《え?人望無...》
〜10年前〜
それは、いつものお茶会での出来事だった。時間は午後3時頃。テーブルには、焼き立ての美味しそうなマフィンやいい香りのする紅茶が並べられた素敵なお茶会。
「今日の紅茶は、エルフの森の特産ですって」
「まぁ‼︎あの噂の紅茶ですわね。楽しみですわ」
「おい、これ食べてみろよ?めっちゃ、美味しいぜ?」
「駄目。こういう場ではマナーを守るべき」
そんな少女達の和気藹々としたお茶会で、我らが女王である少女がふと思いつきなのかこんな事を言い出した。
「あ‼︎そういえば、最近あの森にクソ狐が住み着いたみたいだから誰か様子見てきてくれない?」
女王の一言で、一気に周りの楽しそうな和気藹々とした雰囲気がお通夜テンションへと変貌をとげる。
当たり前だ。あんな森に、入るだけでもに自殺行為等しいのにそこに黒狐がいると分かったうえで入るなんて。そんなの自ら殺してくださいと言って首を差し出すのと同じだ。
皆、考える事は同じな様で誰一人話そうとはしないが表情だけでも言いたい事は伝わってくる。私は、黙って紅茶をすすりながら女王を見つめる。
女王は、乙女を体現したかの様な妖精であった。天真爛漫で、好奇心に溢れており恋の話が人一倍大好きだった。
時には、子供の様な無意識な残虐性を秘めているがそれを上回る程の妖精としての何かが私たちの心を離さない。
愛くるしい女王の我儘は、なんでも叶えてあげたくなる。きっと、そんな少女だからこそ我々の女王として相応しいかったのだろう。
「嫌だ...」
不意に、誰かが蚊の鳴く様な声で呟いた。本来ならば皆、頭を下げているので誰が言ったかなんて分からないが、私には分かってしまう。あぁ、彼女か。
青髪で、目を隠した内気な少女。つい最近、運悪くこのお茶会に選ばれた可哀想な子。確か、水魔法が得意な子だった気がする。
後は、この名誉あるお茶会に選ばれて嬉しいと涙ながらに喜んでいたのを覚えている。
「また一人。私のお茶会から消えるのね....。」
「え?」
聞こえてきた不穏な言葉の意味が分からず、青髪の少女は不安そうに聞き返す。
「悪く思わないで。私にもどうする事も出来ないから...」
そう女王が、悲しげに言葉を投げつけると同時に青髪の少女は奈落へと落ちた。これは、決して言葉の綾などではでは無い。本当に、少女は急に現れた穴に落ちて行ったのだ。
「はぁ...」
今年は、これで何人目だろうか。確か、4...5人目だった筈。私は、何処か見慣れてしまった穴を観察する。
その穴は、何処までも暗く長い穴。以前、穴の中を覗き込んだ事があったが先がどうなっているかは私には分からなかった。
女王が、言うにはどうやらあの先は不思議な国?と呼ばれる場所に繋がっているらしくその国がどうなっているかは詳しく知らない様だ。
ただ、この穴に落ちた妖精達は誰一人として帰って来なかったのは確かな事実として残っていた。
「それで、誰が行ってくれる?」
先程の事など、初めから無かったかの様に女王は笑顔で問いかける。その無邪気な笑顔は、今となっては恐怖でしか無い。
「 .........」 「 ......... 」 「 ......... 」
辺りに、痛いぐらいの沈黙が流れる。下手に名乗り出たら、あの森で死ぬ。逃げ出そうなら、不思議な国行き。私たちは、誰かが後で死ぬか今皆んなで死ぬかの二択を決めさせられているのだ。
「ぁっ...あの...」
私の隣に座っていた、赤髪の妖精が手を挙げた。その勇気ある行動に私は内心彼女を称賛する。果たして彼女は、女王になんて言.....
「私達の様な、弱い妖精がいくら束になってあの森に行っても直ぐに死ぬだけです。で、ですから...あの...上位妖精であるを彼女派遣するのはどうでしょう?彼女なら...きっと女王のご期待に添えます」
ちょっ、テメェ!!私の事売りやがったな⁉︎絶対に許さんぞ。ちょっと、ツラかせや!!コラァ‼︎
「彼女ならご期待に...」「そう、彼女なら」
「上位妖精ですから」「大丈夫。問題無い」
おい!!何急に団結してんのよ!!いくら、私が上位の妖精だからと言って死なない訳じゃ無いのよ!?いや、マジで行きたく無い!!
「そうね。確かに、貴方なら任せられるわね」
「え⁉︎そ、そうですね...ははっ」
おのれ、新入り風情どもが。よくも、よくもこの私を!!もし、生きて帰って来れたら絶対に泣かせる。完膚なきまでに!!
こうして、私はあの死が待つと恐れられる森へ単身で向かうことになってしまった。
「あの...人望、無いんですね...?」
「怒るわよ?」
「すいません」
俺は、ここまでの話を聞いてついつい思った事を口に出してしまった。いや、だって...ねぇ?初めは、なんか強者感出してたのに、急にピンチになったら目に見えて動揺するし。仲間に売られてるし。
「それにしても、女王って何者なんですか?」
女王。話に出てきた彼女は、余りにも規格外というか。明らかにスペックがかけ離れているというか...。
「私達の女王は、厳密にいえば妖精では無いのよ。正確には、妖精女王。それが、種族なのよ。まぁ、簡単に言えばあの女(黒狐)と同じよ」
道理で、黒狐をクソ狐なんて命知らずな発言が出来たのか。確かに、いくらあの女が化物といえど同じ上位種の女王ならそんな強気にもなれる。
「あれ?そう言えば、話の道中で上位妖精とか呼ばれてましたけど、もしかして風花さんも上位種なんですか?」
「ん?私?違う違う。私は、ただの妖精。上位妖精というのは、一部の強い妖精が周りから勝手にそう呼ばれるだけよ」
まぁ、そうだよな。もし、女王と同じ上位種なら仲間に売られ...うん。めっちゃ睨まれてるから、今は考えるのは辞めよう。
空は、未だに暗く夜が明けるにはまだまだ時間がある。そうだ、俺は急がなければ。
「それで、その後どうなったんですか?」
「そうね。その後私は...




