《名探偵 フェアリー》
「まず、帰ったら手始めに赤髪のクソ女の頭を〜〜〜して、〜〜〜を〜〜〜にしてやる。それが、終わり次第すぐに周りの奴らの〜〜を〜〜...」
私は、飛びながらに考える。あの女をどの様に始末するか。やっぱり、定番の〜〜〜〜〜か?いや、〜〜〜〜も捨てがたいな...?
あえて、声に出す事で怒りを発散させようとするも、その怒りの炎が収まることは無くむしろ激しく燃え上がった。オノレ、オノレ、アノアカガミノメスメ、ゼッタイ二ユルサンゾ。
私は、絶対に行きたく無かったが女王の命令であの森の調査に単身で向かっていた。
あれ?そもそも、なんで私一人なんだ?別に、これ単身の必要なくない?え?絶対そうよね?もしかして、私人望無いんじゃ......?
「はぁ...もし、国へ帰れたら私。これから隠居する事にしよう。こう、海があるいい感じの家で余生を過ごそ...」
哀愁漂うフラグめいた発言をしつつも、とりあえず今は仕事をこなす為に背中の鞄に入った地図を取り出した。
これから向かうあの森についての地図。なんでも数百年前に、あの森から逃げ出し私達の国で保護した者が作成したらしい。本当に、そんな地図信じられるのだろうか?
「それにしても...なんかこの地図.....う〜ん?」
この地図を、初めて見た時私は何故か違和感を感じた。理由は、分からない。でも、確かに何か言葉に出来ない違和感を感じたのだ。
「う〜ん?どっからどう見ても普通の地図の筈なのに?そもそも、この地図ってどの種族が書いた物なんだっけ?」
首を、傾げながら考えるもその正体が分からず、気がつけば目的地に辿り着いていた。
「はぁ、着いてしまった。もっと、ゆっくり飛べば良かったかも....」
此処は、この森の入り口の一つ。通称 狼の口。なんでも、この入り口は中位種のウルフ族が仕切っている場所なのでそこからそう呼ばれる様になったと言われている。
他にも、蛇の目や鴉の耳などの入口が4箇所存在する。あれ?後一つなんだっけ...?確か、他の3つが顔に纏わるんだから...鼻?なんの鼻?
「まぁ、今は関係無いか」
私は、嫌々ながらもさっさとこの森を調査する為に一歩足を踏み入れた。いや、踏み込んでしまったのだ。
「うへぇ...これは...きついかなぁ」
一歩、たった一歩この森に足を入れただけなのに私は愕然とする。体が、脳が、この森に黒狐がいるとを警告を鳴らす。
初めは、色々と愚痴っていたのだがここまでやばいとなるとやっぱりあの子達がいた所で役に立たないだろう。
森全体が、私の事を見ている様なそんな感覚に襲われる。見ている、見つめている、見られてる。そこに、あそこに、向こうに、私の後ろに、彼女は...いる。そこに、そこにいる。彼女は、確かにそこにいるんだ。
夜の暗闇の中だというのに、目には見えないのに、私を覗き込む無数の彼女の瞳が私の事を捕らえて離さない。
「うっ...」
その不快な感覚に、耐えられずに森から距離を取る。すると、先程の感覚が嘘の様に感じていた視線は消えていく。
「クソッ...油断した。いくら、様子を見るだけといってもあの黒狐がいる森になんの準備も無しに入ろうとするなんて...私もまだまだね」
深呼吸をして体の調子を整える。......よし、一先ずはこれで大丈夫。私は、冷静になった頭で黒狐についての情報を思い出す。
黒狐...呪いの子と恐れられる最強の上位種。闇魔法や呪術の腕前はこの世界で最強と言われ、筋力、敏捷、魔力などどれをとっても怪物級。
しかし、真に彼女が恐ろしいのはそこでは無い。ステータスが良くてもスキルが強くてもそれだけでは私達と同じだ。
黒狐の名。それは、世界を呪う者である証。
その力は、未だ未知数であり古い伝承には、彼女と似た力を持つ者が世界を滅ぼすと予言がされる程彼女の力は凄まじかった。
昔、女王が気まぐれにこんな事を言っていたのを思い出す。
「上位種は、ただ力が強い者が上位種になれるんじゃ無いのよ。世界に対して役割が有るから、生まれながらに上位種に成るのよ」
その言葉道理なら、彼女の役割は世界を呪う事。それなら、あの森での重圧や閉塞感も頷けるだろう。
でも...それは可笑しい。私は、あの森を再び見つめ直す。森の中は、先の見えない暗闇が何処までも続いている。
もし、私の予想が当たっているなら...だが、もし間違っていたら。いや、今は他に手が無い以上やるしか無い。
「やれる、私なら大丈夫」
耳を、澄まして目的の音を探す。............よし、これなら行ける。私は、そう確信して天高く空へと飛び立った。
「やっぱり.....思った通りだわ」
空から、この森を見下ろすと点々と村の明かりの様な物が見える。予想が、的中した事で気が緩みそうになるが警戒を怠らな様に気を張り詰める。
私には、一つの仮説があった。
黒狐が、この森に住み着く前。この森には、いくつかのルールが存在した。
ルールは、主に互いの種族が無闇に戦をしない為や森を長い間住み続けられる様にする為だったがこの森には変わったルールも存在していた。
《この森に、長く住み着いてはいけない》そんなルールが、存在した。それは、この森に住む初めの生き物が決めた様で、そのルールのせいで同じ種族が数年おきに町を入れ替えていく。それが、昔のこの森の常識だった。
しかし、黒狐がこの森に住み着いてからはこの森の生き物は全滅したと噂されていた。
だが、それは可笑しく無いか?私はそう考える。
黒狐は、世界を呪う者。なら、その使命の様に森全ての生き物を殺しても何もおかしくない。
でも、それなら何故わざわざ入り口にあんな呪いを付与した?
森に誰も立ち入らない様にする為?いや、違う。それなら、警告程度の呪いじゃ無くて即死クラスの呪いにする筈。
あの森に、何か探し物があるから?違う。確かに、あそこにはランクの高いアイテムがそれなりに有るがそんな話聞いた事が無い。
私は、悩んでいた時にふと昔読んだ伝承についての絵本の内容を思い出した。
《深き森 呪いと運命が 出会い 災いが生まれる。呪いは 再び獣と 成る》
深き森...呪い...そう似ているのだ。今のこの状況に....。
きっと、初めは偶然だと思っていたのだがもしそうだとしたら辻褄が合う。
この森に、長い間住み着いていけないのは、呪いである黒狐が来ると予言されていたから。この森から、生き物が出てこないのは運命の子が居るかも知れないから。
ならば、この呪いは...入り口だけ。そして、今その推理が的中して私は難なくこの森に入る事が出来た。
「はぁ、森に入るだけでこんなに疲れるなんて...これから先が不安だわ」
私は、そんな事を愚痴りながらこの森の探索を始めた。




