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届かない理由

「自分の魔法を信じれていない......か」


ウィルトが去ると、教室のあちらこちらから息をつく音が聞こえてくる。それはアルディオも例外ではなかった。


「アルディオも深いこと言われてたね。他人を見すぎている、だって」


「......あぁ。今の俺にはその意味を完璧に理解できない。......でも、それを乗り越えたら俺は一段階レベルが上がる、っていうのは何となく分かる」


「......確かに、ね」


セリスは考え込むような素振りを見せると、決意を固めたようにニッと口角を上げてアルディオの方にバッと向く。


「じゃあ、どっちが先に課題を乗り越えられるか競走ね!」


「......は?競走?」


「私たちって仲間ではあるけど1位にならなきゃいけないって訳では無いからライバルじゃないでしょ?でも、そういう競走とかあった方がなんか燃えてこない!?」


「そういうもんか......」


「ね!いいでしょ!」


セリスはグイグイとアルディオに詰めてくる。まるで拒否権などは最初からないように目を輝かせている。


「わかった、わかったから。近い。じゃあ、先に乗り越えた方にジュース一本、でいいか?」


「もちろん!決定ね!」


「あぁ、わかった」


その時だった。


ガタッ。


教室の後方で椅子を引く音が響く。アルディオとセリスが振り向く。レイブンだった。何も言わず鞄を肩にかけ、そのまま教室を出ていこうとする。


「あ」


セリスが小さく声を漏らす。


「なぁ、レイブン」


アルディオが呼び止める。しかしレイブンは立ち止まらない。歩きながら目を合わせずに声だけ発する。


「なんだ」


「......お前は課題についてどう思うんだ」


その質問でようやくレイブンの足が止まる。教室が静かになる。誰もが耳を傾けていた。


入学試験一位。


魔法クラス最強。


そんなレイブンが何を考えているのか、皆気になっていたのだ。


数秒の沈黙の末、やがてレイブンは小さく息を吐く。


「別に」


短い返答だったが、その声には僅かな苛立ちが混じっていた。


「課題など最初から分かっている」


レイブンはゆっくりと拳を握る。脳裏に浮かぶのは、ウィルトが放った言葉。


――一人だったからだ。


その言葉が妙に耳に残っていた。しかし


「強くなればいいだけだ」


レイブンはそれを振り払うように言い切った。


「力が足りなかった。ただそれだけの話だ」


そして再び歩き出す。


「仲間だの連携だの、そんなものは結果を出してから語るものだ」


そう言い残し、今度こそ教室を後にした。静寂が残る。


「......相変わらずだね」


セリスが苦笑する。が、アルディオはレイブンが消えた扉を見つめたままだった。


「いや」


「え?」


「なんか、少しだけ違った気がする」


セリスが首を傾げる。アルディオ自身も上手く説明はできない。


だが、レイブンの言葉はまるで誰かに言い聞かせているように聞こえた。


「......気のせいかもしれないけどな」













風が吹き抜ける屋上。


「ファイアアロー」


空に向けて先程ウィルトを襲った魔法を放つ。続けて


「ウィンドランス。アクアバレット」


空に放たれた魔法は次々と炸裂する。


だが。


レイブンは眉をひそめた。


違う。こんなものではなかった。入学試験の時なら、もっと鋭く、もっと正確に魔法を操れていたはずだ。


「くそ......」


レイブンは杖をぶらりと下げ、長い息をつく。


――一人だったからだ。


再び脳裏にその言葉がよぎる。


「俺は一人で勝つ」


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