↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/22

《虎穴に入らずんば虎子を得ず》


 あれから一体どのくらい歩いただろうか?恐らく、まだ40分程度だろうか。すでに、俺の体は久しぶりの運動に対して確実に疲れを蓄積していた。


 今俺達は、日の光が届かない薄暗い森の中をただ無言で進み続けている。時間は、まだ正午にも関わらずこの暗さなら果たして、夜はどれほど暗くなるのか。


 そんな、些細な事を考えていると先頭の風花さんがふと歩みを止めた。


「可笑しい...」


 不穏な言葉を呟くのと共に辺りを見渡す。どうやら、彼女には何かこの状態に違和感を感じている様なのだが俺には全く分からなかった。


「敵...ですか?」


 強張った表情で由良が風花さんにそう尋ねる。が、どうやら敵が来た訳では無い様だ。


「う〜ん?こう猛烈に違和感を感じる筈なのに、それが何か分からないなんて...」


 腕を組んで、考える仕草をし始めた風花さんを他所に警戒を解いた由良が俺に声をかけてくる。


「まぁ、多分私達が考えても分からない物なので私たちは今のうちに休憩しておきましょう‼︎ご主人様‼︎

休めるうちに、休んでおくのが大事って本にもそう書いてありましたし!!」


「でも...」


「良いですか?ご主人様は、病み上がりなんですよ?それに、ご主人様は人間なんだから直ぐに死んじゃうかも知れないんですよ。だったら、今は少しでも休んでおくのが大事ですよ!!そうだ!!もし、なんだったら膝枕とか嫌、膝枕じゃ無くて私の大事な〜〜〜〜」


 確かに、由良の言う通りかも知れない。この世界に来たばかりの、俺なんかがいくら考えた所で風花さんのいう違和感に気づける訳無い。


 だったら、今は少しでも足手纏いにならない様に体力を回復しておくのがベストに決まっている。そうと、決まれば少し休憩するか。


「ちょっと!!聞いてますか!!ご主人様」


「あ、あぁ...うん。聞いてる聞いてる」


「え!?今、うんって言いましたよね‼︎では早速‼︎」


「ごめんなさい...聞いて無かったです...」


「..........はぁ」


 なんだろう、由良から凄い悲しみと迷いの籠ったオーラの様な物が見える気がする。あ、体育座りで地面に絵書き始めた。


「はぁ...もういいです。森を出れた後にしますから。その時はもう私....」


 ごめんよ、由良。数日とはいえ俺達は、共に同じ家で暮らした仲。だから、今由良が何を言っていたかは考えたら薄々分かる。けれど、俺はあえて考えない。知らぬが仏とは、良く言ったもんだ。


 由良の独り言を、右から左に聞き流しながら一休みする。時折り、ピー音が掛かってしまう程のワードが聞こえるくるが俺には全く聞こえない。


「ご主人様を後ろから、〇〇してそして〇〇〇〇してご主人様の〇〇〇〇を私の〇〇〇〇に〇〇〇〇」


 ははっ、風が気持ちいいなぁ.....はぁ。


 悲しい事に、何処か慣れてしまった気もするこの日常を横目で眺める。俺、もしこの森出られて命が助かっても童貞は守れそうに無いなぁ...はぁ...。


俺が、現実逃避で雑草を引っこ抜いていると急に風花さんが声をあげた。


「クソッ!!そういう事ね‼︎あいつ!こうなるの分かっていてわざと言わなかったわね‼︎今度会ったら絶対に泣かす!!」


 怒りを、露わにした様子で風花さんが声を荒げる。あいつ?あぁ、多分あの話の中で出てきたあの人の事か。


「あの?それで、違和感の正体って?」


「その前に、一つ確認で聞いてもいい?この森に入ってから、体に違和感とか無い?」


「い、いえ。特には」


「そう、やっぱりね」


 何か、納得した様な表情を浮かべる風花さん。一体、違和感の正体はなんなんだ?


「答えは呪いよ。この森に掛かる呪いの効果が変わっていたのよ。道理で可笑しいと思ったわ。貴方は、人間な筈なのにこの森にいても平気そうだしそれに.......この木」


そう言いながら、風花さんはとある一本の木に触れる。触れたその木は、何処にでもある普通の木にも見えるが?


「我ながら、良く気付いたと思ったわ...ほら、ここの部分を見て。傷が付いているでしょう?風魔法の様な傷が。それに、他の木にも...」


「あっ!!もしかして、この場所って‼︎」


「そう、その通りよ。それにしても悪趣味な呪いもあったもんね。恐らく《獲物を近くの村に誘いこむ呪い》かしら?貴方の事を捕まえる為に、村に引き寄せて傘下の一族が捕まえた所を回収しに行く。全く持って合理的ね」


 なんて、恐ろしい話だろう。もし、俺が一人でこの森を彷徨っていたら気づかない内に村へ誘い込まれてそのまま捕まっていたなんて...。

 それに、今だって気づくのが遅かったなら今頃...うぅ、考えるだけで悪寒が。


「それで、この呪いをどうにかする方法あるんですか?」


「無いわ」


「 ...... 」


 やっぱり...上位種である黒狐の呪いに対する手段なんてこの世に無いのか?俺は、このまま...。


「けれど、今の状況を打破する方法はあるわ」


「え⁉︎」


 俺は、勢いよく顔を上にあげた。この状態を、打破出来る様な方法があるなんて!!流石は、風花さんだ‼︎やっぱり、上級妖精は伊達では無かった‼︎


「色仕掛けよ」


「 ......え?」


 どうやら、自分でも気づかぬ内に大分疲れが溜まっていたらしい。それも耳に。だって、急に真顔で色仕掛けって...聞き間違い以外無いでしょ?ねぇ?


「いい?良く聞いて?創君。この世界の女は、男に弱いのよ。後は言わなくとも分かるわよね?」


「すみません、良く分かりません」


「ツッ...!!私だって‼︎辛いわよ‼︎大事な貴方を、見ず知らずのメス共に色仕掛けをさせるなんて‼︎寧ろ、私にして欲しい!!いや、もっと凄い事を!!」


「一旦、落ち着いて下さい‼︎風花さん」


 駄目だ、完全に冷静さを失っている。なんか、今の風花さん色々と凄い事になっているし、ちょっと由良‼︎止めるの手伝っだっ......うわぁ。


「ご主人様が、私の知らないメスに色仕掛け?は?許さない。そんなの絶対に、許さない。私にだってまだそんな事して貰えて無いのに〜〜〜〜〜〜〜


 先程のオーラより、ドス黒いオーラが由良の体を包み込んでいた。オーラって、肉眼でも見えるんだな。


「創君、私達に残させた道はもうこれしか無いのよ‼︎やりなさい、創君‼︎誰かの為にじゃ無い‼︎貴方自身の為に!!」


「うぅ...分かりましたよ。やれば、本当にどうにかなるんですよね?」


「えぇ、ほら昔の言葉にあるでしょ。虎穴に入らずんば虎子を得ずって......やっぱり、嫌‼︎知らない女の穴に貴方が入るなんて耐えられない...!!」


「はぁ.....」


 なんか、数日暮らして思ったんだけどさ。この世界の女性って男が絡むと本当にIQ下がるよね。本当に。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。