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ホワイト冒険者事務所

「ひ……ひぃぃぃっ! わ、分かった! 契約は解除する! 装備代の過払い分も返すから、頼むから警察(聖騎士団)だけは勘弁してくれぇぇっ!」


 床にひれ伏し、涙目になりながら過払い金の詰まった袋を差し出してくるドグラ。

 俺はそれを冷静に受け取り、中身の金額を素早く検収(カウント)した。


「よし、相殺手続き完了です。領収書を発行しておきますね。……ではロイ君、リナさん、行きましょうか」


「「は、はいっ……!」」


 呆然とする二人を連れて、俺たちは晴れやかな顔で悪徳ギルドを後にした。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 それから数日後。


 王都の大通りから一本入った日当たりの良い場所に、小さな看板が掲げられた。


『王立・ホワイト冒険サポート事務所(相談窓口)』


 王様とメルティに掛け合い、今回獲得した報酬と王国の予算を使って立ち上げた、冒険者たちのための新たな拠点だ。


「すごいや勇者さん! 明るくて綺麗な事務所……! 装備の点検コーナーまである!」


「温かいスープと休息スペースまで用意されてるなんて……夢みたい……!」


 ロイとリナが、新設された事務所の中で目を輝かせている。

二人は正式に我が事務所の「第1号・専属冒険者(正社員)」として契約を結び、適正な基本給と安全な装備、そして「完全週休2日」の待遇を手に入れたのだった。


「ふふん、勇者様! 窓口の受付業務は、この私メルティにお任せください!」


 メルティも制服の腕をまくり、気合十分だ。


「頼みますよ、メルティさん。……さて、それじゃあ本日の業務を開始しますか」

 俺が事務所のドアを開けると――


「あ、あの……! ここに行けば、無理なノルマなしで安全に働けるって聞いたんですが……!」


「うちのパーティー、リーダーのパワハラが酷くて……相談に乗ってもらえますか!?」


「危険なダンジョンの解体作業、適正価格で発注したいんだが!」


 ドアの外には、噂を聞きつけた冒険者や、困り果てた依頼人(市民たち)の大行列ができていた。


「な、なんですかこの行列はぁぁぁっ!?」


 メルティが悲鳴を上げる。


「ハハハ、大盛況ですね」


 俺は腕まくりをし、頼もしい笑みを浮かべた。

 戦うことしか知らなかったこの異世界に、新しい風が吹き始めている。

 ブラックな労働環境を潰し、誰もが安心・安全に働ける『ホワイトな世界』を作るために。


「よし! 焦らず順番にヒアリングします! みなさん、まずは『相談票』の記入からお願いしますね!」


 元・無職のアラタによる、異世界労働改革(プロジェクト)?は、まだ始まったばかりだ――!


 え?

 魔王討伐?

 ………………?


(第1幕・完)

毎日18時30分更新!

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