中央連盟本部(前編)
王都の中央広場にそびえ立つ、重厚な石造りの巨大建造物――『異世界冒険者ギルド中央連盟本部』。
この世界のすべての冒険者とギルドを統括し、莫大な富と権力を牛耳るブラック構造の総本山だ。
「ここが……中央連盟の本部……」
ロイとリナが、その圧倒的な威容に見上げるだけで気押されそうになっている。
「大丈夫ですよ。どんなに建物が大きく重厚でも、中で行われている不正や違法行為の汚さは変わりませんから」
俺は襟元を整え、かばんの中にぎっしりと詰め込まれた『不当労働および不正会計に関する監査資料』を確かめた。
「よし、乗り込みます!」
大門を守る重装の警備兵たちが、俺たちの接近に気づいて長槍を構える。
「止まれ! ここをどこだと思っている! 無許可の立ち入りは禁じられて――」
「退け」
俺たちの先頭に立ったSランク冒険者バルザックが、背中の大剣を地面にドンと突き立てた。それだけで、凄まじい風圧と衝撃が警備兵たちを襲う。
「ば、バルザック様!? なぜあなたがホワイト勇者どもと一緒に……!?」
「俺はもう連盟の犬じゃねえ。アラタ殿の労働監査のガードマンだ。命が惜しくなけりゃ、そこをどきな!」
「ひ、ひえぇぇっ……!」
Sランクの圧倒的な威圧感に腰を抜かした警備兵たちを横目に、俺たちは本部の豪華絢爛な大ホールへと堂々と足を踏み入れた。
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「な、なんだチミたちは!? 無礼者め! 警備兵はどうした!」
大ホールの中央、豪華な彫刻が施された大理石のデスクで書類を検分していた太った男――連盟総裁ヴァルターが、立ち上がって怒鳴り散らした。
その隣には、先日逃げ帰ったギルバート監査官が青ざめた顔で震えている。
「お初にお目にかかります、ヴァルター総裁。王立・ホワイト冒険サポート事務所代表のアラタです」
俺は冷静に名刺(支給品)を差し出し、大理石のデスクの前に立った。
「本日、当事務所は『王国労働適正化法』第7条に基づき、中央連盟本部に対する『無予告・緊急立ち入り労働監査』を実施します」
「か、監査だと!? ふざけるな! 我ら連盟は王国の法令など受ける筋合いはない! 冒険者ギルドの自治権は――」
「自治権とは、法令を遵守し自律的に運用されてこそ認められるものです」
俺は眼鏡をクイッと押し上げ、スキルを発動させた。
「――スキル発動!『広域・全自動帳簿鑑定(契約鑑定眼・拡張版)』!」
ズヴァァァァンッ!!
俺の頭上から解き放たれた巨大な半透明の光のスクリーンが、大ホール全体に大きく広がった。
そこに映し出されたのは、連盟が長年ひた隠しにしてきた『裏帳簿』と『不当契約の全全貌』だった!
『解析完了:中央連盟・裏帳簿』
『違法項目1:傘下ギルドへの70%超の不当な中間マージン搾取(年間数十億ゴールド)』
『違法項目2:冒険者への労災隠し(年間3,000件以上)』
『違法項目3:違法薬物を用いたSランク冒険者への人身拘束および私兵化』
『違法項目4:安全対策費の横領および役員への不正流用』
「な……ななな、なんだその光の板はぁぁぁっ!?? なぜ裏金と裏帳簿のデータがすべて可視化されているんだぁぁぁっ!?」
ヴァルター総裁が目を剥き、泡を吹いて叫んだ。
ホール内にいた大勢の職員や連盟関係者たちからも、凄まじいどよめきが巻き起こる。
「これがあなた方の『自治』の実態ですか、ヴァルター総裁」
俺は冷徹な眼差しで、絶望に震える総裁を見下ろした。
「言い逃れは不可能です。これより、連盟の全資産凍結および不当契約の解体手続きへ移行します!」
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