははは! 鉱石を採掘する軟弱なつるはしごときで、その岩の巨体が砕けるものか!」
勝ち誇る代官。だが、俺は冷静に『特別手当』が適用された鉱夫たちに指示を出した。
「みなさん、恐れる必要はありません。特別手当により、皆さんの筋力と採掘スキルは通常の3倍に跳ね上がっています。さらに……『契約鑑定眼』で割り出した、そのゴーレムの【構造上の亀裂(最弱点)】はここです!」
俺が指し示したのは、ゴーレムの右膝の継ぎ目だった。
「ロイ君はバリアの後ろからサポート! 鉱夫のみなさん、あのポイントへ向かって、いつもの採掘手順(5S手順)通りに一撃を入れてください!」
「お、おうっ! やってやるぞぉぉぉっ!」
今まで虐げられていた鉱夫たちが、黄金のオーラを纏って一斉に躍り出た。
彼らが振るった使い古しのつるはしが、正確にゴーレムの弱点へと叩き込まれる!
ズドォォォォンッ!!!!
激しい破砕音が響き渡り、物理耐性90%を誇るはずの巨大な岩石ゴーレムが、まるで熟しすぎた柿のように一瞬で粉々に砕け散った!
「「「うおぉぉぉぉっ!! 勝ったぁぁぁぁっ!!」」」
歓声が鉱山全体に地鳴りのように轟く。
「な……なんということだ……! 現場の作業員たちが、一瞬で魔獣を討伐してしまった……!?」
メルティが驚愕のあまり、手に持っていたメモ帳を落とした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数時間後。
連絡を受けて駆けつけてきた悪徳領主バロン子爵と、拘束された代官を前に、俺は出張受付デスクから打ち出した一枚の『監査勧告書』を叩きつけた。
「バロン子爵。安全対策費の横領、過重労働による人命軽視、および私兵を使った不当な暴力行為。すべて『王国労働適正化法』および公序良俗に反する重大な違法行為です」
「くっ……! たかだか冒険者サークルの分際で、この私に説教する気か! 私は子爵だぞ!」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らすバロン子爵。
「ええ、ですから『王立』の権限で参りました」
俺の隣で、メルティが王家の紋章が入った書状を掲げてみせた。
「王都での実績により、当事務所は王国直属の公的機関として認定されております。バロン子爵、あなたの身柄と鉱山の管理権は、本日をもって王国聖騎士団へ移送・接収となります!」
「な……なんだとぉぉぉっ!?」
崩れ落ちるバロン子爵と代官。
こうして、長年人々を苦しめてきたグラン鉱山のブラック労働体制は、一夜にして完全に解体されたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
後日。
ホワイト化されたグラン鉱山は、危険手当と適切なシフト制が導入され、安全で活気あふれる『モデル現場』として生まれ変わった。
そして――
――ファンファンファンファン、ファンファンファーレ!
頭の中に、どこまでも晴れやかで重厚なファンファーレが響き渡った。
『――大型案件【グラン鉱山労働環境改革】の完遂を確認!』
『膨大な実績ポイントを獲得しました!』
『【事務所ランク】が【Rank 2】から【Rank 3:広域労働改革本部】へ昇格しました!』
『ランクアップ報酬として、以下の「福利厚生(チート機能)」が開放されます』
『1. 【有給休暇】の付与対象が「自パーティー」から「傘下・提携組織全体(広範囲)」へ拡大!』
『2. 【事務所設備:メントレ&フィットネスサロン】の拡張!』
『3. 新スキル【解雇通告(ブラック存在の完全追放魔法)】の獲得!』
(うおぉぉぉっ! また一気にランクが上がって、ヤバそうな新スキルまで解禁されたぞ……!?)
鉱山の人々の笑顔と、圧倒的な達成感に包まれながら、俺の「異世界労働改革」はさらに大きなステージへと突き進んでいくのだった――!
(第2幕・完)
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