第441話最狂のトラップ
そして翌日、結果は出た。
「……うわー」
『これは……実際見るとやばさもひとしおだね』
浮いている島が、禍々しいオーラに包まれていた。
溢れ出る魔力が強大過ぎて、こちらに向けられていなくても寒気がする。
あまりに濃密な魔力のせいでリポップしたホウオウが怯えて、狩るのが恐ろしく楽だったが、ダークひのたま君すら僕の頭の後ろに隠れるほどなのは素直に驚いた。
「じゃあ……やってみるか」
『そういうとこ凄いよな、君』
僕は自分の機動甲冑を呼び出して乗り込み、浮遊島の真下に移動する。
そこには浮遊島から落下させるための通路が真っすぐ伸びていて、一番下には機動甲冑がすっぽりと収まるスペースがあった。
僕はスペースに機動甲冑を収めて、予定通りにしっかりと固定した。
「ふぅ……じゃあ、い、行くぞ、攻略君?」
『わ、分かった』
僕は頷いて――開閉スイッチを押す。
ガキンと重い音が響いたら、もう逃げることは許されない。
結界の一部が開かれて、現在生き残っているスライムが最後の層へループを抜けて解放される。
「……っ!」
大きな存在が動く気配に、僕の全身の毛穴が一斉に開いた。
だが素直に落ちては来られないはず。
最後の階層は、ダークひのたま君と共にありったけ呪いを詰め込んだ、混沌フロアになっていた。
デバフにデバフを重ね、体力もガリガリ削るはず。
ほぼ死にかけで落ちてくるスライムの『大師匠』をサクッと狩って、一気にレベルアップを果たす。
それがこのトラップのすべてだった。
『来るぞ!』
攻略君が警鐘を鳴らし、そいつは混沌エリアを当たり前のように抜けて来る。
ギラギラと輝く滝のように、スライムは真っすぐこちらに落下してきた。
『よく狙って……ありったけをぶち込め!』
「……!」
見上げた姿勢で、僕は魔力をオーラとして練り込み、落ちてくるスライムに叩きこんだ。
聖属性の力の塊は一瞬大師匠を押しとどめ、その体を少し削る。
ダメージはほとんどないに等しかったが、しかし敵意を向けられるには十分だった。
「……っ!」
ドパッと頭上に広がる「大師匠」スライム――その圧倒的なプレッシャーはまさに空が落ちてきたかのようだった。
「今だ」
この最初期、最も僕のレベルが低いこの瞬間こそが最大のリスクだったが――すべては想定内。
これなら逃さずすべて食べられるだろう。
『いい塩梅だ……最高のおやつだね』
その瞬間、ガパリと口を開いた機動甲冑は広がった大師匠スライムを一気に吸い込んでゆく。
風もない場所だから。落下の軌道はとても読みやすい。
浮遊島から機動甲冑までの道は、僕の攻撃を確実に命中させ、最後に口に飛び込むまでのガイドラインに他ならない。
胃袋……ではないがあらゆる物質を分解するという、専用機動甲冑に内蔵された壊れた錬金釜はスライムの体を残らず分解して吸収した。
『やはり、壊れた品というものは恐ろしいな……挙動に安全性の欠片もない』
攻略君の言葉と、ガキンと顎が閉じる音を聞いて、僕はようやく胸をなでおろした。
唯一の懸念はこの捕食で果たしてちゃんと倒した判定になるのかということだったのだが……。
「あ、レベル上がった」
『やれやれ……』
検証さえしてしまえば、安心して使える。
ビビって、ちょっとだけ試してしまったが、今後はもっと思い切っていってみてもよさそうだった。




