ホワイト冒険者事務所
「ひ……ひぃぃぃっ! わ、分かった! 契約は解除する! 装備代の過払い分も返すから、頼むから警察(聖騎士団)だけは勘弁してくれぇぇっ!」
床にひれ伏し、涙目になりながら過払い金の詰まった袋を差し出してくるドグラ。
俺はそれを冷静に受け取り、中身の金額を素早く検収した。
「よし、相殺手続き完了です。領収書を発行しておきますね。……ではロイ君、リナさん、行きましょうか」
「「は、はいっ……!」」
呆然とする二人を連れて、俺たちは晴れやかな顔で悪徳ギルドを後にした。
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それから数日後。
王都の大通りから一本入った日当たりの良い場所に、小さな看板が掲げられた。
『王立・ホワイト冒険サポート事務所(相談窓口)』
王様とメルティに掛け合い、今回獲得した報酬と王国の予算を使って立ち上げた、冒険者たちのための新たな拠点だ。
「すごいや勇者さん! 明るくて綺麗な事務所……! 装備の点検コーナーまである!」
「温かいスープと休息スペースまで用意されてるなんて……夢みたい……!」
ロイとリナが、新設された事務所の中で目を輝かせている。
二人は正式に我が事務所の「第1号・専属冒険者(正社員)」として契約を結び、適正な基本給と安全な装備、そして「完全週休2日」の待遇を手に入れたのだった。
「ふふん、勇者様! 窓口の受付業務は、この私メルティにお任せください!」
メルティも制服の腕をまくり、気合十分だ。
「頼みますよ、メルティさん。……さて、それじゃあ本日の業務を開始しますか」
俺が事務所のドアを開けると――
「あ、あの……! ここに行けば、無理なノルマなしで安全に働けるって聞いたんですが……!」
「うちのパーティー、リーダーのパワハラが酷くて……相談に乗ってもらえますか!?」
「危険なダンジョンの解体作業、適正価格で発注したいんだが!」
ドアの外には、噂を聞きつけた冒険者や、困り果てた依頼人(市民たち)の大行列ができていた。
「な、なんですかこの行列はぁぁぁっ!?」
メルティが悲鳴を上げる。
「ハハハ、大盛況ですね」
俺は腕まくりをし、頼もしい笑みを浮かべた。
戦うことしか知らなかったこの異世界に、新しい風が吹き始めている。
ブラックな労働環境を潰し、誰もが安心・安全に働ける『ホワイトな世界』を作るために。
「よし! 焦らず順番にヒアリングします! みなさん、まずは『相談票』の記入からお願いしますね!」
元・無職のアラタによる、異世界労働改革?は、まだ始まったばかりだ――!
え?
魔王討伐?
………………?
(第1幕・完)
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