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14話 ワナビー☆強く

新学期も始まり、円香達が自宅で『ウェットボクシング』に興じている頃……




「はぁ……、はぁ……。」




キラビは1人、人気(ひとけ)のない河川敷に来ていた。




「もう一度!……『コンバットオペレーション……!




キラビは息を整えると、両腕を前に突き出し、いつも片手ずつ行っている武装の両腕同時展開を試みた。




「『23 ガン・ハイブ、スピア・ホーネット』……!!」




キラビが突き出した左腕はシリンダー型の銃身に、右腕は槍状に武装された。




「はぁ、はぁ……。ここまでは、良い……!」




キラビは武装を展開した時点ですでに額に汗をかき、息を切らしていた。




「……ハンド、




キラビは側を流れる川に向かって左腕を構えた。




「ガ




キラビは中威力の『ハンドガン』での射撃を試みたが、超高威力の『マグナム』が出力され、反動で大きくのけ反りバランスを崩した。




「なんで……ッ!?」




両腕を武装したせいで地面に手をつけなくなっていたキラビは、なすすべもなく背中からその場に倒れた。




「…………なんで。なんで、上手くできないの……!」




キラビは武装した両腕で悔しさを背後の地面に叩きつけた。




(右腕の『スピア・ホーネット』と左腕の『ガン・ハイブ』……まともに使える武装はこれしかないのに……!)




キラビが見上げる空が潤み、歪んだ。




「なーにしてるの?」




滲んだキラビの視界に、上から逆さまに1人の女性の顔が覗き込んできた。




「…………シュガーちゃ


「ちょっと待った。」




突然現れた女性、改めシュガーは自分の口に人差し指を立てて、『静かに』とジェスチャーした。




「?」




キラビはとりあえず言われるがままに黙ってシュガーを見上げると、シュガーは飛び退いて適切な距離をとり、




「君にワンダーとってもスイート!最強最高の菓子職人……!『シュガー・パティシエール』!!」




続けざまに名乗った。




「……それ、いつもやってるの?」


「ええ♪何度見たってありがたいでしょ☆」




シュガーはキラビにバッチバチのウインクをして見せると、キラビの身体を抱き起こして座らせ、自身もキラビの横に腰を下ろした。




「ありがとう……。」


「アナタ。面白いことしてるのね?」


「うん。もっと強くならなきゃいけないから……!」


「強く、『ならなきゃ』……ねぇ。」




シュガーは武装されたままのキラビの両腕に視線を落とすと、再びキラビの顔に視線を戻して微笑んだ。




「なんで?」


「『なんで』って、シュガーちゃんも見たでしょ?入学式のとき……




「……zzZ」




「シュガーちゃん!!??」




キラビが思いの丈を語ろうとした時には既に、シュガーはスヤスヤと寝息を立てていた。




「……ん、もう朝ぁ?」


「全然お昼だよぉ!?」


「……ぁぁ、ごめんなさい。最近時差ボケ気味で。」


「最強のシュガーちゃんにも弱点あるんだね……。」


「弱さは愛嬌、よ☆」




シュガーはキラビにバッチバチのウインクをしてみせた。




「最強名乗ってる癖に……。」


「それはそれ、これはこれよ。ジャンケンだって、チョキとかパーとか使い分けるでしょ?」




シュガーは緩く握った両手の拳を胸の前に持ってくると、高速で1人ジャンケンをしてキラビに見せた。




「じゃん……けん?」




キラビはジャンケンを知らなかった。




「地球の遊び♪」




シュガーは自分の両手を使って、グー、チョキ、パーの三すくみを使って戦うことを実演し、『最初はグー、ジャンケンぽん』の掛け声で行うことを説明した。




「……ま、アナタが腕の形を変えて戦うようなものね♪」


「……。」




キラビは視線を落とし、自分の両腕を交互に見つめた。




「今やってる1人ジャンケンは脳トレにもってこいなんだけど、ものすご〜く考えることが多くて他のことまで頭が回らないのよね〜。」


「そうなんだ……。」


「アナタだってそのグーとチョキ同時に出すので精一杯でしょ?」




キラビはさっきの特訓で左腕の制御が効かずマグナムが暴発したことを思い出した。




「まあそれは良いとして……。せっかくだしやってみましょ?ほら、その辛そうなの引っ込めて……!」


「……うん。」




キラビは頷くと、両腕の武装を解除した。




「……ふぅ。」


「まずは練習ね?まずは右手でグー、チョキ、パー。」


「グー、チョキ、パー……。」


「次は左手!グー、チョキ、パー。」


「グー、チョ……チョキ……パー……。なんか変な感じ……。」


「今度は両手で!グー、チョキ、パー。」


「グー、チョキ、パー……あれ?」


「左手だけでやるより簡単?」


「う、うん……!」


「じゃあいくわよ?最初はグー、


「「ジャンケン、ぽんっ!」」




シュガーはチョキを、キラビはパーを出していた。




「シュガーの勝ちね♪」


「負けちゃった……?」


「残念だったわね〜?パーを3つ出せばチョキにも勝てたのに……。」


「何それ?」


「ローカルルール♪負けの手でも数で押せば逆転できるのよ♪」


「でもシュガーちゃん、地球人の手は2つしかないよ?」


「そうね。だから『勝てないものは勝てない』ってことなのかも?」


「なにそれ。」


「じゃあここで問題!ジャンケンは『負けの手でも3つ出せば逆転できる』のなら、あいこの手……、グーでグーに勝つにはどうすれば良いかしら……☆」




「グーを……2つ、出せばいい……?」


「そーゆーこと☆」




シュガーは得意げにバッチバチのウインクをしてみせた。




「…………何それ、めちゃくちゃだよ♪」




キラビが吹き出した。




「アナタが言ったんじゃない♪……でもさっきの辛そうなのよりは良いんじゃない?」


「……そんなに辛そうな顔、してた?」


「さあね。」




シュガーはスクッと立ち上がると、大きく伸びをした。




「良いなぁ……///」


「ん?」


「はっ!?ごめんなさい……///」


「いいのいいの、言ってごらんなさい。ん?」


「……私ね、




キラビも立ち上がってシュガーと目線を合わせた。




「いつか、立派な女王になるためにここ、地球に来たの。」


「ということは、今のうちに仲良くしといた方がお得……?」




シュガーは眉間に皺を寄せ腕を組み、考える仕草をした。




「シュガーちゃんはとっても面白くて、俗で……


「悪口……?」


「優しくて、つ……




キラビはシュガーをまっすぐ見つめていた視線を下げ俯いた。




「つ?」


「……。」




シュガーに聞き返され、少し黙っていたがキラビは再び顔を上げ、一瞬シュガーの瞳を強く見つめると、




「……この先は、今は言わない♪」




朗らかにはにかんでみせた。




「……そう。」




シュガーはキラビがなにか吹っ切れたことを察すると、河川敷をゆっくりと歩き、ランウェイから帰る女優のようにある一点で立ち止まった。




「……シュガーちゃん?」


「……。」




シュガーが目を瞑り大きく息を吸うと、




「『ステラベリーブレス』……!」




左手首に着けていたブレスレットが虹色に発光した。




「『ベリーブセイバー』!」




虹色から緑色へと変わった光に包まれたシュガーのブレスレットは、手の甲の位置からキラビの槍と同じくらいの長さにまっすぐ伸びた剣の様な形状に変化した。




「シュガー……ちゃん?」


「やるわよ!最初は、グー!」




シュガーはブレードを装着した左腕をキラビに向かってまっすぐ突き出し、凛々しい笑顔を見せた。




「……なんてね☆」


「…………、うんっ♪」




キラビは駆け出し、シュガーの正面に位置取った。




(2本しかない腕で相手のグーに確実に勝つには……、)




キラビはシュガーがブレードを装着した時を真似て目を瞑り、大きく息を吸い込んだ。




「『コンバットオペレーション……、




(グーを2つ出せば良い……!)




「『33(デュオスリー)……ッ!!』」




キラビの両腕に、同時に槍状の武装が展開された。




「『スピア・ホーネット』……ッ!」


「やったじゃない♪」


「うん♪これなら、さっきと違って考える余裕もある!……ちゃんと使えるよ!」


「良かったわね♪……じゃあ、名乗るわよ!」


「え……?」


「戦う前に名乗る……!これ常識ね?」




シュガーは空いていた右手の人差し指で何もないところをクルクルとかき回した。




「そう、なの……?」


「だから……、」




シュガーは飛び退いて適切な距離を取り直した。




「君にワンダーとってもスイート!最強最高の菓子職人……!『シュガー・パティシエール』!!」




「に、2回目だよ……?」


「ええ♪何度見たってありがたいでしょ☆アナタの名前、教えて♪」




シュガーはまたまたキラビにバッチバチのウインクをして見せた。




「教えるのは良いけど……シュガーちゃんみたいなカッコいいのなんて、できないよ!?///」


「カッコ……いい……!///」




キラビは『カッコいい』という言葉を反芻し余韻に浸るシュガーを見て、拒否権などないことを悟った。




「き、き、……!///」


「フフン♪」


「キラビ……ハーニカム!///……いつか、シュガーちゃんみたいな最強の女王になってやる……ッ!」


「ほぉ……。」




・・・・・・。




「あの……なにか、言って……ください///」


「…………()りましょうか♪」




シュガーは有無を言わさずキラビに向かって踏み込んだ。




「せめてコメントしてよ〜!?//////」




キラビも応戦し、日が暮れるまで繰り広げられた緊張感のない戦闘の中で、2人は爽やかな汗を流した……。






「はぁ……、はぁ……。」


「いや〜、やったやった♪」




2人は大の字になって河川敷の空を仰いでいた。




「酷いよシュガーちゃん……、確実に勝てるとか言っておいて、一本も取らせてくれないなんて……。」


「それは一般論ってヤツよ……!相手は誰だと思ってるのかしら……!?」


「シュガーちゃん。」


「そこは……ほら?カッコよく決めさせてくれない?」


「フフ♪……シュガー・パティシエール!」


「……。そーゆーこと☆」


「「アハハ♪」」




ひとしきり笑い合うと、2人は河川敷で別れを告げ、各々の帰路についた。








円香の家。




「ええ〜〜!?またシュガーに会ってたの!!??」


「うん♪一本も取れなかったけど……///」


「連絡先は……!?」


「聞いてないっ!」


「そん、な……。」




円香は膝から崩れた。








背景、おばーちゃん。


おばーちゃんには憧れての人っていますか?

……って、シュガーだったよね!

最近、私の友だちがちょくちょくシュガーに会っているみたいです。


追伸:シュガーの連絡先を知っていたら教えてください。

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