8話 どぎまぎメモリーズ
今日も円香は朝食にありつくべくシャンティの部屋を訪ねると、
「暇ですねぇ……。」
「だねぇ……///」
室内ではシャンティとキラビが2人で寝そべって日向ぼっこをしていた。
「おは……キラビさん?」
「ああ円香ちゃん、おはようございますぅ……///」
キラビはカーペットの上でとろけたまま、顔だけ向けて円香に挨拶した。
「お、おはようございます……。」
「円香さんが来たということは、そろそろ朝ごはんの時間ですね。」
シャンティは起き上がると、『40分で支度する 国営放送お料理ママ伝説』のディスクを胸元に挿入して割烹着姿に変化した。
「シャンティちゃんカッコいい……!」
「えっへっへ///……サクッと朝ごはん作っちゃいますので、円香さんと待っていてください♪」
「はーい♪」
シャンティはキッチンに向かい、円香とキラビが2人きりになった。
「えっと……、随分と仲良しなんですね?」
「うん♪円香ちゃんと同じ、シャンティちゃんのお友だちだからね♪」
「へ、へぇ〜……。」
普通の友だちは朝から入り浸って朝ごはんご馳走になったりしないのでは……と思ったが、2人とも他に友だちがいなかったなと思い円香は追及をしなかった。
「もうシャンティちゃんのお友だちは円香ちゃんだけじゃないんですよぉ?」
「もしかして、対抗してます……?」
「はぁい♪ 生まれて初めてのお友だちをみすみす奪われるようなことはごめんですからぁ……♪」
キラビはほろ酔いでもしているかのような、上機嫌でねっとりとした調子で答えた。
(ん?『奪われる』……?)
円香はシャンティとキラビが友だちになった日、円香自身は友だち認定されなかったことと今の発言が引っかかっていた。
「あの……キラビさん、もしかしてですけど……。」
「はい?」
「『友だちは1人まで』って思ってません?」
「違う……の?」
円香の予想は当たっていた。
「別に友だちって何人いてもいいものなんですよ。」
「……………………。」
キラビは少しの間動きを止めて頭の中を整理していた。
「……つまり、円香ちゃんがシャンティちゃんのお友だちでも、キラビはシャンティちゃんのお友だちでいられる……?」
「全くもってその通り。」
「 」
キラビは口をあんぐりと開けて言葉を失っていた。
「まあ、その……だからと言いますか
「私とお友だちになりませんか!?」
キラビは円香の言葉を遮って食い気味に円香の手を握ってきた。
「あの…………。」
キラビは目にいっぱい涙を溜めて少し申し訳なさそうに円香を見つめた。
「じゃあお互いに2人目の友だちってことで……。」
「……!///」
キラビは心の底から喜びが滲み出すような、無垢な笑顔を円香に見せると、円香の両手を握りブンブンと振った。
「お、おお……。」
「朝ごはんできましたよー!」
シャンティが3人分の朝食を食卓に並べ終えたことを告げると、
「はーい♪♪」
キラビは握っていた円香の両手をほっぽって我先にと食卓の席についた。
「切り替え速……。」
円香も後を追い3人で食卓を囲み朝食に手をつける中で、円香は気になっていたことをキラビに聞いてみることにした。
「キラビも最近どっかの星から地球に来たの?」
「ふふ♪円香ちゃん、さっそくお友だちのキラビに興味津々だね♪」
「いやまあ、変形してたし地球人ではなさそうだなって。」
「あー……。確かにキラビは人ではないですね。」
「「え……?」」
「はっ!?」
キラビはなにか言ってはいけないことを言ってしまったという様子で慌てて自分の口を手で覆った。
「……といっても、キラビは自己修復機能もありますし、こうやって有機物を摂取したりもできるのでほとんど人みたいなものですね!」
キラビはベーコンを頬張り飲み込んで見せた。
「キラビさんってアン
円香はシャンティ咄嗟に手でシャンティ口を塞いだ。
「もがっ!?」
(本人が秘密にしようとしてること詮索しちゃダメでしょ!)
「……、」
円香が小声で諭すと、シャンティはコクコクと頷いた。
「まったく……。」
円香が手を離すと、
「キラビさんってアンドロイドなんですか?」
「おぃぃいい!!?」
円香の配慮は呆気なく無に帰した。
「アンドロイドですよ〜♪」
「あっさりバラすんかいっ!?」
キラビはまったく気にしていない様子でニコニコしていた。
「いや、じゃあさっきの『はっ!?』は!?」
「地球のお方で言う、ボケです♪」
「えぇぇ……。」
「ね?円香さんに突っ込ませると面白いですよね♪」
「はい♪♪」
2人のやりとりを見るに、シャンティとキラビは円香の知らないところでかなり打ち解けていた様子だった。
「まったく、いきなり食事中人のひとの口を塞ぐなんて……。」
「円香ちゃんの鬼!悪魔!悪代官!……だね♪」
「悪代官そこに入るの?」
「はぁ。円香さん……そんなだから私たち以外に友だちできないんですよ?」
「そ、それがなに……!?」
「円香ちゃん……。」
「やめてキラビさん、同情されるのがいちばん辛い。……っていうか主犯だよね?」
「ましてや恋人なんて!」
「恋人は関係ないで
シャンティは両手で大事そうに『どぎまぎメモリーズ』のゲームディスクのケースを持ち、キラビがそれを両手で指差していた。
「……。」
「と言うわけで今日は『どぎまぎメモリーズ』をやりましょう。」
「やろう……!」
「『どぎメモ』やりたいだけかいっ!」
『どぎメモ』は恋愛シミュレーションゲーム『どぎまぎメモリーズ』の略称である。
3人は朝食を終え、円香が『どぎまぎメモリーズ』のゲームディスクをハードにセットするとテレビの画面が明るくなって、制服姿の美少女がわらわらと映し出された。
「お〜。」
「『女子高生』の制服……円香ちゃんと同じだね♪」
「これをプレイすれば、円香さんの高校生活の良いモデルになるかもしれませんよ?」
「う〜ん、そのゲームにリアルな高校生活はないんじゃないかな……。」
『どぎメモ』既プレイの円香は苦笑い以外の気の利いた反応ができなかった。
「なんだかワクワクしちゃうね♪」
シャンティが持っていたコントローラーのスタートボタンをキラビが押した。
『どぎまぎメモリーズ♪』
新しいセーブデータでゲームを始めると、最初は舞台である高校や主人公の境遇について軽い説明が入り、やがて操作可能なパートに移った。
「行き先が選べるみたいですね。『まずは学校に行こう!』と出ていますし、行き先は学校で!」
「あ
「円香ちゃん……?」
キラビが円香の反応を不思議がっている間にも、ゲーム画面のテキストはどんどん流れていき、
『今日もいい天気だな……。』
『上から来るぞ、気をつけろ!』
「「え、上?」」
『なんだ!?空から何か……うわぁぁああ!?』
『YOU DIED』
「「何で(ですか)ッ!?」」
シャンティは台パンした。
「さっき行き先を選ぶ所に『占い』の項目があったでしょ?あれ無視すると死ぬよ〜。」
リスタートした画面の端を指差して円香は指摘した。
「なんて初見殺しな……!?」
「このゲームは『占い』や後で出てくる『親友』から情報を得るのが攻略に必須なんだよ。」
「諦めないで。もう一回だよ、シャンティちゃん!」
「ぐぬぬ……もう一回です!」
気を取り直して再びゲームを始めたシャンティだったが……
『危ないっ!ペットの虎が……!?』
『なんだ?……うわぁぁぁああ!!』
『YOU DIED』
「は……?」
『こし餡派とかあり得ないんだけど。粒餡の良さ、教えてあげる。』
『もが……!?これ以上、食べられ……』
『YOU DIED』
「はぁっ!?」
『体育倉庫で2人っきりなんて、ちょっとロマンチックだね……///』
「こ、こんどこそ……!」
『最後に見るのがきみの顔かぁ……。』
『み、水……。』
『YOU DIED』
「あ"ぁ"ぁ"ぁ"……。」
『イルミネーション、もうすぐだね……///』
「こ、これは……今度こそ!」
『綺麗……///』
『あれ?空に何か……。』
「おい待て。」
『円盤?』
『な、なんだ身体が浮いて……攫われるーーー!?』
『きみーーー!』
『YOU DIED』
「 」
シャンティは重ね重ね台パンした。
「なんっなんですかこの理不尽はぁぁあ!!」
「高校生って危ないんだね……。」
「現実の高校生はこんなイベントないからね?」
「あってたまりますか……ッ!」
「ほ、ほら!もうすぐお昼だし、気分転換に買い物行こ?」
「もうそんな時間かぁ。」
「お昼……そうですね。気持ちを切り替えましょう。」
3人が玄関に行くと、
「ちょっとだけ待ってください。」
シャンティが円香の部屋に戻り、ゲームハードから『どぎまぎメモリーズ』のディスクを抜いて自分の胸元に挿入すると『どぎメモ』のJK制服姿に変化した。
「え"……シャンティ、それ使うの……?」
「可愛い〜♪」
「えへへ///一回着てみたかったんですよね♪」
「ライオンとか来ても知らないよ?」
「大丈夫ですって。無力な主人公と違って、私ならライオンにも勝てますし!」
「……2メートルは離れてね?」
「ほらほら、早く
シャンティが元気よくドアを開け放って外に駆け出すと、円香は進行方向に小さな影を1つ見つけた。
(ん?影……いいっ!?)
「行きま
円香はだんだん大きくなっていく影の正体を見上げると、それはどこからともなく降ってきた金ダライだった。
「シャンティ、上……!?」
「その流れって
「もう、脅かさないでください
やがて金ダライはシャンティの頭上に……、
「よ"ッ!!??」
直撃した。
「「「あ……。」」」
背景、おばーちゃん。
おばーちゃんの高校生活はどんなでしたか?これから高校生になる私は……とりあえず他人の忠告は聞こうと思います。




