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11話 円香アドミッション

「……よし♪」




パリッパリのおニューな制服で全身キメて、姿見の前でくるんと一周。




「……今日もバッチリ美少女♪」




円谷円香(つぶらやまどか)は、今日から高校生になりますっ!




「いってきまーす!」


「「行ってらっしゃい♪」」




この春、私 円谷円香(つぶらやまどか)は半ば家出みたいにこの御茶混(おさま)市で一人暮らしを始めた。


成り行きでお隣さんとの壁がぶち抜かれたり、こっちに来てからできた友だちがもれなく宇宙人だったりしたけど……まあなんとかなるでしょ!




「〜♪」




円香は鼻歌を奏で軽い足取りで新居を出発した。




「円香さん、楽しそうでしたね♪」




円香の部屋の玄関で見送りをしたシャンティは、地球で初めてできた友人の小さくなっていく背中を見てこの数日間の感慨に浸っていた。




「円香ちゃん、無事に帰って来られる……よね?」




シャンティの隣にいたキラビは、心配そうな面持ちで2人目の友人の高校生活を案じていた。




「『無事』……?」


「高校って、空から金ダライが降ってきたり粒餡で窒息させられるような場所なんだよね?」


※8話参照




「そ、そうでした……ッ!?円香さんがライオンにしゃぶられたりUFOにお持ち帰りされたりしたら大変です!?」


「うん!ここはこっそり円香ちゃんを護衛しよう……ッ!」




恋愛シミュレーションゲーム『どぎまぎメモリーズ』、通称『どぎメモ』で偏りすぎた高校の知識を得ていた2人は円香の入学式を陰ながら見届けることにした。




「そうと決まれば……、」




シャンティは『どぎまぎメモリーズ』のゲームディスクを自身の胸元に挿入すると、作中に登場するJK制服姿に変化した。




「キラビさんちょっと待っててください。」


「うん……?」




シャンティは円香の部屋に戻ってテレビのリモコンを手に取り、リビングのテレビに向けてえいやっとボタンを押すと画面には『どぎメモ』の占い画面が表示された。




「へ〜すごい。TVと連動するんだぁ?」


「『どぎメモ』の時代にはスマホとかありませんでしたからね。」




シャンティは淡々とTVのリモコンを操作すると、『占い』にカーソルを合わせて決定した。




「……よし。円香さん、今日の学校では特にイベントは踏まないみたいです♪」


「すごぉい、そんなこともわかっちゃうんだ?シャンティちゃん、ほんとに色々できるんだね♪」


「はい!こっちに来てからは、この能力に戦う以外の使い道があって楽しいです♪」




シャンティは白い歯を見せて無邪気にニッと笑った。




「それじゃあ、円香さんを追いかけましょうか?」


「うん♪」





2人は円香を追って、御茶混(おさま)高校の近くまで移動した。




「円香さんには気づかれない方が良いですかね……?」


「それなら……ちょっと遠くから見守ろっか♪」




キラビとは建物から建物へと跳び移り、高校の体育館が見える向かいの校舎の屋上に到達した。




「ここなら中が見え……うわっ!?」


「どうしました?」




シャンティがキラビに追いつくと、屋上には既に先客がいた。




「……zzZ」




白とピンクを基調としたポップでスイートなショートドレス姿の先客は、屋上に横たわってスヤスヤと寝息を立てていた。




「まさか場所取りしてる方がいるとは……。」


「起こしてあげた方が良いかなぁ?」


「私たちと同じで見守りに来ているのなら、入学式が始まるときに起こしてあげればいいですよ。」


「それもそうだね♪」


「……、」




シャンティは先客を見つめたまま、腕を組んで唸っていた。




「どうしたの?」


「この人、どこかで見たような……。」


「どこかで?」


「…………、あ!」




シャンティは携帯していた『バトルシエ闘度100』のゲームディスクのケースを取り出した。




「この人、シュガー・パティシエールです!?」




キラビが先客の服装とゲームディスクのケースに描かれた『シュガー・パティシエール』を見比べると、確かに同じ装いをしていた。




「ほんとだ……。」

「けど……、」




シャンティが先客をさらによく観察すると、先客はケースに描かれたシュガー・パティシエールよりも手足が長く、胸は膨らみ、大人な身体つきをしていた。




「年齢が……。」


「じゃあ本人に聞いてみよ?」




キラビは先客のすぐそばで膝立ちになるとと、自分の口に手を添え、先客の耳元で囁いた。




「シュガーさんシュガーさん、あなたはシュガー・パティシエール?」


「普通に起こしてあげればいいのでは……。」




「むにゃ……シュガーは最強なんだから……z」




キラビは先客から顔を離し、シャンティと顔を見合わせた。




「本物だ……っ!?」


「いや、そうとは限らないのでは……。」




「zz……はっ!?」




先客がシャンティのツッコミに反応して目を覚ました。




「……。」


「「……。」」




先客は少しの間キラビとシャンティを見つめると状況を察したのか、頬を赤くして2人に背中を向けた。




「うそっ!?見られた……!?最強のシュガーともあろう者が、人前で時差ボケにやられて眠りこけてる姿を見せるなんて……!!///」




「ほらシャンティちゃん!自分のことシュガーって言った!絶対本物だよ!?」




キラビは立ち上がると目を輝かせてシャンティを見つめ先客をビシッと指差した。




「本物は自分のことシュガーって言うんですかね……。」


「キラビはキラビのことキラビって言うよ?」


「……そうでしたね。」




「話はまとまったようね!」




2人が顔を見合わせていると、いつの間にか先客が2人の目の前に立っていた。




「フッフッフ……ご明察よ♪この私こそ……!」




先客は飛び退いて適切な距離を取った。




「なんで一回近づいたんですか……。」




先客は『質問には答えない』と言わんばかりに大きな咳払いをした。




「君にワンダーとってもスイート!最強最高の菓子職人……!『シュガー・パティシエール』!!」




先客、改めシュガーは痛快な口上と決めポーズで2人に自己紹介をしてみせた。




「「お〜。」」


「だ、か、ら……、」




シュガーは拍手している2人に詰め寄った。




「このシュガーが不覚にも時差ボケにやられて人前で眠りこけてたことは、墓場までの秘密よ☆」




シュガーは満面の笑みで2人にバッチバチのウインクをしてみせた。




「ほらぁッ!やっぱり本物だよシャンティちゃん!」


「で、です……ね。」


「シュガーとの約束ね☆」


「はーい♪キラビ、キラビです!」


「可愛い名前ね♪」




シュガーがキラビと手を握ってキャッキャしていると、



「……はっ!?」




シュガーは突然、目を見開いてハッとした。




「もうすぐまど……入学式が始まるわ!?」




キラビとシャンティが校舎の時計を見ると、時計の長針がてっぺんの10分前を指していた。




「もうそんな時間なんですね。」


「アナタたちも見るんでしょ?一緒に見守りましょ♪」


「うん♪」




3人は仲良く横並びに腰を下ろして大窓の中の体育館を見守った。




「……なんだ、先客か?」




後ろから聞こえたドスンという重い着地の音と声に振り向くと、そこには円香と同い年くらいに見える、限界まで袖とスカートの裾がつめられた円香の高校の改造制服を着たショートカットの銀髪に銀目が印象的な少女が立っていた。




「あら、アナタも見守り?」


「うげ……ッ!?」




遅れて来た銀髪の少女はシュガーの顔を見るなり苦虫を噛み潰したかのような渋い表情になった。




「……失礼ね。」


「シュガーさんの知り合いですか?」

「お友だち?」


「う〜ん……、




シュガーはまっすぐ伸ばした人差し指で顎を触った。




「ファンね☆」

「ファンじゃねーよッ!?」


「アナタもこっちで一緒に観ますか?」




シャンティは空いている自分の隣をポンポンと叩いた。




「……、」




銀髪の少女は校舎の時計を見ると、無言でシャンティの隣に腰を下ろした。




「……シュガーの隣よりはマシか。」


「フフ♪これは調教しがいがありそうね……♪」




シュガーは身体を前に乗り出して銀髪の少女の顔を覗き込んだ。




「うっせー。良い機会だし、相手なら後でしてやるよ。」


「喧嘩するのぉ!?」




キラビは目を輝かせてシュガーと銀髪少女を交互に見た。




「ん〜…………、まあ、入学式の後なら良いわ☆」


「わぁ……!」


「なんだこいつ、バトルジャンキーかよ……。」




校舎の時計の長針がてっぺんを指した頃、体育館には円香と同じ制服を着た集団がゾロゾロと雪崩れ込んだ。




「……チッ。」




少女は不機嫌そうに見守っていたが、少し経つと他の3人と同じく無言で体育館の中の一点に視線を集中した。






4人が静かに見守っていると、やがて制服の集団はゾロゾロと体育館を後にした。




「さーてと、」




銀髪の少女は立ち上がって軽くストレッチすると、




「やるか!」




準備万端という様子で数メートル離れ、シュガーに向かって拳を突き出した。




「シュガーは別に構わないけど……、




シュガーも立ち上がると、シャンティとキラビの間に回り込んでそのまま2人の肩に手を置いた。




「まずはこの子達を倒してからね☆」


「え……?」

「はあっ!?」

「良いのぉ!?」




シャンティと銀髪の少女とキラビが思い思いの反応をしていると、シュガーは続けた。




「あら?シュガーならイチコロなんだけど……アナタには厳しかったかしら?」




シュガーは挑発的な笑顔で銀髪の少女を煽った。




「チッ……。いいぜ、やってやんよ……!」


「いいのぉ!?やった♪」


「なんで私まで……。」




浮き足立って快諾するキラビに引っ張られてしぶしぶシャンティも銀髪の少女の向かいに位置取った。




「オメーらに恨みはねえが……、痛い目見て貰うぜ?」




銀髪の少女の銀色の瞳が熱した鉄のように赤く輝くと、同様に両腕が熱く光り出した。




「共闘だよシャンティちゃん♪」


『コンバットオペレーション3 スピアホーネット』




キラビが右腕を突き出すと、どこからともなく無機質な電子音声が聞こえ突き出した腕が1メートルほどの槍状に武装された。




「あの子は腕が光って……、高熱かしら?……キラビちゃんは身体の一部を武装……と言うより変換かしら?2人とも面白いことができるのね。」




シュガーは普段円香がしているように、顎を触り誰に言うでも無い小声でブツブツと分析に(ふけ)っていた。




「あわわ!?こういうとき円香さんなら……、近づきたく無いから『バト…………、




シャンティは『バトルシエ闘度100』のゲームディスクを使いかけたが、一瞬シュガーの方を見て躊躇した。




「あの子は……。」


「あわわ!?ええっと……、これでっ!」




シャンティはシュガーと目が合うと慌てて目を逸らして『40分で支度する 国営放送お料理ママ伝説』のゲームディスクを胸元に挿入し、割烹着姿に変化した。




「……、よしっ!」


「……ふぅん?ゲームディスクが得意って訳ね。」




シュガーはちょっと離れた場所に腰を下ろして3人を静観することにした。




「準備はできたようだな?……ならいくぜっ!」




銀髪の少女は赤く輝く拳を握り、ボクシングのガードのように構えてキラビの懐へ踏み込んだ。




「……!」




キラビはカウンター突きの構えをとった。




「貰っ

「『隠し包丁』……ッ!!」




銀髪の少女とキラビの懐に飛び込むより早く2人の間にシャンティが割り込むと、糸のような燻銀(いぶしぎん)に煌めく軌跡を描く幾多もの斬撃が銀髪の少女の攻撃を阻んだ。




「ぐおっ!?」




銀髪の少女は腕で斬撃をガードしたが、斬撃の圧力で押し返され後ろに飛び退いた。




「シャンティちゃん!」


「近距離戦なら任せてください♪」


「うんっ♪」


「チッ……。」




銀髪の少女の瞳が深海のように青くなると、赤く輝いていた腕が黒く変色し、鋼のような質感になった。




「キラビさんは後方支援を……ッ!」


「うんっ!」




シャンティは銀髪の少女との間合いをつめると、身体を掠めるように何度も銀髪の少女の周りを往復して斬りつけた。




「くっそ……!」




ヤバそうな拳に触れたくない一心で、シャンティはスピードにものを言わせて銀髪の少女を翻弄した。




「捉えられ……ッ!?」




銀髪の少女はなんとか腕で斬撃を防いでいたが次第に押されていった。




「……ッ!」

『コンバットオペレーション2 ガン・ハイブ。』




キラビは無機質な電子音声とともにリボルバーの銃弾を収納するシリンダー状に変化した左腕で銀髪の少女に狙いを定めた。




「はぁぁぁあッ!」




隙をついてシャンティが強力な斬り上げで腕のガードをめくると、銀髪の少女は大きく後ろによろけて懐がガラ空きになった。




「しま……ッ!?」


「今ですッ!!」




シャンティが真上に跳び上がってキラビの射線を確保すると、




「……ショット!!」




キラビの左腕から繰り出された散弾銃のような射撃が銀髪の少女の懐にフルヒットした。




「ガハ……ッ!?」




攻撃をモロに受けた銀髪の少女は屋上の端まで転がり、這いつくばってなんとか落下を免れた。




「ヒットです!」

「ナイスだよシャンティちゃん!」




喜んでいる2人を他所に、銀髪の少女の瞳が一際強い真紅の輝きを放った。




「ちくしょう舐めやがってぇぇえッ!!!」




銀髪の少女は膝をつくと、両腕が熱した鉄のような眩い赤色に輝き……、




「覚悟しやがれッ!!」




伸ばしきれば3メートルはありそうな程に巨大な、カマキリの腕を模した形状に変化した。




「『プレデター・ネイル』……。」




銀髪の少女の瞳がまた深海のような青に変わると、変形した腕が黒い鋼のような質感に変化した。




「変形したぁっ!?」

「カッコいい……ッ!」




「さあ、来いよ……?」




銀髪の少女は折り畳んだ腕の先を接地させて上半身を脱力した。




「いくよシャンティちゃん!」


「キラビさん、なんかワクワクしてません……?」




キラビとシャンティはさっきと同じ連携を仕掛け、シャンティが銀髪の少女に斬りかかった。




「ぐ……ッ!」




銀髪の少女はシャンティのすれ違いざまの斬りつけに対応できず、腕に攻撃を受けた。




「いけます!さっきと同

「じだと思うなよ……ッ!!」




銀髪の少女は腕を展開して横回転すると、斬りつけた勢いで背中を向けていたシャンティの横からカマ状の腕が回り込み、シャンティのボディをガッチリとホールドした。




「な……っ!?」


「シャンティちゃん!?」




銀髪の少女は、慌てて援護しようと左腕を構えたキラビの射線にシャンティが来るよう器用に位置どりながらシャンティを締め上げた。




「が……っ!」


「あいにくアタシはスピードに自身がないんでなぁ……。自分より速えヤツの対策は用意して




「マグナムッ!!」




銀髪の少女の注意がシャンティに向いている隙に、キラビは腰の入った重い銃撃を銀髪の少女の肘に命中させ、肘から先の腕を切り離した。




「なにぃ……ッ!?」


「……、今ですっ!」




シャンティは千切れたことでパワーが弱まった腕の捕縛から逃れると、出刃包丁を刀の居合のように構えた。




「『飾り包丁』ッ!!」




シャンティが包丁で抜刀して目の前を2回斬りつけると、大きく厚みのある燻銀に輝くX字型の斬撃が銀髪の少女に向かって飛んでいった。




「……舐めるなぁあッ!!」




銀髪の少女は回し蹴りでシャンティの斬撃を蹴り返した。




「えええ!?」




シャンティは身体を捻って跳ね返された斬撃をなんとか回避した。




「へっ……!どう




勝ち誇っていた銀髪の少女は後頭部に重厚で冷たい金属塊が押し付けられる感触がして思わず動きを止めた。




「ここ、マグナムで撃ち抜いたら痛いじゃ済まないよね♪」




冷たい感触の先からキラビの声がしたことで、銀髪の少女は後頭部に触れているものがキラビの左腕の銃口であることを悟った。




「…………………、降参だちくしょうめ。」


「降参…………、ということは、私たちの勝ちですよキラビさん!」




銀髪の少女が降参すると、キラビは物騒な左腕を元に戻して満面の笑みで正面に回り込んできた。




「……そんなに嬉しいのかよ。」


「うん♪♪」




キラビが手を握ろうとして銀髪の少女の腕を見ると、片方の肘から先を自分が吹っ飛ばしてしまったことを思い出してしょんぼりした。




「…………手。」


「なんだ、気にしてんのか?」




銀髪の少女は両腕を赤く輝やかせると、カマ状に変化していた腕はもとの長さまで縮み、肘から先がなくなっていた腕も元通りの形に修復された。




「シャンティ……つったか?」


「ひゃいっ!?」




シャンティは渾身の必殺技をあっさりと蹴り返されたことでビビり散らかしていた。




「そこに転がってるアタシの腕、取ってくれ。」


「こ、これ……使うんですか?」




シャンティは恐る恐る転がっていた銀髪の少女の片腕を拾い渡すと、銀髪の少女は赤く輝く手で触れた。




「回収回収……っと。」




銀髪の少女はスポイトで水滴を吸い上げるように渡された腕を取り込むと、両腕の赤みが引いて人間らしいものへと戻った。




「アナタは一体……。」


「アタシか?……名乗るほどのもんじゃないさ。」


「ふーん?じゃあシュガーから名のるわね♪」




静観していたシュガーが隙あらばと背後から銀髪の少女の両肩に手を置いて耳元で囁いた。




「ひぃぃっ!?///」


「あら、お耳弱かったのね?ごめんなさい☆」




シュガーは飛び退いて3人から適切な距離を取った。




「君にワンダーとってもスイート!最強最高の菓子職人……!『シュガー・パティシエール』!!」




シュガーは痛快な口上と決めポーズで3人に自己紹介をしてみせた。




「「お〜。」」


「知ってるっつの……。」


「冷たいわね〜。」


「オメーがしつけーんだよ。」


「はいはい、じゃあ次アナタね?」


「へっ、やだ


「じゃあアナタ『キモガニ』ね☆」




シュガーは銀髪の少女にバッチバチのウインクをしてみせた。




「はぁああっ!?」




「……ふんっ、フンっ!」


「気に入ったんですか……?」




銀髪の少女が抗議している一方でキラビは黙々とシュガーの決めポーズを真似ていた。




「お気に召さなかったかしら……なら『バカ貝』でどうかしら☆」


「オメー、ふざけ


「『カエルアンコウ』……?」


「いい加減に


「『タナカゲンゲ

「『アイロ・スティール』だッッ!!!」


「……へぇ♪」


「はっ……!?///」




銀髪の少女の名前が判明すると、シュガーは勝気な笑みを浮かべた。




「じゃあね、お耳の弱いア、イ、ロ、ちゃん☆」




シュガーはアイロの鼻先を指でつつくと、建物の屋上を跳び回ってどこかへと去っていった。




「くっそ、あんにゃろ……ッ!///」


「本物のシュガーさんって、あんななんですね……。」


「次会ったらすり潰してやるッ!!///」




アイロは瞳も顔も真っ赤にしてどこかへと跳び去っていった。




「……私たちも帰りますか。」


「は〜い♪」






シャンティとキラビが円香の部屋に帰ってきてしばらくすると、円香が学校から帰ってきた。




「「お帰りなさい♪」」


「当然のようにいるじゃん……。」




円香はシャンティの部屋と自分の部屋を繋ぐ大きな壁穴を見て乾いた笑いが出た。




「円香ちゃん円香ちゃん!」


「どーしたのキラビ?」




キラビは円香の手を引っ張って壁に掛かっていたシュガー・パティシエールのタペストリーの前まで来た。




「シュガーちゃんに会った♪」




キラビは拙い動きでシュガーの決めポーズを真似てみせた。




「ええ〜〜!?シュガーに会ったの!!??」


「変わった方でしたけどね……。」


「連絡先はッ!?」


「聞いてないっ!」


「そんなぁ〜……。」




円香は空気が抜けた風船のようにその場にへたり込んだ。




「最初に聞くことそれなんですか……。」


「……。」


「キラビ?」


「ん〜ん、なんでもない♪」




キラビの視線の先にあった円香のカバンからは、丸いコーヒーのシミがついたパンフレットが少しはみ出していた。








背景、おばーちゃん。


そろそろこっちに帰ってきた頃でしょうか?長旅、お疲れ様!


こんど高校生になったひ孫が会いに行くから、それまでにしっかり休んで時差ボケを直しておいてください。


……それじゃあね♪

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