魔界の太陽
「ワシを否定する者など、この世界ごと焼き尽くしてやるぅぅぅっ!」
魔王城の天井を吹き飛ばし、渦巻く黒炎。
暗黒大陸全土を揺るがす魔王バアルの最終絶技――『暗黒終末波』が、俺たちめがけて襲いかかる。
「くっ……! なんて圧迫感だ……!」
Sランク冒険者のバルザックすら、その圧倒的な魔力に身構えた。
だが、俺は眼鏡の位置をミリ単位で整え、冷静にインターフェースを操作する。
「メルティさん、バルザックさん、下がっていてください。――これより、本監査の『強制執行』を行います」
俺は胸ポケットから、純白に輝く最高長官専用の印章を取り出し、空間に浮かぶ巨大なホログラム申請書へ叩きつけた!
「――スキル発動!『過払い労働エネルギー即時差押(全自動強制執行)』!!」
ズドォォォォンッ!!
魔王城の地面から、無数の光の鎖――『コンプライアンス差押線』が噴出し、暴走する魔王の全身を縛り上げた!
「ぬ……ぐぁぁぁっ!? ワシの暗黒魔力が……吸い取られていく……っ!?」
「吸い取っているのではありません。『還元』しているのです」
俺は淡々と差押通知の目録を読み上げる。
「あなたがこれまで数千人の魔族・兵士たちから不当に搾取してきた『サービス残業時間』『有給未消化分』『過払い労力』……その総計は、魔力換算にして約1,000万ギガジュース。本日付で、全額を差押対象としました」
「な、なん……だと……!? ワシの力が……『未払い残業代』の相殺で消えていくというのかぁぁぁっ!?」
魔王が纏っていた黒炎が、光の粒となって急速に霧散していく。
彼が誇っていた絶大な魔力こそ、何千何万という配下たちを不当に働かせて搾取してきた「ブラックな労働搾取の結晶」そのものだったのだ。
魔力が底をつき、膝から崩れ落ちる魔王。
「あ……あぁ……ワシの魔力が……ワシの魔王軍が……」
「魔王バアル様。力で支配し、やりがいで縛る経営の時代は終わりました。本日をもって『魔王軍』は解散とし、当機構の主導のもと『魔界労働福祉公社』へと組織改編を行います」
俺が宣言すると同時に、魔王城全体を包み込むように巨大な黄金の光が広がった。
暗く禍々しかった魔王城の壁が清潔なオフィス空間のように輝きだし、どんよりと曇っていた魔界の空に、何百年ぶりかの澄み切った青空が広がっていく。
「す……すごい……! 魔界に、太陽の光が……!」
メルティが感涙を流しながら空を見上げる。
「ガハハハ! 剣じゃなく、手続きと差押で魔王を降伏させちまうとはな! 長官、最高の『討伐』だったぜ!」
バルザックが俺の肩をパンと叩いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数日後――新しく生まれ変わった魔界公社の特設ステージにて。
「本日より! 私、リュミエラが『魔界労働福祉公社』の初代代表に就任いたしました!」
満面の笑みを浮かべるリュミエラの前には、数十万の魔族たちが集まっていた。
そこには、清々しい顔で働く元魔王軍の幹部たちや、自分たちの店舗を開業準備中のゴルゴダたちの姿もある。
「これより魔界では、1日8時間労働・完全週休2日制・有給消化率100%を徹底します! 文句がある管理職は、アラタ長官の監査が入りますよー!」
「「「おーっ!!!!」」」
魔族たちの割れんばかりの歓声と拍手が、魔界の大地に響き渡った。
そして――ステージの袖でその光景を見届けていた俺の元へ、メルティが照れくさそうに歩み寄ってきた。
「アラタさん……本当に、世界を救ってくださってありがとうございました。冒険者も、聖職者も、悪魔も……みんなが笑顔で働ける世界になるなんて……」
「いいえ、メルティさん。これは俺一人ではなく、あなたが最初に『労働組合』を立ち上げてくれたからできたことです」
「アラタさん……! 私……私、これからもずっと、アラタ長官の秘書として……ううん、あなたの隣で一緒に働きたいです!」
「……! ええ、もちろんです。これからもよろしくお願いしますね、メルティさん」
青空の下、満開の笑顔を浮かべるメルティと、しっかりと握手を交わす。
無職の就活生だった俺が、異世界で掴み取った『最高長官』の天職。
労働環境が存在する限り、俺たちの『適正化手続き』に終わりはないのだから――!
(第3幕・魔王軍解体編 完結)
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100話くらい作ったけど、ローンチはひとまず、ここまで!!
最初の作品にしては筆力あったな〜と自画自賛(汗)
また、どこかの作品でお会いしましょう!




