孤独の天才
アルディオは自然と教室の外へと歩き出していた。どうしても、レイブンという男を知りたくなっていた。
「あっ、アルディオ!行くの?」
「あぁ、ちょっと、行ってみる」
「......そっか。喧嘩しちゃダメだからね」
彼女の警告に軽く手を振り、アルディオは廊下へと出た。
廊下へ出ると、レイブンは屋上へと続く方へと歩いていた。
アルディオもその背中を追って歩き始める。
(くそっ......!歩くの早いな......!)
レイブンの歩くペースに合わせ、アルディオはほぼ小走りで歩いていた。背中を追って角を曲がったその時
ドンッ
「いった......」
アルディオは一人の生徒とぶつかってしまった。視線をあげると、屈強な男子生徒が立っていた。
「すまない、立てるか?」
「あ、あぁ、悪いな」
その生徒はアルディオに手を差し伸べる。アルディオがその手を掴むと驚くほど軽々しく引き起こされた。
「すまなかった。怪我はしてなさそうで良かった」
「いや、俺の不注意だったんだ。むしろこっちの方が申し訳ないことをした。あ、俺は魔法クラスのアルディオ・オーウェンだ」
「気にする事はない。俺はアレス・カランだ。見ての通り、戦士クラスに所属している。それより、急いでいるのではなかったか?」
アレスの一言でアルディオは思い出した。レイブンのことを追っていたのだった。
「あ、そうだった。すまん、ちょっと行ってくる。また今度ゆっくり話させてくれアレス」
「あぁ、気をつけて行ってくれ」
やがて、アルディオは屋上に着いた。
屋上の扉を開けると、そこの中心部にレイブンはいた。
(何をしてるんだ?)
そう考えるのも束の間、レイブンは杖を構え、先端に魔力を集中させる。最初は魔力の塊だったものが、やがて火を纏った赤色へと変色していく
(すごい威力だ......)
そして、レイブンはそれを空に向けて放った。
「ファイアアロー」
そのつぶやきと共に、魔力は無数の矢の形状に変換し、空へと解き放たれた。標的こそいなかったが、その威力の高さは十分に伝わった。
「すごい威力だな。俺、アルディオ・オーウェン。同じ魔法クラスなんだ。よろしくな」
アルディオは少し興奮しながらレイブンに話しかける。
しかし、レイブンから返事は返ってこない。
「......?おい、なんで無視するんだよ」
「お前の自己紹介に返事をすることに魅力を感じない」
冷たく突き放す言葉に、アルディオは一瞬怯む。
「なんでそんな事言うんだよ。新入生が自己紹介したっていいだろ」
「勝手にすればいい。だが、俺にそれをしたところで無意味だ。俺はお前も、この学校の連中も信用していない」
「信用してないって......一人で全部やるってのかよ」
「それで十分だろ」
レイブンの姿勢は変わらない。常にアルディオのことを突き放すものだった。
「十分って......エドガー様ですらパーティメンバーがいたってのに一人で何ができるって言うんだよ」
「それはエドガーの仲間が特別だからだ。俺はお前に魅力を感じない。例えばあの風魔法。俺はお前よりも高威力でもっと素早く繰り出せる。お前と組むメリットはない」
「ふざけるな.....!俺は......!」
アルディオが反撃の言葉を投げ返そうとするが、レイブンはそれを阻止した。
「話はそれだけだ。俺は行く。せいぜい仲良しごっこをしていればいい」
アルディオの怒りをもろともせずにレイブンは踵を返し、扉へと向かっていった。
やがて、レイブンの姿が扉の向こうへと消えていく。
(なんなんだあいつは......。でも......)
アルディオは拳を握りしめる。
「あいつには、負けたくねぇ」




