森の中〜聖獣〜
なっとうになってしまった。
聖獣ちゃんが腕の中に降りてきたのでぎゅっと離れないように抱きしめる。光が収まり目を開けるとそこはもう先程までいた場所ではなく、何故か森の中だった…。
「またっ!あの自称神っ!!!」
「みゅみみ!みんーっに!!」
「何言ってるかは分からないけど、言いたい事はめちゃめちゃ分かるっ!!」
「んーみゅっ!んーー」
「そうだね、イライラしてても仕方ないし行こっか。宿とか色々あるしね…はぁ」
「んみゅぅ…」
(確か少し歩くと街が見えるから…ってどっちに歩くねん?!あっちもこっちも森やけどぉ?!!)
私が動き出さないで周りをキョロキョロしてる事に気づいた聖獣ちゃんが鳴いた。
「んみゅう?」
「あっ!街道に出るって言ってたはずだったんだけど、なぁ〜んでか森の中でどっちに行けば良いのかと…アイツ、んぐぅっ〜〜!!!」
また、自称野◯へのヘイトが湧き上がり怒りのエンドレス?に突入しようとしていた私に聖獣ちゃんが可愛いおてて、前脚を挙げて「みゅっみゅん!!」と鳴いた
「ん?聖獣ちゃん、どうしたの?っえ?!あっちょっ、わっ!!?とっ飛んだ?!いや、浮いて、る…?」
可愛い肉球を目の前に掲げてくれるドヤ顔の聖獣ちゃん、なんて可愛い肉球だ!と思っていると「みーみゅっ!!」と言い更に高く浮かび上がった。前脚をオデコにつけて可愛いポーズで何やら四方八方にキョロキョロとしている聖獣ちゃん。
「えっ?!あっ!探してくれたのね、ありがとう!」
「ん〜みゅっ!!」
お礼を言うとあっち!!っと前脚を指して方角を教えてくれたがそこは鬱蒼と茂る森の中。
「了解!こっちね!」
なんとか木の間を進み少し歩くと木が少なくなり次第に視界が開け街が見えた。だが…。
「うわぁ〜!良い景色〜〜じゃなくって、どうやって降りるのぉ…ロープとかそんな都合のいい物無いよぉ」
うなだれた私。森をぬけると確かに街は見える。めちゃくちゃ綺麗な景色ではあるんだが、足下は切り立った崖。どうやって降りようか、降りるのか?!っとプチパニックになっているとまた、聖獣ちゃんが話しかけてきた。
「みゅーみゅん!」
「えっ?もしかして、降り方わかるの?」
「みゅーみゅんっ!!」
「いったいどうやって?」
そう問いかけると聖獣ちゃんが輝き、足下に魔法陣が現れ輝くと光が私達を包み込み身体が浮いた。怖いので聖獣ちゃんを捕まえて抱きしめる。
「もしかして、さっき聖獣ちゃんが浮いてたのと同じような魔法?」
そう問いかけると「んーっみゃ!」と手を挙げて教えてくれた。ビビり気味の私に気を遣ってかさっき浮いていた時よりゆっくり崖下に降りて行く。何事も無く無事に地面と再会出来た私達は街へと続く街道の方に歩いて行き、街道の手前で自称から聞かされていた聖獣のスキル収納から鞄とフード付きの外套を取り出した。服も平民仕様で悪目立ちしない物はずだが、女の一人旅だとバレバレなのもよくないと思い身につけて行く。
「よし!フードも被って鞄も持ったしパッと見、旅人っぽいはずだしこれなら大丈夫でしょ」
「みゅっ!」
「聖獣ちゃんはやっぱり肩の上なのね!」
定位置になりつつある方の上でお利口にしている聖獣ちゃんと共に街道に出た。
街道に入るとあまり人影もなく街の立派な門と少しの人影。近くまで来ると街に入るための手続きで並んでいるようだと分かった。手続きはタグを機械のようなものにかざして街に入って行く人達ばかり。
(通行証は発行してもらえたからこれを見せれば良いんだよね?…不安になってきた、だってこれ自称のだし!)
私の番になり恐々と通行証を渡し思っていた以上にすんなり街に入れた。疑って悪かったと少し見直していると街に相応しい大勢の人々。暫くヨーロッパにでも来たかのような街並みに目を奪われつつ、手続き待ちで並んでいた間に見た案内板を思い出して屋台通りに。
(腹が減っては何とやらよろしく、先ずは屋台巡り!)
と、思い向かっていたら良い匂いのする良い感じのカフェが現れた。大通りに面してはいないけど、テラス席まであり清潔感もあり気づくと誘われるように入店していた。
「いらっしゃいませ〜」
「この子も一緒で良いですか?」
「はい、テラス席にどうぞ〜。オススメはこちらのランチセットです!」
「じゃあ、それと飲み物はアイスティーで」
「かしこまりました!少々、お待ちくださーい!!」
結論から言うとランチセットは大当たりだった。サラダのドレッシング、スープ、勿論メインの何かを焼いた物。そして何より焼きたてらしいふわっふわのパンにデザートのケーキまで。屋台巡りは次の機会にして穏やかな日差しと風に包まれる最高の午後を過ごした。
「美味しかったです。ご馳走様でした!」
「ありがとうございます!」
「今日、レイアグールに着いてこの街も初めてで。良かったら良い宿を紹介して貰えませんか?実は、今日泊まるところも決まっていなくて」
「そうですね〜。宿屋街の中心地なら「そこいらは高いぞ。猫笹亭にしろ。あそこなら大通りからは離れてるが獣魔も一緒に泊まれるし安くて朝飯が美味い」急にびっくりするじゃないですか!美味しいって言われて我慢できずに出て来たんですかぁ〜?」
華麗に無視を決め込みシェフっぽい男の人は去っていった。
「なぁによ。カッコつけて「あの〜」!はい笹猫亭ですね!!あそこは〜」
簡単に道案内を聞いて笹と猫の看板を目印に探すと良いと聞き向かう。食べ歩きや散策もしたかったが思いの外美味しすぎたご飯とケーキに満足してしまい、宿の夕食が美味しいと言われればもう、早めに着いておいて部屋が空いているうちにチェックインして、聖獣ちゃんの事もこれからの事もあるし宿でゆっくりしよう、となった。
「そろそろあるはず?」
「んーみっ!」
「ん?あった?」
「みゅーぅ!」
聖獣ちゃんが指した方を見ると笹と猫の看板。入り口には笹猫亭と書かれていた。ドアを開け『コロンッ』とドアベルが鳴ると「はいはぁーい」と、女性の声が聞こえて来た。
「はい、お待たせしました。お泊まりのお客様?」
「はい。この子も一緒で大丈夫だと聞いて来たんですが」
「はいはい!大丈夫ですよー、可愛い子ね。お部屋はシングルね。お夕食は9時までで、朝はパンとスープの軽めの食事が日が上ってからね」
「はい。分かりました」
「温泉はお2階の突き当たりの青いドアノブよ」
「温泉っ?!!」
「ひぁっ、えっ、えぇ。お部屋もお2階ね。はい、鍵」
「はい、ありがとうこざいます」
はやる思いで部屋へ行き机に荷物を下ろし外套をかける。ベットと窓、机に椅子まである小さくはあるけど清潔な部屋。居心地の良さそうな部屋に気が緩見そうになるが着替を持つ。
「よしっ!先ずは旅の疲れを取るためにも温泉!!」
「みゅぃ!!」
日本人としてはじっとしていられず、真っ先に温泉に向かった。温泉は結論から言えば最高だった。広くは無いが足が伸ばせるし窓からの景色を楽しんでいたら夕日が見え、沈むまで楽しんでしまった。
夕食を食べるために階下に向かう。食堂にはすでに食事をしている人達。カウンターに行くと女将さんが食事を用意してくれた。
「ちょっと、好きな席座って待ってね」
「はい」
少しすると食事が運ばれて来た。
「こっちはおチビちゃんのね」
「みゅーみっ!」
「ありがとうございます」
「お酒と量が足りなかったりおつまみは別料金ね」
「はい、分かりました」
「ごゆっくり」
スープとサラダにパスタ、カフェでオススメされたように美味しかった…何より、味も奇抜さはなく、違いはあれど馴染みのある物たちにホッとした。これならここで生きていける、改めてそう感じれた。
夕食を済ませ部屋に戻る。明日はギルドに行って冒険者登録をしなくては。
(自称が偽名でも良いって言っとったなぁ…?んん?何か忘れて、はっ?!)
「聖獣ちゃん?!!名前!私の名前、言ってないよね?!!」
「にゅっ?!みゅーうにっ!」
「そうじゃん!!そういえば自己紹介もまだだよ!!本当に全くあの自称は!!はぁ〜。…改めまして、聖獣ちゃん!私はユア。成宮結愛。聖獣ちゃんにはちゃんとユアって呼んで欲しいな。これからよろしくね、聖獣ちゃん」
「みゅあ!」
「聖獣ちゃんのお名前も考えなきゃだねぇ」
「んみゅう?」
「うん、名前。確かウィンドウが出てこいって念じると、わっ!?出たわ。半透明のいかにもゲームっぽい…ここの検索マークに調べたい事を入力して…うーん、聖獣、白虎、………ユゥイ。」
「みゅぃっ!!」
「イニシャル同じにしたくて結からとったんだけどどうかな?」
「みゆぅいっ、みゆぅい!みゆぅいっ!!!」
「気に入ってくれたのかな?ユゥイ!!」
「みゆぅいっ、みゆぅいっ!みゆぅいっ!!」
「ふふっ!ユゥイ!!」
『ぼふんっ』
「っえぇ?!!おっきくなった?!ユゥイだよ…ね」
「ふーん」
「言葉も声も違うけど…ん?頭に何かネームタグ見たいのが…わぁっ!?」
名前 ユゥイ
種族 聖獣
性別 無し? 追記聖獣には性別という概念が無いものもいるしあるものも…詳細は分かってない。世界って不思議〜!!
「…最後の一文うっっざ。確かに色々便利機能がどうとか言ってたけどこんなの。もう、マニュアルくれや。」
「んみゅうぅ〜?」
「戻ってるし、ダメだ。今日はもう良い、ゆっくり寝て明日また考えよう。幸い1ヶ月は遊んで暮らせるぐらいのお金あるんだし、今は一旦、取り敢えずは放棄で」
「んみゅ?」
「うん。放棄、放置?聖獣がいてくれたらすぐ死ぬとかも無いしお金も大丈夫だし一旦スルーで」
「みゅうー!」
「そう!スルー!!聖獣ちゃんはどこで寝る?枕元?お布団入る?」
「みゆっ!!」
ごそごそと布団の中に入り込み頭を出してまるで人のように寝転ぶユゥイ。灯を消して隣同士で横になる。寝てる間にふみつぶないかな…と考えていたら「ふぅん」と鳴きなんだか本当の猫サイズまで大きくなったユゥイ。
「聖獣って本当に不思議。これならつぶさないね!ってうすうす感じてたけど、やっぱり考えてる事何となく分かるんだね。今は何か申し訳なさそう?ベット狭いから?」
「んみゅう…」
「大丈夫だよ、狭いならくっついちゃえばから!!」
「んみゆぅう!!」
そう言ってユゥイに抱きつくと嬉しそうにしてくれた。嬉しさが伝わってくる。ユゥイは温かくてほんのりお花と太陽のいい匂い。良い夢見れそうだなと思っているといつの間にか安心して眠っていた。
次回は週明けを予定しています。




