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5話 友情もコンビニエンス

中古ゲームショップの帰り道。




「いやぁ〜、地球にはあんな素敵な場所があったんですねぇ♪」


「良いでしょ、中古ゲームショップ。」


「はい♪あれ、ぜ〜んぶに素敵な物語の記録や、前の持ち主の思い入れがたっぷり詰まってるなんて……!」


「それが吉と出るか凶と出るかは、帰って起動してみるまでわかんないけどね……。」




円香はシャンティが大事そうに抱えているゲームディスク『40分で支度する 国営放送お料理ママ伝説』のケースに視線を落とした。




「きっと大丈夫ですよ!ちゃんと肌も隠れてますし♪」




ケースには一本の出刃包丁を持った割烹着姿の主婦の写真がデカデカとデザインされていた。




「基準そこなんだ……。」


「1ヶ月くらい裸エプロンで生活してみます……?」


「……ごめん。」


「わかればよろしいです♪」


「……あ、コンビニ寄っていい?」


「良いですね♪」




円香とシャンティは2人でコンビニに入店した。




「いらっしゃ……。」


「「?」」




声をかけてきた店員さんが途中でフリーズした。




「……よいしょ。」




かと思ったらレジを飛び越えて2人の目の前に出てきた。




「この間の方……ッ!」

「「え……?」」




突然ギュッと手を握りキラキラした眼差しを向けられた円香とシャンティは呆気に取られていた。




「……あれ?覚えていませんか……。」




店員さんは2人の反応を見て手を離すと、ガックリと肩を落とした。




「そうだ!これを見て貰えば……ッ!」




店員さんはまっすぐ左腕を掲げると、




『コンバットオペレーション2 ガン・ハイブ。』




無機質な機械音声がどこからともなく流れ、店員さんの左腕がリボルバーの銃弾を収納するシリンダーのような形状に変化した。




「ど……、どう、ですか……?」




店員さんは物騒な左腕を右手で大事そうに抱えて2人の反応を伺った。




「いや、覚えてます……というか忘れられないと言いますか……。」


「シャンティ撃たれそうになってたもんね。」


「思い出して頂けましたか……ッ!」




店員さんは2人の手を握ろうとして、左腕が物騒なままなのに気づくと慌てて元に戻した。




「それで、私たちに何か……。」


「昨日の河川敷での喧嘩、拝見しました♪手に汗握る……正にナイスファイトッ!」




店員さんは2人の前でシャドーボクシングした。




「ええっと……、どうも。」


「西陽をバックに河川敷で殴り合いの喧嘩をすると友情が深まる……。本当だったんですね♪」


「あ〜……、そういえばそんなこと言ってましたね。」


「良いなぁ……♪///」




店員さんは頬を紅くしてうっとりした目で2人を見つめた。




「ど……、どうも……?」


「……はっ!?すみません!お買い物でしたね!?」




店員さんは我に帰ると慌ててレジを飛び越え、店員の定位置に戻った。




「…………変わった方、ですね。」


「……だね。」




円香とシャンティは店員さんに生暖かい眼差しで見守られながらカゴに商品を入れ、会計しにレジ前に立った。




「……はっ!?お会計でしたね!?///」


「あはは……。」




2人は会計を済ませ、店員さんに背を向けると、




「良いなぁ……///きっとこの後、手とか繋いじゃうんだろうなぁ……♪///」


「繋ぎませんからっ!?///」




背後から聞こえた独り言に思わず突っ込んでしまう円香であった。




「す、すみません……!?」


「円香さん、あんまり店員さんいじめちゃダメですよ?」


「これ私が悪いの……?」


「そーですよ?こういうときは、お友達になりたがってるって相場が決まってるんです♪」


「いやいやそんなわけ




「……!///」




……相場は決まっていた。




「私はシャンティ・シャルロットです♪」


「わ……、ワタシ、キラビです!キラビ・ハーニカムですっ!」




店員さん、改めキラビは目を輝かせてシャンティの手を握りブンブンと上下に振っていた。




「そ、そんなに嬉しい……の?」


「はい♪♪人生初のお友だ……、




キラビは『お友だち』と言いかけて、握っていたシャンティの手を離した。




「……、」




シャンティはキラビの手を握り返すと、




「私は2人目です♪」


「シャンティちゃん……ッ!!」




キラビは溢れそうなほど目に涙を溜めて微笑んだ。



「じゃあ、足繁く通わないとだね。」


「ですね♪」


「あ、あのぉ……///」




キラビはモジモジしながら訪ねてきた。




「わ、私とも……その……あうぅ///」


「キラビさん、円香さんとも友達になりたいのでは?」


「私も?別に良




「喧嘩しませんか!?///」




「「……え?」」






というわけで、




キラビさん……ほ、本当にいいんですね……本気で。」


「うん♪」




場所変えて河川敷。

シャンティとキラビが間合いをとって相対すると、




「『バトルシエ闘度100』……、




シャンティは持参した『バトルシエ闘度100』のゲームディスクを自身の胸元にあるディスク口に挿入し、




「……、」

『コンバットオペレーション3』




キラビは右の拳をまっすぐ突き出し、




「シュガー・パティシエール!」

『スピア・ホーネット。』




シャンティは白とピンクを基調としたポップでスイートなショートドレス姿に変化、キラビ右前腕は長さ1メートル程のしろがね色の槍状に変化した。




「何でこんなことに……。」


「一対一で真正面から本気の拳を交えて胸の内をぶつけ合う……。あぁ……、地球の方はこうして友情を育むんですね♪///」


「キラビさん……胸、お借りします!」


「うん♪シャンティちゃん。いっぱい喧嘩しようね!」




シュガーに扮したシャンティと右腕を槍に武装したキラビが大きく踏み込み、鍔迫り合った。




「あ〜あ、始まっちゃったぁ……。」




円香はちょっと離れたところで腰を下ろして遠目に2人を見守っていた。




「たぁぁあッ!!」




シャンティが長めの傘くらいのサイズがあるクリームの絞り機をバットのように振り回し圧をかけるが、




「……、」




キラビは一歩も後ずさることなくシャンティの攻撃を全て槍状の右腕のみで捌いていた。




「キラビさんは腕が武器になる感じか。宇宙人にも色んなのがいるんだなぁ……。」




円香は呑気にキラビの戦いぶりを観察していた。




「……ッ。」

「ぐっ……!?」




シャンティが絞り機の銃身でキラビの強烈な突きを受けたが、威力を殺しきれずに大きく後ろに飛ばされた。




「……、」

『コンバットオペレーション2 ガン・ハイブ。』




キラビがまっすぐ左腕を突き出すと、槍状の右腕が元に戻り、左腕がリボルバーの銃弾を収納するシリンダー状に変化した。




「右腕を戻した?同時には使えないのかな……。」




キラビは空中に浮かされたシャンティに照準を合わせて、




「ハンド、ガン……ッ!」




左腕の銃口から注意力の弾丸を数発射撃した。




「なんの……ッ!」




シャンティも空中で絞り機の銃口から光弾を放ってキラビの射撃を相殺した。




「威力は互角……。」




「……、」




シャンティは着地すると、




「まだまだいきますッ!」




絞り機から光弾を放ち続けた。




弾幕の張り合いで膠着(こうちゃく)するかと思って円香がボンヤリと2人を眺めていると、




「……え?」




撃ち合いに応じるかと思っていたキラビが一切左腕を使わず、シャンティの光弾を避けながら間合いを詰めていた。




「なんで、右腕も使わずに……?」




円香はキラビが武装を切り替えないことに違和感を覚えている間にキラビはシャンティに触れられる間合いまで踏み込んでいた。




「ゼロ距離で受けてみますか……ッ!?」

「いいねぇ……♪」




シャンティとキラビはお互いにゼロ距離で射撃した。




「……ショット。」

「ッッ!!??」




2人の射撃は確実にお互いに直撃した。


……けれども、キラビは肩に光弾を1発受けて仰け反ったのに対して、




「がは……ッ!?」




シャンティは全身に攻撃を受け、射撃の威力で再び空中に浮かされた。




「なにあれ……まるで、




……散弾銃(ショットガン)


キラビが呟いていた『ショット』という言葉に対応している。




「キラビは左腕の射撃を色んな形で撃ち分けられる……ってこと?」




円香はキラビが間合いを詰めている間、一切射撃を行わなかったことを思い出した。




「ショットガンが最も威力を発揮するのはゼロ距離だけど、途中で牽制しなかったのはショットガンの存在を隠すため……?」




……だとしたら、ハンドガンで牽制すれば良いという考えが円香の頭をよぎった。




「……違う。それができない理由があるんだ。」





「ぐぅ……ッ!まだまだですッ!!」




シャンティは『甲子園!怒涛!!』のゲームディスクを胸元に挿入して、背中に大きく『怒涛』と書かれた野球のユニフォーム姿に変化した。




「……たぁぁあッ!」




シャンティは豪速球のストレートをキラビに投げつけた。




「……、」




キラビは迎撃せずに身をかわして回避した。




「迎撃しない……?そうか。」




円香の頭の中で一つの結論が出された。




「……『インターバル』だ。」




そう、キラビは左腕の射撃をホイホイと連続で切り替えることができないのだ。


だからショットガンを使うために接近するときはハンドガンの牽制ができないし、ショットガンを撃った直後のシャンティのストレートをハンドガンで迎撃できない……躱すしかないのだ。




「……まてよ?『躱した』ってことは、




円香の推理通りなら、キラビは今まさにキラビは次の弾に切り替え中ということになる。




「これで決めます……ッ!」




着地したシャンティは投球のフォームに入ると、ボールを持った右手が赤く煌めいた。




「『逸球……!




シャンティは、昨日妹に放った必殺技『逸球、流れ星』で勝負を決めに行くつもりのようだ。




(威力の上がった遠距離の豪速球なら、おそらくキラビさんのハンドガンとぶつかっても決定打になり得る……!)




「……♪」




円香はキラビの口角が上がっていることに気づいた。




「え、なんで笑って……、まさか!」




(キラビさんには『まだ見せていない弾がある』……!?)




円香はキラビの言動を回想した。




〜〜


『一対一で真正面から本気の拳を交えて胸の内をぶつけ合う……。あぁ……、地球の方はこうして友情を育むんですね♪///』


〜〜




「『真正面から』、『本気の拳を』、『交えて』……。」




円香は今まさにキラビが言っていたシチュエーションが目の前で起ころうとしているんじゃないかと悟った。




「『流れ星!!』」




シャンティは赤く煌めく豪速球のストレートを全力で放った。




「…………、マグナムッ!!!」




キラビはシャンティの豪速球目掛けて、左腕の銃口から、腰の入った明らかに重い銃撃を1発繰り出した。




「何あれ……ッ!?」




キラビが放った弾丸はシャンティの豪速球を跡形もなく爆散させ、




「……ッ!!??」




シャンティのこめかみすれすれを通り抜け空の彼方へと消えていった。 




「……ま、参りました。」




シャンティは腰が抜けてその場にへたり込んだ。




「シャンティちゃん!!」




へたり込んだシャンティのもとにキラビが駆け寄り、シャンティを思いっきり抱きしめた。




「やった、やったよシャンティちゃん♪♪」


「オ…オメデトゴザイマス。」




唐突に始まったキラビとの喧嘩は、シャンティの降参で幕を閉じた。








背景、おばーちゃん。


コンビニの店員さんが、なんか異様に強かったです……。

御茶混市(おさまし)はけっこうとんでもない場所なのかもしれません。

でも私、ここで強く生きてみようと思います!

……友だちもいるしね♪

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