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魔王(トップ・オブ・ザ・ブラック)

「……報告は以上です、アラタ長官」


 退職代行によって救出されたリュミエラと、強制有給から目覚めてすっかりホワイト化した元第一軍団長ゴルゴダが、長官室で頭を下げていた。


「ゴルゴダさん、魔王城の構造と内部の勤務シフトデータ、提供ありがとうございます」


「いや、こちらこそ助かった……! あのまま魔王城でサビ残を続けていたら、今頃間違いなく血管が破裂していた。俺は第二の人生として、王都で『悪魔風かき氷屋』を開くことにしたよ!」


「素晴らしい第二の人生(セカンドキャリア)ですね。応援しています」


 俺は笑顔で送り出し、かばんに『魔王城緊急立ち入り監査命令書』をセットした。


「さて……第一軍団も第三軍団も無力化(転職)したとなれば、残るは魔王城の本丸のみです」


「アラタさん! 私も『出張用メンタルケアキット』と『過払い金計算機』の準備、完了しました!」


聖女メルティがカバンをポンポンと叩く。


「長官、魔界への移動は俺の『空間転移陣』を使おう。一瞬で魔王城の玉座の間へ乗り込めるぜ!」


バルザックが大剣を背負ってニヤリと笑った。

「頼みます、バルザックさん。……よし、魔王軍の超巨大ブラック構造、これにて完全解体と行きましょう!」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 シュヴァァァァンッ!!


 空間が歪み、俺たちは暗黒大陸の頂点――魔王城・玉座の間へと直接降り立った。


「な……なに奴ぅぅっ!? 玉座の間に直接侵入だと!?」


 豪華な玉座の上で、激怒した魔王が立ち上がる。

だが、その顔は激務とストレスでドス黒く腫れ上がり、眼球には血走った筋が浮き出ていた。


『Target:魔王バアル/コンディション:極度の経営ストレス・睡眠不足・パワハラ依存症』

『経営状況:破綻寸前(主力社員の大量離職による崩壊)』


「お初にお目にかかります、魔王バアル様。国家最高労働適正化機構、最高長官のアラタです」


 俺は名刺と監査命令書を掲げ、冷然と告げた。


「本日、当機構は『労働安全衛生法』および『国際労働基準条約』に基づき、魔王城全体に対する『無予告・緊急立ち入り監査』を実施します!」


「ふ……ふざけるなぁぁぁっ! 人間どもの作った法律など、このワシに適用されるかぁぁぁっ! 辞めた連中など『裏切り者』として全員叩き潰してやる!」


「『裏切り者』ではありません。あなたの劣悪なマネジメントとハラスメントに耐えかねた『正当な離職』です」


 俺は眼鏡を押し上げ、魔王城の全データを可視化させた。

「ご覧ください。あなたがつぎ込んできた『やりがい搾取』の果てに、魔王軍の社員(魔族)たちの士気はどん底。退職届の山が積み上がっています。……経営者として、完全に失格ですよ」


「黙れぇぇぇっ! ワシは魔王だ! ワシがルールだぁぁぁっ!」


 追い詰められ、プライドを打ち砕かれた魔王が狂乱した。

彼が身に纏う暗黒の魔力が膨れ上がり、全身が禍々しい『黒炎の暴走形態』へと変貌していく!


「ワシを否定する者など、この世界ごと焼き尽くしてやるぅぅぅっ!」


 魔王の全身から放たれる全方位の超絶爆炎――魔界を崩壊させるほどの最終絶技が、俺たちめがけて襲いかかってきた!


「アラタさんっ!?」


 メルティが悲鳴を上げる。

 だが、俺は一歩も引かず、最高出力のバリアと新スキルの発動キーを同時に押し込んだ。


「暴走、結構です。……ですが経営者である以上、企業の全責任からは逃げられませんよ!」


毎日18時30分更新!

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