《一人ぼっちの夜》
この世界の種族には、様々な特徴が存在する。
例えば、私の種族である妖精族は魔法の扱いが非常に長けている分、重い物を持ち運ぶ事は出来ない。逆に、ウルフ族は魔法が使えない分筋力と敏捷が優れている。
そんな、均等なバランスがあるからこそ私達はこの世界で生きられるのだ。
その筈なのに...!!なんで!?どうして!?
「ウルフ族が、私より強い魔法が撃てるのよ‼︎」
私は、必死に逃げながらそう叫ぶ。今までに起きた事を、三行で説明すると、
①早速、この森の調査の為取り敢えず森に入る
②とっておきを使っていたのに、何故か気づかれる
③ウルフ族なのに、魔法を使えて何故か私より強い
どうしてこうなったのよ⁉︎そもそも、この森に入ってから何か様子がおかしい。さっきから、体が重い!!
「獲物だ!!」 「久しぶりの獲物!!」
「ギャハハ!!」「ほら!!逃げろ逃げろ‼︎」
「すぐには捕まえるな!!」「羽だ‼︎羽をむしれ‼︎」
どうやら、狩人達は私で遊んでから捕らえる様でわざと、私にぎりぎり掠る程度の魔法で攻撃してくる。だが、今の私の状態じゃこんな奴らにもすら劣ってしまう。
(そもそも、この体の重みは何⁉︎それに、何故ウルフ族が魔法を...?いや、それより、今はこの状態をどうにかしないと)
必死に頭を、使って考えるのも何故か頭の中に靄がかかった様に上手くいかない。今まで、そんな事無かったのに!!
それに、擦り傷とはいえ妖精である私にとってはその一撃一撃が非常に痛い。そんな私に、追い討ちをかける様に重い一撃が背中に当たる。
「ツッ.....!!痛ッ!!傷でもついて、旦那の貰い手が居なくなったらどうしてくれんのよ!!このクソ女共!!」
「アハッ!そん時は私達がお前の相手にやるよ!」
「お前は、どうせここで捕まるんだ!」
「羽をもいで、籠の中で一生ペットとして暮らすんだ!」
振り向き様に、悪態を吐くがそれを気にする素振りも見せずに舌舐めずりをしている。
「クソッ、考えろ!!考えろ!!私!!」
ぼやけた頭を、無理矢理にでも稼働させる。ウルフ族、森、魔法、私、全ての要素から私の最適解を導き出す。
......これだ‼︎でも、危険過ぎる。こんな作戦バレたら次こそ命は...いや此処で、女を見せなきゃ私はきっとここで捕まる!!ならば、これしか無い‼︎
私は、もう一度後ろを振り向く。彼女達は、もはや狩人では無く獲物で遊ぶ獣となっている。私の勝ち目はそこにある。
「お前ら、全員ぶっ殺してやんよ!!」
そう挑発するも束の間。私は、背後から来る魔法に勢いよく命中する。その威力に体が、ゴム毬の様に宙へと舞い上がった。
「クソッ、あの女何処に行きやがった⁉︎」
「あの傷じゃ、そう遠くには行けない筈だ‼︎」
「絶対に、羽をむしってペットにしてやる‼︎」
苛つきを感じされる声で、ウルフ達は叫ぶ。
ある者は鼻を、ある者は、耳を使い走りながら私を追いかけ始めた。
私は、その光景をただ息を殺して見ていた。今の私では、悔しいがあいつらには勝てない。今は、隠れてやり過ごさないと。
私がした行動は、主に4つ。
①風魔法を体に、纏って挑発。わざと攻撃に当たる
②威力を調整しつつ、木の上に着地する
③背負ったリュックに、妖精の粉をかけてリュックだけを空に浮かせる
④夜と暗い森の中、リュックを私に見間違えたウルフ族はそれを追いかける
あの一瞬で、考えた作戦がここまで上手くいったのはこれのおかげだろうか。私は、自分の指にハマった指輪を見つめた。
妖精女王の指輪。私が、女王から賜った珍しい指輪であり女王いわく、着けているだけでお守りの様な効果があると言っていたのを思い出した。
(ありがとうございます。私を守ってくれて)
指輪に、感謝しつつ冷静になった今この状況について考え始める。
まず、初めに考えるべき事は体の不調についてだろう。この際、ウルフ族が魔法を使っていたのはスルーする事にしてこの森を探索するのならこの問題の方が重要だ。
分かっている情報は、体が鉛の様に重い事と私の魔法が弱くなってる事。後は、頭の調子が悪い事ぐらいだろう。
(これって、呪いよね...?)
こんなにも悪趣味な呪いが、あるなんて。私の中に、怒りの感情が現れる。恐らくこの呪いは、殺す為では無く痛ぶる為にある物だ。
その呪いは【この森に入った者への強力なデバフ付与】と見て間違い無いだろう。まぁ、確かに侵入者への即死付与なら予言の運命の子とやらも死んでしまう恐れがあるから、デバフにしたのだろう。
それが、分かった所で私はこれから...どうすれば。下には、もうあのウルフ達はいないが先程の戦闘で既に私の体は限界に近かった。
不味い...最後のアレが結構やばい所に入ったな...。私が、背中を確認すると痛々しい青紫色のアザがくっきりと滲み出ていた。
「はぁ、私の人生もここまでかなぁ」
案外、呆気ない人生だった。生まれながらに、強力な力を持ち上位妖精と呼ばれた私は、その力に過信せず毎日精進し続けた。
辛かった、退屈だった、悲しかった...特に、同期が運良く男とやったと聞いた日は怒りでそいつの事を殺してやろうかと思った。
私は...寂しかった。男じゃ無くても良い。友達でも、家族でもなんでも良かった。私は、ただ誰かと仲良く話したかった。あぁ、最後になってこんな願いに気づくなんて...ははっ、私って本当に...。
目から、溢れ出す涙に気づかないまま私は独り言を呟く。
「一人ぼっちは...寂しいなぁ......」
夜は、未だに明けずに彼女は一人。木の上で眠りにつくのだった。




